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第4章 六凶編 VS 百鬼夜行之衆・猛毒獣大陸
第86話 探偵復帰
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Golden Tigerと髑髏城に勝利を収め、入院中の玲奈の代役に、陳青鴻が非常勤の嘱託職員の探偵として、事務所に勤務した。梅雨の時期を経て、7月になり、本格的な夏を迎えた。セミの声が響き、蒸し暑くなり、皆の服装が夏服になってきた頃、この暑さを吹き飛ばすような嬉しいニュースが、事務所に舞い込んだ。
「そうか!それは良かった!無理せんでええからな!」
「はい。玲奈も早く皆に会いたいです!」
玲奈の退院日が決まり、職場復帰出来るということである。あの激闘が終わった後の経過は、こうなっていた。
Golden Tigerと髑髏城の面々は逮捕され、本拠地に捜索が入り、全てのものが押収された。髑髏城の本拠地 ゲーマーズ・パラダイスの地下で栽培されていた大麻・アヘン、その他合成麻薬なども回収され、店は閉鎖された。関西の2つの反社会的勢力が、同時に陥落したことは関西中に衝撃が走った。
西園寺探偵事務所
大阪府池田市にひっそりと佇む事務所。初夏の昼下がり、紅茶を飲んでくつろいでいだ。
「反社会的勢力を2つも潰すなんて、雅文君達、中々やるわね…。」
「お母様。穂香は、玲奈さんのことが心配です。銃撃されたみたいなので…。」
「大丈夫や、穂香。未来予知では、無事に回復してるで。あら、仲間が増えてるわ。これから楽しみね、あの子達。」
「良かった。お母様。8月なんやけど、なにわ淀川花火大会で、アイドルのライブがあるんよ。そこで穂香と一緒に、玲奈さんに調教してもらった子が出るみたいで…。」
「へぇ、あの子らアイドルになったんや。ええやん。行ってあげたら。」
「はい。お母様。この時に玲奈さんに会えたら、また調教してもらいたい…。」
大阪体育大学
夏が近づき、熱気が漂うこの頃、1人プールで自主トレしている女子がいた。黒髪ショートで、高校生の頃よりも身体は大きくなり、胸も尻もより一層豊満になっていた。一心不乱に泳ぎ、夏の大会に向けて、ストイックにトレーニングに励む。一通り泳ぎ、プールから上がる。
「ふー…。」
シャワーを浴びている間、考え事をしていた。
(雅文さん、ホンマにスゴいな…。)
倉橋沙耶香は、高校卒業後、大阪体育大学に進学。吹田市から泉南郡へ移住し、近くのマンションで一人暮らししている。あの激闘をニュースで見て、驚きを隠せなかった。
(雅文さん、依頼人のためなら、ヤクザにも喧嘩売るんやからな…。それで勝ったんやから、何か雅文さんがどんどん遠い存在になっていく…。)
心のどこかに寂しさを感じていた。シャワーを浴びた後、身体を拭いて、更衣室に戻って着替える。雫が胸と尻に滴り、1つの絵になる。
「雅文さん、また会えたら、沙耶香のこと抱いてぇ…。」
Golden Tigerが撃破され、里香と由香里に平和が戻り、高校最後の夏を満喫した雅文。
(こうして、みんなと一緒におれるんも、最後やねんな…。)
校舎の窓から見える青い空と白い雲、みんなと過ごす最後の夏。どこか切なさを感じた。7月7日、七夕の日、学校が終わって出勤すると、玲奈が戻ってきていた。
「玲奈ちゃん、おかえり。」
「ただいま、雅文さん。」
