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旅立ちのダサい勇者
しおりを挟む俺は勇者だ。
隣町をこれから出て、2時間歩いて故郷に帰る。
思えば長い旅をしたなぁ。
俺はこのダサい勇者から解き放たれるため、地元に戻る。
ちなみに右手には木の剣、左手には鍋蓋健在だ。
このカッコもあと少しでおさらばだ。
あ、でも、地元では鍋蓋持ってなかったよな?
このカッコで村に入るのか……
知った顔と合わせたくないなぁ。
まあ今日で勇者も終わりだ。
地元に帰ったらステキな村人になろう。
俺は宿をチェックアウトすると、黙々と歩き出した。
勇者に初めてなった頃よりは、足腰が強くなった気がする。ひたすら歩いてたからな。
勇者とは健康にはいい。
こんな年寄りくさい考え方がダサいな。
まぁ事実だが。
?
後ろからコソコソと何かがついてきている。
木から木へ。
魔物か?
この辺はスライムくらいしかいない筈だが。
俺は気づかないふりをすると、両手を頭の上に持っていき、口笛を吹きながらゆっくり歩く。
距離が近づいた瞬間。
ブワッと俺は振り返った。
美少女。
昨日、酒屋にいた僧侶だ。
多分見習いレベルの。
一瞬、時が止まった。
俺はまわれ、右で前を向いてスタスタと歩き出す。俺の中で、コレと関わってはいけないという警鐘がなっている。
美少女なだけに余計に嫌な予感がするのは俺がモテない勇者だからか?
俺はせーので走り出す。
脱兎の如くとはこの事だ。
なぜ美少女から逃げなければいけないかわからない。
ウラウラゥララララー!
と、全力でまこうとする。
あっ、と、あちらも慌てて追いかけてくる。
なんなんだ!
俺は勇者やめる、パーティは組まないと伝えたじゃないか!
物分かりが悪い仲間とか絶対嫌だぜ、俺は。
そんなこんなしてるうちに、2時間かかるはずの道程は、1時間弱になった。
女の子から逃げて帰るとかダサい。
これ、村の人が見たら俺が女の子にチョッカイかけて、逃げてるみたいじゃねぇ!?
いやだ!
そんなふうに見られたくない!
俺は酒屋に行った愚かしい自分を呪った。
……もう勇者なんか絶対やめるんだ。
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