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第5章 六凶編 VS ブラッディマリア・ブルードラグーン
第169話 強くなりたい
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遡ること、8月下旬。所長と雫が入院していた。傷は回復したが、満足に走ることは出来ない。ヒグラシの鳴く夕暮れ時、陳は2人の入院している病院に見舞いに行った。
「こんばんは。お怪我はいかがですか?」
同部屋に入院していた2人。所長と雫は、傷ついた身体を起こして、陳と向かい合う。
「あぁ…。マシにはなって来たがな…。」
「ウチも、まだ痛いねんけど…。」
百鬼夜行之衆と猛毒獣大陸との、妖魔城での三つ巴の戦いにて、早々と敗れて戦線離脱を余儀なくされた。探偵連合軍の勝利を知り、ホッとしたと同時に、自分達の無力さを痛感した。
「我々は勝利しました。雅文君と玲奈ちゃんは、百鬼夜行之衆と猛毒獣大陸の幹部とボスを倒したのは、驚きましたよ。」
年末年始の海外修行の成果だと感じ、陳は感慨深く思っていた。それで一層、自分達も強くならなければならない、と2人は強く感じていた。
「それなのだが、私は所長として早々と敗れてしまったことが、ホンマに悔しいし、残念なことや。」
所長は、唇を噛み締めて悔しさを滲ませた。夕陽が射し、所長の決意に満ちた顔が照らされる。雫もそれに続く。
「ホンマに…。ウチも思う…。ウチももっと強くならな、あの子ら守られへん…。雅文君、美夜子ちゃん、玲奈ちゃん、ウチにとっては、息子と娘みたいなモンやから…。ウチが守ってやりたい…。うぅ…。強くなりたい…。」
雫はポロポロと涙を零しながら、決意表明した。陳は2人の決意を真摯に受け止め、口を開いた。
「分かった。強くなりたい、そのためには己の弱さを認める。それは本当にキツいことだ。今、2人はそれを出来た。そこからが始まりだ。分かった。修業を行おう。まずは、しっかり身体を治すこと。そこからだ。」
秋になり、2人は懸命にリハビリに励んだ。強くなりたい、その前には、己の弱さを認めること。それを、雫は特に噛み締めていた。
(ウチは弱いねん…。せやから、強くならなアカン…。)
一昨年のGolden Fruitとの戦いで、里香と由香里を拐おうとした黒服に斬りつけられ、敗北を喫し、そのまま2人は拐われた。昨年の春、髑髏城との戦いで幹部と戦うも、大苦戦して陳の助けが無ければ、敗北どころか殺されていた。ここまで中村探偵事務所が、経験してきた戦いで雫は、敗北ばかりしていた。
(絶対に、ここで強くなるんや!!)
リハビリの成果もあり、11月には走れる程に回復。退院した。
その間、陳は仕事の合間を縫い、水面下で計画を建てていた。香港の黄仙探偵事務所と提携して、12月30日から1月2日までの4日間で特訓を行うことになった。パソコンのZoomを通じて、日本と香港でやり取りしている。
「すまんな、ウォン。何から何まで世話になる。」
ウォンは、香港名物の鴛鴦茶(インヨンティー)を飲みながら、静かに微笑む。
「あぁ、いいんだ。向上心があるのは、いいことだ。いつか、我々も日本で特訓しに来ていいか?」
「もちろん。その時は歓迎する。」
ウォンの事務所には、3人の若手探偵がいる。頭脳明晰なアグネス・ワン、ブルース・リーの熱狂的ファンのリー・ガウホン、喧嘩っ早いが拳法の使い手 チェン・マイ・ラムと個性豊かである。
「ただいま戻りました。」
リー・ガウホンとチェン・マイ・ラムが、依頼を遂行して戻って来た。香港は、先進国並みの経済力を誇るが、同時に経済格差も激しく、下町には物乞いしている人がいる。全員揃った所で、ウォンは今回のことを話した。
「そうなんですね。」
「裏社会の列強を潰すなんて、大したものだな!」
メンバー達も快く引き受けてくれた。
所長と雫は、陳と共に仕事の合間を縫って、カンフーの修行に励んだ。2人の向上心に感心した陳は、何としてもこの修行を実りあるものにしたい、と考えた。そして、この修行にアリスも同行する。アリスも武術に長けており、陳に同行を申し入れ、そこからトレーニングしていた。迎えた12月30日、4人は関西国際空港に集合。
「さて、行きましょう。」