入院生活を終え、玲奈が職場に復帰した。連絡事項として、陳青鴻が正式に中村探偵事務所に採用となる。彼は新開地に喫茶店を持っていたが、それをもうすぐ畳む。閉店日の夜に事務所だけで貸し切り、玲奈の職場復帰・陳の探偵復帰・戦勝祝いを兼ねて、盛大な宴会をすることになった。
「そうなんや。」
「陳さん、喫茶店やってるんですよ。そこで飲んだ鴛鴦茶(インヨンティー)美味しかったぁ…。」
鴛鴦茶は、ミルクティーとコーヒーを半々で混ぜた香港名物の飲み物である。
「ミルクティーとコーヒーを混ぜたヤツか。美味そうやな。」
それから、いつものように仕事に励んだ。そして、迎えた週末。この日は全員出勤で、陳は準備があるということで、早めに帰った。18:30に全ての業務を終わらせ、皆で陳の店に向かう。
「車は、私のものが1台。助手席と後部座席合わせて、定員は4人。じゃんけんで乗る人を決めたいが、電車で行くのが1人だけになるのは可哀そうやから、車に乗れるのは2人にしよう。」
所長の提案で、残る4人がじゃんけんをし、その結果、美夜子と玲奈が所長の車に乗ることになった。美夜子は助手席、玲奈は後部座席に乗り、所長は車で出発。戸締りを済ませ、雅文と雫は、阪急電鉄 神戸三宮駅から新開地へ向かう。
夕陽が沈み、辺りは徐々に暗くなる。夜の三宮を走る所長の車。三宮は夜になると、昼とは打って変わって、大人の世界の様相を現す。フラワーロードを南下し、京橋PAから阪神高速道路 神戸線に入った。
「わぁ、ポートタワーが綺麗ですね。」
「そうやろ、玲奈ちゃん。摩耶から見下ろす神戸の夜景は最高や。」
「何か、ロマンチック~!」
「フフ、可愛いわ。玲奈ちゃん。」
その頃、雅文と雫は阪急電鉄で新開地へ向かっていた。阪急電鉄 神戸線は神戸三宮駅を過ぎると、地下鉄の路線となる。2人きりで雑談していた。
「あの戦い、雅文ようやったな。」
「ありがとうございます。私は友達のために戦ったから。」
時刻は19時になり、一同は陳の経営する喫茶店「甘茶楼」に到着。扉を開けると、テーブルが用意され、キッチンには様々な料理があった。黒い調理服に身を包んだ陳が、オーナーとして一同を迎えた。
「歓迎光臨!ようこそ、「「甘茶楼」」へ!当店の最後の晩餐に来ていただき、誠にありがとうございます。さあさあ、どうぞ、テーブルへ。」
陳に案内され、テーブル席に着く。テーブル席は2つあり、「Young」と「Adult」に分けられていた。雅文・美夜子・玲奈は「Young」の、所長と雫は「Adult」の席に着いた。陳は、中央に立ち、この後のラインナップと自分の来歴について説明する。
「みなさん、改めましてこんばんは。私の喫茶店「「甘茶楼」」閉店の最後の晩餐にお集まりいただき、誠にありがとうございます。私はかつて中国・香港で点心師を、台湾で喫茶店を営んでおりました。その私が腕をふるい、今夜は、私の生まれ育った中国の広州・台湾・香港名物の飲茶を、存分にご堪能していただきましょう。前置きは以上です。」
キッチンに向かい、蒸籠に入った点心を蒸す。その間にテーブルに茶碗と急須を置き、注ぎ口の長い特殊なヤカンでお湯を注ぐ。香港では飲茶で飲まれるお茶は、プーアル茶が主流だが、独特のクセがあるので、日本人に馴染みのある烏龍茶を淹れた。陳が慣れた手つきで、1煎目のお茶で食器を洗う。
「洗杯ですね?」
「玲奈ちゃん、良く知ってるね。」
2煎目のお茶を注ぎ、所長から乾杯の挨拶。
「Golden Tigerと髑髏城との戦争に勝利したこと、玲奈ちゃんの職場復帰、そして新たな仲間 陳青鴻の加入を祝い、乾杯!!」
