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把握しすぎですっ

2 一体どこまで!?

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「にんしん・・・」
 にんしん。妊娠。・・・赤ちゃん!?
「風邪じゃなくて!?」
 思わず叫んでしまった。

「そう、妊娠。あくまで可能性の話として、だけどな。ほら、前にクレマチスで新年会しただろう?その時に浩介さんから子供が出来た時の話とか色々聞いたし、その後はネットで自分でも調べたんだよ。環菜の前回の生理は、年末だったろう?次の予定は1月の終わりの筈なのに、今はもう2月。遅れてるよな?」
 自分で気が付いていなかったけど、宗司さんに言われてみればその通りだった。前回生理があったのは仕事納めもあった日だから覚えている。それからはまだ生理になっていないことも確かだけれど。
 私はぎこちなく頷いた。
「最近は2人で話し合って子供が欲しいって決めてからは付けずにしているから、子供が出来てもおかしくない時期だし。恐らく出来たとすればあのホテルに泊まった時かな。あの時の環菜は随分積極的だったもんな?」
 そう言って宗司さんは甘く蕩けた顔を見せた。
「なっ!だって、あの時はっ」
 かあっと熱が上がった。

 彩ちゃん達と新年会をした次の日。予定通り久々のショッピングに行く予定を楽しみにしていた。確かに行ったけど、もっと長い時間遊べると思っていたのに、例によって起きた時間が遅かったのと、体力不足によりギブアップ。誰のせいかというのは、分かり切っているけれどねっ。
 お陰で少し早い時間に予約を入れていたホテルにチェックインし、贅沢にも夕方にお昼寝タイム。
 目が覚めてホテル内のディナーバイキングでほくほくと目一杯料理を堪能。
 一番のおすすめしていた分厚いリブロースステーキ、フォアグラのソテーをまず食べて。お刺身、グラタン、キッシュ、サラダ、数種類のデザートも心置きなく存分に食べた。
「はー、満足ー」
 滅多に食べれないものもいっぱい食べれて幸せー。
「それだけ食べれば、元も十分取ってるだろうな」
 お互いにかなり食べたのは間違いない。
「うん、宗司さん、連れて来てくれてありがとね」
「どういたしまして」

 そしてその後は、高層階のバーラウンジへと場所を移動して、窓際の席から美しい夜景を眺め、飲みなれないカクテルを2杯飲んだ。
「きれーい」
 鮮やかな黄色が綺麗なミモザと、透明感あるほんのり青色をしたチャイナブルー。どちらもアルコール度数は低かったのに、普段とは違う環境と、素敵な夜景にすっかり酔ってしまった。 
 ほろ酔いからHな気分になってしまい、今思い出すと恥ずかしくて仕方がないのだけれど、自分から宗司さんを誘っていた。

 私が2杯目のカクテル、チャイナブルーを飲み終えた頃、宗司さんのスーツの袖を引っ張った。
「ね、宗司さぁん、もー部屋にいこぉ?二人きりにぃ、なりたいなぁー」
 ちょこんと首を傾げ、舌足らずな話し方。素面の時には絶対に言えない甘え方。
「っ、・・・そんな誘い方して、後で何されても文句言うなよ?」
 私を見つめる宗司さんの瞳には、暗めのラウンジの中でも普段以上に熱が籠っているのが見えた。
「んー?んー、言わないから、いこ?」
 袖口から異動して直接自分の手と絡ませた。珍しい私からの誘いを宗司さんが断る訳もなく。
「・・・・・・可愛いな、環菜」
 繋いだ手とは反対の手で頬をやんわりと撫でられ、背中にむずりと快感が走った。
 まだ少し残っていたダイキリを宗司さんは飲み干すと、私の手を引いて立ち上がらせてくれた。

 実は隣のテーブル席には、グループ4人の男女がいた。スーツを着た男の人が2人と、露出度高めなドレスを着た女の人が2人。多分服装からして誰かの結婚式に出席した後ここへきたのだろう、そんな感じだった。その内の美人が宗司さんに色目を向けているのが許せなくて起こした行動だったりなんかして。
 多分宗司さんはその視線に気が付いていたみたいだけど、綺麗に無視。
 部屋戻り、お互いの服を脱がせ合い、ベッドへ倒れ込むようにして―――

「それに環菜の胸、ここ暫く張って大きいままだろう?」
 回想から、現実へと戻ってきた。
「―――はい?」
 丁度Hシーンに突入しそうになっていた所だったから、どぎまぎが止まらない。宗司さんの話を聞き逃しそうだった。
「先週の連休辺りに触ったときには張って大きくなってたから、そろそろ生理だろうと思ってたのに言ってこないし、おかしいなとは思ってたんだ」
「・・・・・・」
 妊娠の次は、生理ですか!
 男の人から何度も繰り返し、生理と言われるのが恥ずかしい。例え相手が夫であろうとも!
(はうー!)
 毎月生理が来たときは、宗司さんに申告をしていたのは確かだけど。まさか生理周期まで把握されているとは思わなかった・・・!
 一体世の中の男の人がどれくらい奥さんの生理周期を把握してるのだろうか。
 ここは頭を抱えて悩むところ?笑って流す所?

「環菜、ご飯食べ終えても念の為に、風邪薬は飲まないでくれないか?妊娠初期に市販の薬は余り良くないらしいから」
「うん?そうなの?」
 っていうか、宗司さんの中では妊娠が確定してるの?
「片づけも俺がするから。後で薬局に行って妊娠検査薬買って来るから、その間は大人しくしていてくれ」
「えっ?ちょっと待って。それ宗司さんが買って来るの?恥ずかしくない?私が一緒に行って買った方が良くない?」
 これから薬局へ行くのなら車で行くのだろうから、私も連れて行ってくれればいいのに。そんなに遠くもないし、寒くもない筈だ。
「駄目、環菜は留守番。外は寒いから風邪をひかれたら困る」
「ええーっ?困るって言われても、既に風邪ひいてるかもしれないのに」
 というやりとりを繰り返し、結局宗司さんの意見が通った。

「体冷やすなよ」
 ソファに座っていた私は、宗司さんにもう1枚上着を着せられ子ども扱い。
「むう。・・・行ってらっしゃい」
 ふてくされながらも、挨拶は言った。
「ん。行ってきます」
 買い物に出かける姿を見送り、クッションを抱きしめながら、テレビを見てお留守番。

「・・・暇」
 毎週見ているバラエティ番組も全然楽しくない。クッションを枕にして、フリースのひざ掛けを体に掛けてころりと横になった。
「赤ちゃん、いるのかな?」
 自分のお腹に手を当てて、呟いた。単なる風邪だと思うのだけれど。
 暇を持て余しているのだからと、携帯でネット検索を始めた。キーワードは「妊娠したかも?」で。
 読み進めていけばいくほど、初期症状が自分と当てはまっていた。
「ほんとに?」
 もう一度お腹に手を当て、宗司さんの帰宅をひたすら待っていた。
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