「この4日間を実りあるものにしよう。」
アリスは、探偵事務所長として、海外の探偵事務所と提携し、パートナーシップを結ぶことを考えていた。香港の航空会社 キャセイパシフィック航空で行き、13時ごろに香港に到着。手荷物受取と入国審査を済ませ、エアポートエクスプレスで九龍半島の旺角へ向かった。地下鉄の駅から、地上へ出ると、女人街・金魚街といったマーケット、看板が並ぶネイザンロードと、雑多な世界観が入り混じる街並みが広がっていた。街を歩き、ウォンの探偵事務所へ向かった。
「你好!(広東語:ネイホウ)!」
ウォンに出迎えられ、一同は席に着く。香港名物の鴛鴦茶を振る舞う。
「年末の忙しい中、香港までお越しくださり、誠にありがとうございます。私が黄仙(ウォンシン)探偵事務所所長のウォン・クーシェンです。」
メンバー達も自己紹介をする。
「香港とシンガポールのハーフの、アグネス・ワンです。」
「你好!九龍出身のチェン・マイ・ラムです。」
「シンガポール人の、リー・ガウホンです。」
自分達よりも、一回り若い彼らに、まずはしっかりと自己アピールをする。
「神戸から来ました。中村探偵事務所所長の中村景満です。」
「ウチは、京都出身。元セクシーアマゾネスのメンバー 烏丸雫です。」
「クイーンオブアリス探偵事務所所長の、黒川アリスです。」
まずは、この1年間の調査結果を報告し合う。それから特訓スケジュールを打ち合わせ。その後、4人は尖沙咀のインターコンチネンタルにチェックイン。トレーニングウェアに着替え、九龍公園でカンフーの修行。ブルース・リーやジャッキー・チェンの映画並みの特訓を行い、みっちりと鍛え上げた。終了後、ホテルに戻り、シャワーを浴びる。ウェアはランドリーで洗濯し、部屋に干した。夜は、尖沙咀で飲茶に舌鼓。
「本場の飲茶は楽しいな。」
「皆さん、香港のグルメも楽しんでください。」
その後、尖沙咀プロムナードから、香港島の夜景を鑑賞。聳え立つ中国銀行・香港上海銀行・IFCタワーは煌びやかで、見る者を魅了させる。
「幻想的やな。」
「100万ドルの夜景とは、よく言ったよ。」
夜景に酔いしれた。
「こんばんは。お怪我はいかがですか?」
同部屋に入院していた2人。所長と雫は、傷ついた身体を起こして、陳と向かい合う。
「あぁ…。マシにはなって来たがな…。」
「ウチも、まだ痛いねんけど…。」
百鬼夜行之衆と猛毒獣大陸との、妖魔城での三つ巴の戦いにて、早々と敗れて戦線離脱を余儀なくされた。探偵連合軍の勝利を知り、ホッとしたと同時に、自分達の無力さを痛感した。
「我々は勝利しました。雅文君と玲奈ちゃんは、百鬼夜行之衆と猛毒獣大陸の幹部とボスを倒したのは、驚きましたよ。」
年末年始の海外修行の成果だと感じ、陳は感慨深く思っていた。それで一層、自分達も強くならなければならない、と2人は強く感じていた。
「それなのだが、私は所長として早々と敗れてしまったことが、ホンマに悔しいし、残念なことや。」
所長は、唇を噛み締めて悔しさを滲ませた。夕陽が射し、所長の決意に満ちた顔が照らされる。雫もそれに続く。
「ホンマに…。ウチも思う…。ウチももっと強くならな、あの子ら守られへん…。雅文君、美夜子ちゃん、玲奈ちゃん、ウチにとっては、息子と娘みたいなモンやから…。ウチが守ってやりたい…。うぅ…。強くなりたい…。」
雫はポロポロと涙を零しながら、決意表明した。陳は2人の決意を真摯に受け止め、口を開いた。
「分かった。強くなりたい、そのためには己の弱さを認める。それは本当にキツいことだ。今、2人はそれを出来た。そこからが始まりだ。分かった。修業を行おう。まずは、しっかり身体を治すこと。そこからだ。」
秋になり、2人は懸命にリハビリに励んだ。強くなりたい、その前には、己の弱さを認めること。それを、雫は特に噛み締めていた。
(ウチは弱いねん…。せやから、強くならなアカン…。)
一昨年のGolden Fruitとの戦いで、里香と由香里を拐おうとした黒服に斬りつけられ、敗北を喫し、そのまま2人は拐われた。昨年の春、髑髏城との戦いで幹部と戦うも、大苦戦して陳の助けが無ければ、敗北どころか殺されていた。ここまで中村探偵事務所が、経験してきた戦いで雫は、敗北ばかりしていた。
(絶対に、ここで強くなるんや!!)