乾杯し、茶を飲む。蒸籠から蒸気が上がり、点心が蒸し上がる。
「さぁさぁ、宴会の幕開けだぁ!!」
キッチンに向かい、蒸籠を持ち出し、テーブルに乗せる。開けると、蒸気と共に蒸し上がった点心が出てきた。
「最初は、蝦鮮餃(エビ餃子)・小籠包・焼売・大根餅!!」
中国に留学した際に、香港に赴き、飲茶を堪能。そこで食べたものが出て来て、玲奈は目を輝かせて喜ぶ。
「やったー!香港で食べたヤツあるー!!」
「蒸したてが美味しいのよね。」
「ではでは、皆さん。いただきます!」
雅文・美夜子は、小籠包をレンゲに乗せて、割れ目から出てきた肉汁を吸う。
「出来立ての小籠包は、汁が美味いな。」
「割れ目から出てきてるのが、官能的ね。」
食べると、肉汁の旨味が口いっぱいに広がる。焼売・大根餅も蒸したての旨味があり、茶とよく合う。
「雅文さん、アーンってして🖤」
玲奈におねだりされた雅文は、エビ餃子を箸でつまんで玲奈に食べさせる。
「美味しい?」
「美味しい🖤」
その様子を見て、陳も雫に点心を食べさせる。
「どれがいいですか?雫さん。」
「小籠包がいいです。」
「はい、アーン。」
「アーン。ハフッ、ハフッ、お汁がいっぱい…。」
その様子を見て、所長が茶を飲んで一言。
「小籠包は、一口でいくと火傷するで。」
「ゴクッ、ハァハァ…。熱い…。」
陳も点心を食べながら、キッチンに戻っては次の料理と、テキパキ動く。その後、主食でご飯ものか麺かを聞き、準備を進める。揚げたて春巻とハトシ、主菜で酔っぱらいエビと焼豚が出てきた。
「玲奈ちゃん、入院生活はキツかったやろ?」
「はい…。ご飯イマイチやし、夜は怖いし、やから、雅文さんと美夜子さんとまた一緒に出来て良かったです。」
「私も、玲奈ちゃんとまた一緒に出来て、嬉しいわ。」
その様子を、微笑ましそうに見つめる所長・雫・陳。
「楽しみだな、あの3人。」
「あぁ、私も期待してるんよ。あの3人なら、どんな困難も乗り越えられるとね。」
それからしばらくして、ご飯ものを雅文達に、麺を所長達に持っていった。ご飯ものは、ガチョウのローストと叉焼が乗った焼味飯(シウメイハン)という香港料理。
「ボリュームあるな。」
「これも香港で食べましたー!」
取り分けていただく。タレと肉汁がご飯に染み込み、絶品である。
「美味いな。」
「美夜子さん、アーンってしますね。」
「いいわよ。」
玲奈に食べさせてもらう美夜子に、雅文は少しドキッとした。所長・雫・陳はワンタン麺をいただく。香港のワンタンは身が大きく、プリプリの海老がたっぷり。
「あっさりしてて美味いな。」
「ワンタン麺だけでも種類は豊富ですからね。」
最後のデザートは、2021年に倒産してしまった香港のスイーツ専門店「許留山」(ホイラウサン)の名物 芒果撈野(モングォロウイェ)。マンゴーアイス・カットマンゴー・寒天・イチゴ・メロン・キウイ・スイカとフルーツ盛り沢山のスイーツ。
「どうぞ、香港発の幻のフルーツバスケット。お召し上がりを、マドモアゼル。」
香港名物の鴛鴦茶を注ぎ、ダンディーにキメる。
「わぁ、陳さん。ダンディーですね。」
「香港映画のバイプレイヤーみたいね。」
スイーツに舌鼓を打つ一同を、微笑ましそうに見つめる陳。かつて台湾と香港で探偵をしていた頃の自分を思い出し、その時の情熱がふつふつと沸き上がってくる。
(探偵人生 第3幕 in日本。楽しみだな…。)
宴会はお開きとなり、陳は1人で片付けをし、約10年やってきた甘茶楼を閉店した。
「これは新たなスタートだ…。」
