ジョージと讓治の情事

登山

　いつもメッセージが来る日になっても、ジョージから連絡がなかった。
　用事がある時は誘われない日もあったし、夏場は山に登るからとホテルに泊まらず食事だけで帰る日もあった。
　だから呼ばれない週末が三回続くまでは、なんとも思ってなかったんだ。

　会社では相変わらず素っ気ないし、とてもじゃないけどそんな会話をする雰囲気じゃない。
　だから余計に週末を楽しみにしていたのに。
　どうして連絡をくれなくなったんだろう。

　僕、何かしちゃったのかな。

　ジョージがしたくないなら、僕がお願いするのも変だよね。どうせ断られるだけだろうし。
　それに本当に忙しいだけなのかもしれないし。

　僕は、ジョージからまた誘われることを期待して、誘いが来るのを待つことにした。


──
　

　社外で会わなくなって三ヶ月。
　僕の誕生日も、クリスマスも一緒に過ごしたのに、あれからずっと連絡がない。
　最近のジョージは以前に増してピリピリするようになって、僕はもっと近づき辛くなった。

　先輩達に、ジョージから理由を聞き出すように責っ付せっつかれても、話せる雰囲気ではなかった。

　機嫌の悪い理由はなんだろう。
　僕が原因なのかな。いや、それはないか。
　僕のことで怒る理由なんて思いつかないし。

　だけど僕は、誘われなくなったことが寂しくて仕方なかった。
　誘われると、嬉しくて、ジョージの笑顔を見るのが楽しくて、そのあとの時間も幸せでいっぱいだったのに。
　ジョージは僕のこと、もう飽きちゃったのかな。
　
　そうだよね。僕、つまらない男だし。
　裏切らないお友達になってくれるって言ってたのに。
　やっぱりジョージも今までの人と一緒なのかな。
　そんなふうに思いたくないけど、現状を考えると……。

────

　もう、あの時のことは妄想だと思ってないけど、最近は妄想なら良かったと考えるようになった。
　妄想なら、もう一度会えるかな。
　妄想ならジョージは優しくしてくれるかな。

　ジョージの話を聞いて、ジョージに話を聞いて貰って、そういう時間を過ごすのが凄く楽しかったけど、もう、戻ってこない。

　
　僕は、ジョージとの時間が持てないこの現状が辛くなって、今度は妄想に耽るようになった。

──

「あんた最近、ずっとうじうじしててうざいんだけど」

「姉ちゃんには関係ないだろ」

「関係あるわよ」

　どこにあるんだよ。

「そんなに辛いなら、山にでも登ってみたら？」

「え？」

「あんた、一昨年山に登ってから人が変わったみたいに楽しそうだったじゃない。どれだけ仕事が忙しくても、職場で倒れたって言ってもなんかずっとニヤニヤしてたし。ついに頭がおかしくなったのかと思ってたけど、そんな感じじゃないし」

「そ、そうかな」

　ジョージと出会ってからだ。

「母さんは恋人でもできたんでしょって言ってたけど、あんたに恋人なんてありえないし」

「そんなことないだろ」

「ないない。それよりさ、山に登ったの、そんなに楽しかったの？」

　楽しかった、凄く。
　姉ちゃんには言えないけど、凄く凄く楽しくて幸せな時間だったんだ。

────



　だから僕は今日、ここに来た。