リハビリの成果もあり、11月には走れる程に回復。退院した。
その間、陳は仕事の合間を縫い、水面下で計画を建てていた。香港の黄仙探偵事務所と提携して、12月30日から1月2日までの4日間で特訓を行うことになった。パソコンのZoomを通じて、日本と香港でやり取りしている。
「すまんな、ウォン。何から何まで世話になる。」
ウォンは、香港名物の鴛鴦茶(インヨンティー)を飲みながら、静かに微笑む。
「あぁ、いいんだ。向上心があるのは、いいことだ。いつか、我々も日本で特訓しに来ていいか?」
「もちろん。その時は歓迎する。」
ウォンの事務所には、3人の若手探偵がいる。頭脳明晰なアグネス・ワン、ブルース・リーの熱狂的ファンのリー・ガウホン、喧嘩っ早いが拳法の使い手 チェン・マイ・ラムと個性豊かである。
「ただいま戻りました。」
リー・ガウホンとチェン・マイ・ラムが、依頼を遂行して戻って来た。香港は、先進国並みの経済力を誇るが、同時に経済格差も激しく、下町には物乞いしている人がいる。全員揃った所で、ウォンは今回のことを話した。
「そうなんですね。」
「裏社会の列強を潰すなんて、大したものだな!」
メンバー達も快く引き受けてくれた。
所長と雫は、陳と共に仕事の合間を縫って、カンフーの修行に励んだ。2人の向上心に感心した陳は、何としてもこの修行を実りあるものにしたい、と考えた。そして、この修行にアリスも同行する。アリスも武術に長けており、陳に同行を申し入れ、そこからトレーニングしていた。迎えた12月30日、4人は関西国際空港に集合。
「さて、行きましょう。」
「この4日間を実りあるものにしよう。」
アリスは、探偵事務所長として、海外の探偵事務所と提携し、パートナーシップを結ぶことを考えていた。香港の航空会社 キャセイパシフィック航空で行き、13時ごろに香港に到着。手荷物受取と入国審査を済ませ、エアポートエクスプレスで九龍半島の旺角へ向かった。地下鉄の駅から、地上へ出ると、女人街・金魚街といったマーケット、看板が並ぶネイザンロードと、雑多な世界観が入り混じる街並みが広がっていた。街を歩き、ウォンの探偵事務所へ向かった。
「你好!(広東語:ネイホウ)!」
ウォンに出迎えられ、一同は席に着く。香港名物の鴛鴦茶を振る舞う。
「年末の忙しい中、香港までお越しくださり、誠にありがとうございます。私が黄仙(ウォンシン)探偵事務所所長のウォン・クーシェンです。」
メンバー達も自己紹介をする。
「香港とシンガポールのハーフの、アグネス・ワンです。」
「你好!九龍出身のチェン・マイ・ラムです。」
「シンガポール人の、リー・ガウホンです。」
自分達よりも、一回り若い彼らに、まずはしっかりと自己アピールをする。
「神戸から来ました。中村探偵事務所所長の中村景満です。」
「ウチは、京都出身。元セクシーアマゾネスのメンバー 烏丸雫です。」
「クイーンオブアリス探偵事務所所長の、黒川アリスです。」
まずは、この1年間の調査結果を報告し合う。それから特訓スケジュールを打ち合わせ。その後、4人は尖沙咀のインターコンチネンタルにチェックイン。トレーニングウェアに着替え、九龍公園でカンフーの修行。ブルース・リーやジャッキー・チェンの映画並みの特訓を行い、みっちりと鍛え上げた。終了後、ホテルに戻り、シャワーを浴びる。ウェアはランドリーで洗濯し、部屋に干した。夜は、尖沙咀で飲茶に舌鼓。
「本場の飲茶は楽しいな。」
「皆さん、香港のグルメも楽しんでください。」
その後、尖沙咀プロムナードから、香港島の夜景を鑑賞。聳え立つ中国銀行・香港上海銀行・IFCタワーは煌びやかで、見る者を魅了させる。
「幻想的やな。」
「100万ドルの夜景とは、よく言ったよ。」
夜景に酔いしれた。
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