帰路につく雅文達。雫と玲奈が阪急電鉄でそのまま帰り、雅文と美夜子は所長の車で神戸三宮駅まで送ってもらう。
「面白くなりそうやな。」
「はい、私も陳さんに学ばせていただくわ。」
「頑張ろうな、美夜子。」
「そうか!それは良かった!無理せんでええからな!」
「はい。玲奈も早く皆に会いたいです!」
玲奈の退院日が決まり、職場復帰出来るということである。あの激闘が終わった後の経過は、こうなっていた。
Golden Tigerと髑髏城の面々は逮捕され、本拠地に捜索が入り、全てのものが押収された。髑髏城の本拠地 ゲーマーズ・パラダイスの地下で栽培されていた大麻・アヘン、その他合成麻薬なども回収され、店は閉鎖された。関西の2つの反社会的勢力が、同時に陥落したことは関西中に衝撃が走った。
西園寺探偵事務所
大阪府池田市にひっそりと佇む事務所。初夏の昼下がり、紅茶を飲んでくつろいでいだ。
「反社会的勢力を2つも潰すなんて、雅文君達、中々やるわね…。」
「お母様。穂香は、玲奈さんのことが心配です。銃撃されたみたいなので…。」
「大丈夫や、穂香。未来予知では、無事に回復してるで。あら、仲間が増えてるわ。これから楽しみね、あの子達。」
「良かった。お母様。8月なんやけど、なにわ淀川花火大会で、アイドルのライブがあるんよ。そこで穂香と一緒に、玲奈さんに調教してもらった子が出るみたいで…。」
「へぇ、あの子らアイドルになったんや。ええやん。行ってあげたら。」
「はい。お母様。この時に玲奈さんに会えたら、また調教してもらいたい…。」
大阪体育大学
夏が近づき、熱気が漂うこの頃、1人プールで自主トレしている女子がいた。黒髪ショートで、高校生の頃よりも身体は大きくなり、胸も尻もより一層豊満になっていた。一心不乱に泳ぎ、夏の大会に向けて、ストイックにトレーニングに励む。一通り泳ぎ、プールから上がる。
「ふー…。」
シャワーを浴びている間、考え事をしていた。
(雅文さん、ホンマにスゴいな…。)
倉橋沙耶香は、高校卒業後、大阪体育大学に進学。吹田市から泉南郡へ移住し、近くのマンションで一人暮らししている。あの激闘をニュースで見て、驚きを隠せなかった。
(雅文さん、依頼人のためなら、ヤクザにも喧嘩売るんやからな…。それで勝ったんやから、何か雅文さんがどんどん遠い存在になっていく…。)
心のどこかに寂しさを感じていた。シャワーを浴びた後、身体を拭いて、更衣室に戻って着替える。雫が胸と尻に滴り、1つの絵になる。
「雅文さん、また会えたら、沙耶香のこと抱いてぇ…。」
Golden Tigerが撃破され、里香と由香里に平和が戻り、高校最後の夏を満喫した雅文。
(こうして、みんなと一緒におれるんも、最後やねんな…。)
校舎の窓から見える青い空と白い雲、みんなと過ごす最後の夏。どこか切なさを感じた。7月7日、七夕の日、学校が終わって出勤すると、玲奈が戻ってきていた。
「玲奈ちゃん、おかえり。」
「ただいま、雅文さん。」
入院生活を終え、玲奈が職場に復帰した。連絡事項として、陳青鴻が正式に中村探偵事務所に採用となる。彼は新開地に喫茶店を持っていたが、それをもうすぐ畳む。閉店日の夜に事務所だけで貸し切り、玲奈の職場復帰・陳の探偵復帰・戦勝祝いを兼ねて、盛大な宴会をすることになった。
「そうなんや。」
「陳さん、喫茶店やってるんですよ。そこで飲んだ鴛鴦茶(インヨンティー)美味しかったぁ…。」
鴛鴦茶は、ミルクティーとコーヒーを半々で混ぜた香港名物の飲み物である。
