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第5章 六凶編 VS ブラッディマリア・ブルードラグーン

第206話 After of Battle

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 雨が激しく降り注ぐ台北市。警官達によって、ひかりの会メンバー達は逮捕され、パトカーに続々と乗せられて連行されていった。目的を果たした雅文達も、事務所に戻った。疲労の色が見える一同。王白竜と梅李香は、陳とウォンに深く感謝した。
「謝謝!!!あなた方のおかげで、李所長の仇を取ることが出来、ひかりの会を台湾から追放することが出来ました!!」
王白竜達が、その後どうするかは本人達に任せることにした陳。ひとまず今夜は、戦勝祝いで台湾グルメをいただくことにする。

 その頃。1人、船で台湾海峡から日本海へ北上して韓国へ帰国しようとするユミ。
「奴らめ、必ず復讐してやる!!」
一方、逮捕されたボジュン達は、台北市内の留置所へ連行され、来週にも、それぞれ韓国と香港へ送還されることになった。その夜、台北市内の火鍋専門店で火鍋を囲む。雅文達とウォン達は翌日に帰国するので、この日はソフトドリンク。
「乾杯!!」
ウーロン茶をぐいっと飲み、火鍋に舌鼓を打つ。勾玉のように区切られた鍋に、麻辣湯と白湯が入っており、そこに具を入れて食べる。薬膳スープでもあるので、戦いの後の身体に染み渡る。
「好吃。」
「勝った後だから、一層美味いな。」
この日の夜は、勝利の余韻に浸りながら、火鍋を皆で味わった。

 翌日、朝食を済ませ、雅文達は王白竜達に別れを告げる。
「ありがとう。」
「我々の方こそ、所長の仇を取るが出来ました。ありがとう。」
王白竜達が探偵を続けるのか、事務所を畳んで、各々出直すのかは任せる。李章の墓参りに行き、線香を上げて、手を合わせる。波乱万丈な生涯を送った友を讃え、陳は墓に一礼する。
「あの世で会えたら、また一緒に鴛鴦茶を飲もう。」
夏の空、風を感じながら、台湾を後にする。出国ゲートを越え、ウォン達とも別れる。
「李章か。彼は台湾のために戦ったんだな。」
「ウォン、李章は誇り高い探偵だったんだよ。」
別れ際に握手をし、ウォン達は香港行きの便で帰国する。陳と共に、雅文・雫も日本へ帰国した。

 帰国後、六凶達に特に目立った動きは無く、雅文達は夏の暑い日も依頼に勤しみ、日々、調査に励んでいた。そして、無事にお盆休みを迎えられた。
「去年は百鬼夜行之衆と猛毒獣大陸との戦いに勝利し、今年はブラッディマリアの刺客とひかりの会のメンバーを撃破した。我々は、着実に成長している。皆、それは自信を持ってくれ。更に厳しい戦いが始まるだろうが、皆で頑張っていこう!!」
所長の一言で、皆の気が引き締まる。一同はお盆休みに入り、英気を養う。

 雅文は、成人した沙耶香に会いに行った。大阪体育大学の水泳部に所属している沙耶香は、インカレ出場に向けて頑張っているようだ。大会を見終え、沙耶香が1人になったのを見計らい、そっと近づいた。
「久しぶり、沙耶香ちゃん。」
「雅文さん!!!久しぶりです!!!」
最後に会ったのは、3年前の夏。当時、高校3年生だった沙耶香の、夏の最後の大会を愛知で観戦。一歩及ばず、泳ぎ終わった後、プールサイドに呆然と立ち尽くしていた。大会終了後、悔し泣きする沙耶香を、雅文はそっと抱き締めた。
「大丈夫。その悔しさがあれば強くなれる。」
あれから3年。大阪体育大学に進学した沙耶香は、より一層、水泳に励み、当時とは見違える程の体格になり、成人したことで風格も増した。泉南郡に住む沙耶香、お盆休みになったということで、雅文が車を出して、貝塚市の二色の浜海水浴場に行った。4年ぶりに一緒に海で泳ぎ、楽しい時間を過ごした。
「雅文さん、YouTubeで観ましたよ。裏社会の列強を倒したんですよね?」
「あぁ。殺し屋のボスを仕留めたで。」 
「流石ですね。いつか、沙耶香のこと、抱いてみますか?」
大人になった沙耶香の突然の告白に、雅文は赤面した。

 香港にいるウォンと、新開地に住んでいる陳宛に台湾からの国際郵便が来た。送り主は、王白竜からだ。

「大家好(みなさん、こんにちは。)
 台湾から手紙を送りました。王白竜です。先月は、ひかりの会討伐に協力してくださり、ありがとうございました。李所長の仇を取ることが出来、胸のすく思いです。皆さんの強さには、本当に驚き、感心しました。と、同時に、我々もまだまだ未熟であると感じました。
 李所長と謙介は死んでしまったので、もう生き返ることはありません。死んだ人は、どうやっても戻って来ません。我々もまた、自分達の未熟さ・非力さを痛感しました。再び前へ進むと決心し、私は李所長の事務所を所長として、継ぐことにしました。私と梅李香の苗字を取って、王梅探偵事務所として、今月末から活動していきます。今後ともよろしくお願いします。
再見(さようなら。)」

悲しみを乗り越え、強くなろうと決心した王白竜とその仲間達に、陳は感銘を受けた。
「千里の道も一歩から。加油。(頑張れ。)」
香港で、捜査に勤しむウォン達も王白竜からの手紙を読んで、精進することを誓う。
「王白竜、梅李香。あの2人はまだまだ若い。台湾は、蔡英文・オードリー・タンなど天才が多い。これからもっと成長出来るだろう。」
感心しながら、デスクで鴛鴦茶を飲むウォン。アグネス・リー・チェンが調査から戻って来た。
「戻りました。」
この日の依頼は、全て終了。時刻は18時を過ぎた。依頼人は来ない。事務作業を終えた時には、19時になっていた。依頼人も来ないので、今日の仕事は終了。
「さて。昨夜、台湾から王白竜の手紙が来た。彼は、李所長の後を継いで、探偵事務所を再開するようだ。彼らの新たな門出を応援し、我々も彼らに負けないように精進しよう。今夜は、私の奢りだ。茶餐店に行こう。」
「茶餐店?所長、もしかしてお金無いんですか?」
「チェン、台湾での戦いで宿泊費・食費込みで結構使ったのよ。」
「所長、海南鶏飯が食べたいです。」
「海南鶏飯か、いいだろう。翠華餐店なら、置いてるだろうな…。」

 一方、韓国。首都ソウルから、はるか離れた加平郡。ひかりの会本部がある。夏合宿中で、少年少女達を集めてワークを行っている。本部の奥で、AI改造兵士達がいた。
「ユミ、傷は回復したか?」
「はい、キム様。」
台湾での戦いで負傷したユミ。サイボーグの身体なので、修繕は容易。ボミとは姉妹の関係。
「ユミ、いつも無茶するんだから。」
「オンニ(韓国語で、女性から見た姉)、香港と日本の探偵達が強かったから。」
教祖のキム・サンホンは、2人を微笑ましく見つめる。その目の奥にある闇とは…。
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