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第一章 尊編 ①
母との勝負
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オレの一番古い記憶は2歳のある夜の出来事だ。
夜中に目が覚めて、いつもは横に眠っているはずの父親を求めて部屋の中をうろついた。
どこからか、猫の鳴き声のような声が聞こえた。
吸い寄せられるように声がする方へ向かうと、母がいつも寝ている部屋から漏れ聞こえていた。
「あんた、本当にこれだけは最高だね」
唸るような、ため息のような、息を吐く男の声と母の荒い声。
また猫が鳴くような甲高い声が繰り返された。
恐る恐るドアの隙間を覗くと、不思議な形で重なる両親の姿が目に入った。
「裸で遊んでいるのかな」と思ったが、父さんの表情は険しい。
また「ママがパパをいじめているのかもしれない」とその時は思って怖くて後ずさったが、それ以上に父さんの険しい表情が鮮明に記憶に残った。
その後も母は、だらしなくヨダレを流しながら気持ちの悪い声を繰り返し上げていた。
その頃からオレは母に関心がなくなり、父さんへの執着が激しくなったように思う。
3歳の頃、もう一度だけ似た光景を見たと思うが、その時は母の姿がどうだったかを全く覚えていない。父さんが汗を滲ませながら腰を振る姿だけが目に焼き付いていた。
────
5歳を迎えて、オレの人生は大きな転機を迎えた。
その年も、誕生日はいつものように父さんがケーキを作って祝ってくれた。
誕生日はいつも父さんと二人だ。誕生日は毎年母がいないおかげでどんなに甘えても怒られないし、楽しい記憶しかなかった。
だけどその年はいつもと違った。
いつもなら絵本を読んでくれるのに、その夜はオレを抱きしめながら言ったのだ。
「尊、パパと二人でお引越ししないか?」
「おひっこし?」
「うん。もうママにはあまり会えなくなるし、お家も小さくなるけど」
「パパとふたりのほうがいい」
「ママはいいのか?」
「だってママいつもおさけくさいし、おおごえだすし、ものをなげてくるからぼくきらい。いっつもボクのパパをいじめるからいらないよ」
「……そうか。ふふ、ボクのパパか」
「うん、パパはボクだけのものでしょ?」
「そうだな。じゃあ尊も俺だけのものだ」
「キャハハっくすぐったいよう」
「これから少し大変だと思うが、パパ頑張るよ」
◆
夜中になって、大きな物音と声で目を覚ました。また母が怒鳴っているようだ。
聞き耳を立てると寝る前に父さんが言っていたことで揉めているようだった。
階段を降りて、壁の影に隠れて話をじっと聞いていた。
父さんが何かの書類をテーブルに置いたところで、母の顔が青ざめて、声がしなくなった。喧嘩が終わったのかと思ったら、母が何かボソボソと言って、今度は父さんが「ふざけるなっ」と大きな声を出した。
父さんが母にあんな風に怒鳴るのは初めて見る。聞き慣れない父さんの怒号にビクッとしたが、その後の母の言葉を聞いて怒りが込み上げた。
「尊はあたしの子よ。親権はあたしがもらうわ」
その後も父さんが何かを言っていたようだったがそれは耳に入らなかった。
「しんけん」の意味は分からなかったけど、父さんと出ていくことに反対していることはわかった。
母はまたオレから父さんを奪うのか。あの夜みたいに。
部屋にとって返すとスマホを持って録音ボタンを押した。
言い争う両親の会話は続き、母は金切声を上げ始めた。
オレは言い合う二人のそばへ寄った。
二人が驚いた顔でオレを見つめる。
「ぼく、パパといっしょにこのいえでてくよ。ママ……いまのおはなし、ろくおんしたよ」
実際の録音内容はほとんど意味をなさなかったと記憶している。オレの衣擦れの音やノイズが多くて、録音できたのは母が発した金切声だけ。それも音割れして何を言ってるのかよくわからない。
それでも父さんは何度もオレの行動に感謝してくれた。「尊のおかげだよ」と抱きしめてくれた。何度も頬にキスをして喜ぶ父さんを見て、役に立てたことがとても嬉しかった。
────
二人で生活を始めた頃、何かをきっかけに俺は思い出した。
あの夜の記憶にある父さんの股間はかなり大きかった。当時のオレの腕より大きかったはずだ。自分の股間を見ても、小さいビロビロしたものがぶら下がっているだけなのに、父さんは下着からはみ出そうなほど大きな物がぶら下がっている。でもあの時は、これよりずっとずっと大きかったはずなんだ。
一緒に浴槽に浸かってぱちゃぱちゃとお湯で遊んでいる時、気になっていたことを聞いてみた。
「パパ、どうしてパパのとボクの、こんなにおっきさもかたちもちがうの?」
自分のビロビロした柔らかいものを掴みながら父に問う。
「ん? そうだな、尊も大人になったら同じように大きくなるし、そのうち剥けてくるよ」
父さんのものにも手を伸ばして感触を確かめる。揉んでみると重量があって自分のものとは全く別物だった。
調子に乗って遊んでいると、ムクムクと膨らんで長さも太さも見違えるほど大きくなった。
これ! あの時見たやつだ。
この時、オレもあの女と同じことが出来て、殊の外喜んだのを覚えている。
父さんにイジったらダメだと言われて、優しくすれば触らせてもらえるかもと、両手で包んで触ったら、手を外されて強めに怒られてしまった。
だけど、両手で包んだ時、父さんはほんの少しだけ、あの時みたいな顔をしたんだ。それがイケナイことのような気はしたけど、それ以上に嬉しくて、毎日父さんの股間を大きくすることを日課にした。