「ミルクティーとコーヒーを混ぜたヤツか。美味そうやな。」
それから、いつものように仕事に励んだ。そして、迎えた週末。この日は全員出勤で、陳は準備があるということで、早めに帰った。18:30に全ての業務を終わらせ、皆で陳の店に向かう。
「車は、私のものが1台。助手席と後部座席合わせて、定員は4人。じゃんけんで乗る人を決めたいが、電車で行くのが1人だけになるのは可哀そうやから、車に乗れるのは2人にしよう。」
所長の提案で、残る4人がじゃんけんをし、その結果、美夜子と玲奈が所長の車に乗ることになった。美夜子は助手席、玲奈は後部座席に乗り、所長は車で出発。戸締りを済ませ、雅文と雫は、阪急電鉄 神戸三宮駅から新開地へ向かう。
夕陽が沈み、辺りは徐々に暗くなる。夜の三宮を走る所長の車。三宮は夜になると、昼とは打って変わって、大人の世界の様相を現す。フラワーロードを南下し、京橋PAから阪神高速道路 神戸線に入った。
「わぁ、ポートタワーが綺麗ですね。」
「そうやろ、玲奈ちゃん。摩耶から見下ろす神戸の夜景は最高や。」
「何か、ロマンチック~!」
「フフ、可愛いわ。玲奈ちゃん。」
その頃、雅文と雫は阪急電鉄で新開地へ向かっていた。阪急電鉄 神戸線は神戸三宮駅を過ぎると、地下鉄の路線となる。2人きりで雑談していた。
「あの戦い、雅文ようやったな。」
「ありがとうございます。私は友達のために戦ったから。」
時刻は19時になり、一同は陳の経営する喫茶店「甘茶楼」に到着。扉を開けると、テーブルが用意され、キッチンには様々な料理があった。黒い調理服に身を包んだ陳が、オーナーとして一同を迎えた。
「歓迎光臨!ようこそ、「「甘茶楼」」へ!当店の最後の晩餐に来ていただき、誠にありがとうございます。さあさあ、どうぞ、テーブルへ。」
陳に案内され、テーブル席に着く。テーブル席は2つあり、「Young」と「Adult」に分けられていた。雅文・美夜子・玲奈は「Young」の、所長と雫は「Adult」の席に着いた。陳は、中央に立ち、この後のラインナップと自分の来歴について説明する。
「みなさん、改めましてこんばんは。私の喫茶店「「甘茶楼」」閉店の最後の晩餐にお集まりいただき、誠にありがとうございます。私はかつて中国・香港で点心師を、台湾で喫茶店を営んでおりました。その私が腕をふるい、今夜は、私の生まれ育った中国の広州・台湾・香港名物の飲茶を、存分にご堪能していただきましょう。前置きは以上です。」
キッチンに向かい、蒸籠に入った点心を蒸す。その間にテーブルに茶碗と急須を置き、注ぎ口の長い特殊なヤカンでお湯を注ぐ。香港では飲茶で飲まれるお茶は、プーアル茶が主流だが、独特のクセがあるので、日本人に馴染みのある烏龍茶を淹れた。陳が慣れた手つきで、1煎目のお茶で食器を洗う。
「洗杯ですね?」
「玲奈ちゃん、良く知ってるね。」
2煎目のお茶を注ぎ、所長から乾杯の挨拶。
「Golden Tigerと髑髏城との戦争に勝利したこと、玲奈ちゃんの職場復帰、そして新たな仲間 陳青鴻の加入を祝い、乾杯!!」
乾杯し、茶を飲む。蒸籠から蒸気が上がり、点心が蒸し上がる。
「さぁさぁ、宴会の幕開けだぁ!!」
キッチンに向かい、蒸籠を持ち出し、テーブルに乗せる。開けると、蒸気と共に蒸し上がった点心が出てきた。
「最初は、蝦鮮餃(エビ餃子)・小籠包・焼売・大根餅!!」
中国に留学した際に、香港に赴き、飲茶を堪能。そこで食べたものが出て来て、玲奈は目を輝かせて喜ぶ。
「やったー!香港で食べたヤツあるー!!」
