俺の息子の息子が凶悪な件

把ナコ

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第一章 柊編

疑惑

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 今日で尊は10歳の誕生日を迎える。
 未だに甘えん坊で、寝る時も一緒だし、おやすみのキスもせがむ。
 だがあと数年で反抗期が来ることを考えれば、この可愛く甘えてくる尊も堪能しておきたい。

「尊、10歳の誕生日おめでとう。誕生日プレゼントは欲しがってた満天堂muchだ」
「パパありがとう! ありがとう。これで一緒にできるね!」
「あまり長い時間遊ぶなよ」
「大丈夫だよ。パパとしかしないもん」
「なんでだ? 友達と遊んで楽しかったって言ってなかった?」
「うん。でもこれはパパがくれたものだから友達に触らせない」
「パパはいいのか?」
「パパはいいの」
「そうか。でも友達と遊ぶために買ったわけだし」
「そうだね、考えとく」

 最近になって尊は友達の話になると不機嫌な顔をするようになった。友達とうまくいっていないのかと、担任の先生や父母会で聞いてみても全くそんなことはないらしい。なんなら人気者でいつも明るく面倒見が良いと聞いて、誇らしかったくらいだ。

 尊は誰に似たのか勉強の出来も良く、サッカークラブでは既に高学年のお兄さんたちに混じってプレイするほどで、文武両道だ。低学年でレギュラーを獲得したことでクラブ内では、一時期いじめに近いことがあったようだが、コーチから「対処しましたので、問題ありません」と連絡を貰ってから問題は起きていないと聞いている。

 それに、女の子にモテるようで、バレンタインの日は女の子達から逃げるために迎えにきて欲しいと駄々をこねていた。
 俺が「大人しく貰ってこい」と言ったせいでその後は、無言で貰って帰るようになったが、お返しはしない主義なのだそうだ。お陰で俺が彼女たちの親にお返しをする羽目になってるんだがな。高級チョコを持ってママさん会に参加するこっちの身にもなって欲しいものだ。


 ◆

 仕事中に学校から連絡が来た。尊が病院に運ばれたらしい。

「何があったんですか?」
「尊くんのお父さん! 申し訳ありません。体育の授業中、他の子の足に躓いてしまって、手をついた時に骨折しちゃったみたいで」
「脚をかけた子は?」
「あ、いえいえイタズラとかいじめじゃないですよ! その子、走ってる途中に転けちゃったんです。真後ろを走ってた尊くんが避けようとしたんですが避けられなくて」

 俺の不快感を敏感に受け取った担任が弁明する。尊のことになると沸点が低くなるのは、俺の悪い癖だ。

「失礼しました。転けた子の怪我は?」
「打撲と擦り傷程度です。さっきまで一緒にいたんですけど、尊くんが手術が終わったあと、帰るよう言ったんです」
「尊らしいな。尊は今どこに?」
「こっちです」

 尊の病室に着くと、少し落ち込んだような顔でベッドに座っていた。

「尊」
「父さん」

 尊は人前では俺のことを父さんと呼ぶ。家では相変わらずパパ呼びだ。

「腕、大丈夫か?」
「うん、今はマスイが効いてるから大丈夫」
「男前が上がったな」

 腕の傷だけでなく、顔にも何か所か怪我をしていた。

「すごく痛かったんだぞ!」
「じゃあ治ったら、転けたくらいでは折れないようにトレーニングしようか」
「父さんもする?」
「そうだな、一緒にしような」
「うん!」
「先生の話を聞いてくるよ」

 尊の表情が少し明るくなったところで、担当医が顔を出した。担任には帰ってもらい、説明を受けに談話室へ移動した。

「安静にしていれば3週間ほどでギプスは取れると思います。ところで、息子さんから申告があった血液型が実際の血液型と違いましたが間違って覚えているんでしょうかね?」
「えっ!?」
「お父様もご存知なかった? じゃあ間違って覚えてたんですかね? O型と本人は言っていましたが、AB型です。お母様の血液型は?」
「A型のはずです」
「じゃあお父様がB型ですか?」
「いえ、O型です。俺も尊はO型だと聞かされていましたので」
「……稀に。ABO方式では極々稀に凝集ぎょうしゅうの少ない型が判定されず別の血液型として結果が出る事があります。精密検査をしてみましょうか、お父様の血液型が違う可能性もありますので」
「そう……ですね。お願いします、あの……」
「はい」
「DNA鑑定は可能ですか?」
「あー……、そうですね。自費になりますが検査機関に依頼が可能です。当病院からでも構いませんが、民間でも検査が可能です。ナイーブな内容だった場合、情報漏洩ろうえいの点で民間でされた方が良いかもしれません。もちろん当院で行う場合は秘密厳守で対応させていただきますが、ここで受ける場合、私だけでなく看護師も何人かは目にすることになりますから」
「わかりました。ご助言ありがとうございます」

 俺は談話室を出た後直ぐ、元妻にメッセージを送った。

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