Pieces of Memory ～記憶の断片の黙示録～

第5章 六凶編 VS ブラッディマリア・ブルードラグーン

第204話 VSひかりの会in台湾

　一方、台湾に滞在している雅文・雫・陳達にも、所長達から勝利の報告が来て、テレビ電話で聞く。
「こんばんは、3日ぶりだな。雅文・雫・陳、元気にしていたか？」
ブラッディメアリーを撃破した後の所長は、勝利した喜びに満ち、落ち着き払った表情を浮かべている。その様子を見て、3人は安堵した。
「はい、我々は健在です。あともう少しで、旧友の無念を晴らすことが出来ます。」
陳は、年長者としての落ち着きを見せ、所長に近況報告をする。
「そうか。奴らの尻尾は掴めたんやな。」
あとは、ひかりの会のAI改造兵士・信者達を撃破することである。所長も3人のここまでの成果を称えた。日本・台湾・香港の探偵達が一堂に会している。必ずひかりの会を倒す。まとめ役の陳は、そう息巻いた。

　調査開始4日目。ひかりの会の本拠地を特定し、台北警察に情報提供。
「謝謝。奴ら、あの暴動から尻尾を隠し続けていたなんて…。完全に町中に潜伏されていたから探し出せなかった…。」
夜市を破壊し、多くの市民の命を奪ったひかりの会の暴挙を止められず、圧倒的な力の差に屈した。更に、潜伏されて見つけられなかった、という屈辱感と悔しさで、警官は唇を噛み締めた。李章は台北で有名な探偵であり、事務所のメンバーもそこそこ名が知れている。その李章が殺され、台北市民は悲しんでいる。その中で、李章の友人の探偵が、はるばる日本と香港から来てくれた。そのことに、警官は感謝する。
「もしかしたらですよ、このまま奴らを野放しにすれば、台湾はおろか、東アジア全体を乗っ取る気ですよ。」
陳の警告を受け、警官は上司に連絡。これまでの調査経過をまとめる。台北警察は、陳達に力を貸すことになった。

　その頃、ひかりの会台湾支部は、本格的なテロ行為を計画していた。台北警察を壊滅させ、邪魔者を消してから、政府当局を乗っ取ろうと企てていた。
「フフフ、我々に逆らう者は消してやりましょう。」
ユミが息巻く。その中で、香港から来た者達の中で、3人程幹部クラスに昇格させた。

アンドリュー・ウォン(21)
黒髪の男。細身のカンフー使い。

チェリー・チャン(21)
黒髪の女性。メリケンサック使い。

リー・メイファ(20)
黒髪の女性。カンフー使い。

2019年の反政府抗議デモや国家安全維持法などで、一国二制度が形骸化された香港の現状に憤り、韓国から東アジアの天下を獲ろうとするひかりの会に惹かれて、入信してきたのだ。台湾人も数人は、ひかりの会に入信している。台湾人信者の中には、王白竜達を監視している者がおり、ボジュンとユミに密告していた。
「そういや、李章探偵事務所の残党が、日本と香港から来た探偵達と提携して、俺達を潰しにかかるらしい。」
ボジュンの話を聞き、ユミはほくそ笑む。
「フフ、私達を倒せると思ってるのかしら？木っ端微塵にしてあげるわ。」
作戦決行は17時。台北101のある信義区を襲撃し、台湾占領を狙う。
「理想の楽園を作りましょう！！！」

　16時半、まだ明るく、暑さが厳しい時間の台北市。信義区で張り込む陳達。張り込み時は3チームに分かれて、別行動を取っている。

チーム 日本
陳青鴻・烏丸雫・神田雅文

チーム 台湾
王白竜・梅李香・イ・グァン・陳美蘭　

チーム 香港
ウォン・クーシェン・アグネス・ワン
リー・ガウホン・チェン・マイ・ラム

台北101周辺で張り込み、奴らが来るのを待つ。情報では、台北101を占拠する予定であるのを、潜入調査で知った。しばらく待つと、奴らが現れた。白装束に身を包み、台北101の中に入っていった。

台北101 内部構造
地上101階 地下5階
101階 スカイライン460
92～100階 機関室と通信機器
91階 屋外展望台と台北101紹介ビデオ放映室
89階 屋内展望台
88階 エレベーター乗り場
85~87階 レストラン
84階 宴会場
61～83階 オフィス(高層)
59～60階 奇数/偶数層エレベーターホール
58階 機関室
37～57階 オフィス(中層)
36階 偶数層エレベーターホール
35階 奇数層エレベーターホール
34階 機関室
9～33階 オフィス(低層)
7～8階 機関室
6階 台北101VIPクラブ
5階 展望台エントランス
4階 Burberry
3階 証交所投資者読書室
2階 偶数層エレベーターホール
1階 ロビー
B1 台北101/世貿駅
B2～B5 地下駐車場

B1～6階はショッピングモールとなっている。複雑な構図になっており、高層階には中々進めない。
「まずは、掃除しようか。」
「俗世間の愚かな者達に、我々の力を見せつけましょう。」
ボタンを押すと、仕掛けられていた爆弾が爆発し、フロアは大混乱に陥った。
「うわぁぁぁ！！！！」
「韓国から来たカルト教団だぁ！！！」
饒河街観光夜市に続いて、今度は台北101を破壊しようとしているのではないのか、と戦々恐々する市民達。そこに警官が来て、市民達の避難誘導を行う。爆音を聞き、別行動を取っていたメンバーも一同に介して突入する。
「所長の敵を取る！！！」
「野放しにはさせん！！」
「李章の無念を晴らす！！」

　ひかりの会のメンバー達は、瞬く間に台北101のショッピングモールを占領した。
「フン、クズ共を見下すには、ちょうどいいな。」
「そうね。」
警備員や警官を一蹴したユミとボジュン。そこに、陳・雫・雅文が乗り込んだ。
「見つけたぞ。李章の敵。」
「誰だ？貴様ら…。」
「邪魔するなら、消してアゲル。」
その頃、信者達と幹部を相手にするウォン達と王白竜達。
「君達、奴らはカルト教団だ。今からでも遅くない。香港へ一緒に帰ろう！！」
説得を試みるウォンだが、殺気立つ幹部クラス。説得は無理だと悟り、戦うことにする。
「ならば、力ずくで行かせてもらう。」
「洗脳された者達は、撃破して解くしかないな。」
ウォン達と王白竜達も臨戦態勢になる。台北101で激しい戦いが繰り広げられる…。