「蒸したてが美味しいのよね。」
「ではでは、皆さん。いただきます!」
雅文・美夜子は、小籠包をレンゲに乗せて、割れ目から出てきた肉汁を吸う。
「出来立ての小籠包は、汁が美味いな。」
「割れ目から出てきてるのが、官能的ね。」
食べると、肉汁の旨味が口いっぱいに広がる。焼売・大根餅も蒸したての旨味があり、茶とよく合う。
「雅文さん、アーンってして🖤」
玲奈におねだりされた雅文は、エビ餃子を箸でつまんで玲奈に食べさせる。
「美味しい?」
「美味しい🖤」
その様子を見て、陳も雫に点心を食べさせる。
「どれがいいですか?雫さん。」
「小籠包がいいです。」
「はい、アーン。」
「アーン。ハフッ、ハフッ、お汁がいっぱい…。」
その様子を見て、所長が茶を飲んで一言。
「小籠包は、一口でいくと火傷するで。」
「ゴクッ、ハァハァ…。熱い…。」
陳も点心を食べながら、キッチンに戻っては次の料理と、テキパキ動く。その後、主食でご飯ものか麺かを聞き、準備を進める。揚げたて春巻とハトシ、主菜で酔っぱらいエビと焼豚が出てきた。
「玲奈ちゃん、入院生活はキツかったやろ?」
「はい…。ご飯イマイチやし、夜は怖いし、やから、雅文さんと美夜子さんとまた一緒に出来て良かったです。」
「私も、玲奈ちゃんとまた一緒に出来て、嬉しいわ。」
その様子を、微笑ましそうに見つめる所長・雫・陳。
「楽しみだな、あの3人。」
「あぁ、私も期待してるんよ。あの3人なら、どんな困難も乗り越えられるとね。」
それからしばらくして、ご飯ものを雅文達に、麺を所長達に持っていった。ご飯ものは、ガチョウのローストと叉焼が乗った焼味飯(シウメイハン)という香港料理。
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「これも香港で食べましたー!」
取り分けていただく。タレと肉汁がご飯に染み込み、絶品である。
「美味いな。」
「美夜子さん、アーンってしますね。」
「いいわよ。」
玲奈に食べさせてもらう美夜子に、雅文は少しドキッとした。所長・雫・陳はワンタン麺をいただく。香港のワンタンは身が大きく、プリプリの海老がたっぷり。
「あっさりしてて美味いな。」
「ワンタン麺だけでも種類は豊富ですからね。」
最後のデザートは、2021年に倒産してしまった香港のスイーツ専門店「許留山」(ホイラウサン)の名物 芒果撈野(モングォロウイェ)。マンゴーアイス・カットマンゴー・寒天・イチゴ・メロン・キウイ・スイカとフルーツ盛り沢山のスイーツ。
「どうぞ、香港発の幻のフルーツバスケット。お召し上がりを、マドモアゼル。」
香港名物の鴛鴦茶を注ぎ、ダンディーにキメる。
「わぁ、陳さん。ダンディーですね。」
「香港映画のバイプレイヤーみたいね。」
スイーツに舌鼓を打つ一同を、微笑ましそうに見つめる陳。かつて台湾と香港で探偵をしていた頃の自分を思い出し、その時の情熱がふつふつと沸き上がってくる。
(探偵人生 第3幕 in日本。楽しみだな…。)
宴会はお開きとなり、陳は1人で片付けをし、約10年やってきた甘茶楼を閉店した。
「これは新たなスタートだ…。」
帰路につく雅文達。雫と玲奈が阪急電鉄でそのまま帰り、雅文と美夜子は所長の車で神戸三宮駅まで送ってもらう。
「面白くなりそうやな。」
「はい、私も陳さんに学ばせていただくわ。」
「頑張ろうな、美夜子。」
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