2回目から父さんは怒らなくなったし、たくさん大きくすれば、あの女に勝てると思っていた。
夜中に目が覚めて、いつもは横に眠っているはずの父親を求めて部屋の中をうろついた。
どこからか、猫の鳴き声のような声が聞こえた。
吸い寄せられるように声がする方へ向かうと、母がいつも寝ている部屋から漏れ聞こえていた。
「あんた、本当にこれだけは最高だね」
唸るような、ため息のような、息を吐く男の声と母の荒い声。
また猫が鳴くような甲高い声が繰り返された。
恐る恐るドアの隙間を覗くと、不思議な形で重なる両親の姿が目に入った。
「裸で遊んでいるのかな」と思ったが、父さんの表情は険しい。
また「ママがパパをいじめているのかもしれない」とその時は思って怖くて後ずさったが、それ以上に父さんの険しい表情が鮮明に記憶に残った。
その後も母は、だらしなくヨダレを流しながら気持ちの悪い声を繰り返し上げていた。
その頃からオレは母に関心がなくなり、父さんへの執着が激しくなったように思う。
3歳の頃、もう一度だけ似た光景を見たと思うが、その時は母の姿がどうだったかを全く覚えていない。父さんが汗を滲ませながら腰を振る姿だけが目に焼き付いていた。
────
5歳を迎えて、オレの人生は大きな転機を迎えた。
その年も、誕生日はいつものように父さんがケーキを作って祝ってくれた。
誕生日はいつも父さんと二人だ。誕生日は毎年母がいないおかげでどんなに甘えても怒られないし、楽しい記憶しかなかった。
だけどその年はいつもと違った。
いつもなら絵本を読んでくれるのに、その夜はオレを抱きしめながら言ったのだ。
「尊、パパと二人でお引越ししないか?」
「おひっこし?」
「うん。もうママにはあまり会えなくなるし、お家も小さくなるけど」
「パパとふたりのほうがいい」
「ママはいいのか?」
「だってママいつもおさけくさいし、おおごえだすし、ものをなげてくるからぼくきらい。いっつもボクのパパをいじめるからいらないよ」
「……そうか。ふふ、ボクのパパか」
「うん、パパはボクだけのものでしょ?」
「そうだな。じゃあ尊も俺だけのものだ」
「キャハハっくすぐったいよう」
「これから少し大変だと思うが、パパ頑張るよ」
◆
夜中になって、大きな物音と声で目を覚ました。また母が怒鳴っているようだ。
聞き耳を立てると寝る前に父さんが言っていたことで揉めているようだった。
階段を降りて、壁の影に隠れて話をじっと聞いていた。
父さんが何かの書類をテーブルに置いたところで、母の顔が青ざめて、声がしなくなった。喧嘩が終わったのかと思ったら、母が何かボソボソと言って、今度は父さんが「ふざけるなっ」と大きな声を出した。
父さんが母にあんな風に怒鳴るのは初めて見る。聞き慣れない父さんの怒号にビクッとしたが、その後の母の言葉を聞いて怒りが込み上げた。
「尊はあたしの子よ。親権はあたしがもらうわ」
その後も父さんが何かを言っていたようだったがそれは耳に入らなかった。
「しんけん」の意味は分からなかったけど、父さんと出ていくことに反対していることはわかった。
母はまたオレから父さんを奪うのか。あの夜みたいに。
部屋にとって返すとスマホを持って録音ボタンを押した。
言い争う両親の会話は続き、母は金切声を上げ始めた。
オレは言い合う二人のそばへ寄った。
二人が驚いた顔でオレを見つめる。
「ぼく、パパといっしょにこのいえでてくよ。ママ……いまのおはなし、ろくおんしたよ」
実際の録音内容はほとんど意味をなさなかったと記憶している。オレの衣擦れの音やノイズが多くて、録音できたのは母が発した金切声だけ。それも音割れして何を言ってるのかよくわからない。
それでも父さんは何度もオレの行動に感謝してくれた。「尊のおかげだよ」と抱きしめてくれた。何度も頬にキスをして喜ぶ父さんを見て、役に立てたことがとても嬉しかった。
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二人で生活を始めた頃、何かをきっかけに俺は思い出した。
あの夜の記憶にある父さんの股間はかなり大きかった。当時のオレの腕より大きかったはずだ。自分の股間を見ても、小さいビロビロしたものがぶら下がっているだけなのに、父さんは下着からはみ出そうなほど大きな物がぶら下がっている。でもあの時は、これよりずっとずっと大きかったはずなんだ。
一緒に浴槽に浸かってぱちゃぱちゃとお湯で遊んでいる時、気になっていたことを聞いてみた。
「パパ、どうしてパパのとボクの、こんなにおっきさもかたちもちがうの?」
自分のビロビロした柔らかいものを掴みながら父に問う。
「ん? そうだな、尊も大人になったら同じように大きくなるし、そのうち剥けてくるよ」
父さんのものにも手を伸ばして感触を確かめる。揉んでみると重量があって自分のものとは全く別物だった。
調子に乗って遊んでいると、ムクムクと膨らんで長さも太さも見違えるほど大きくなった。
これ! あの時見たやつだ。
この時、オレもあの女と同じことが出来て、殊の外喜んだのを覚えている。
父さんにイジったらダメだと言われて、優しくすれば触らせてもらえるかもと、両手で包んで触ったら、手を外されて強めに怒られてしまった。
だけど、両手で包んだ時、父さんはほんの少しだけ、あの時みたいな顔をしたんだ。それがイケナイことのような気はしたけど、それ以上に嬉しくて、毎日父さんの股間を大きくすることを日課にした。
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