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第3章 back to school 青春の甘い楽園

第62話 エピソードオブ玲奈

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   音無玲奈は、1997年8月26日に大阪府大阪市で生まれた。音無家の長女である彼女は、両親の愛を受けて、すくすくと育った。彼女の生まれ育った大阪市淀川区は、閑静なエリアだが、淀川大橋を渡ると、キタの大都会 梅田と繋がる。彼女が3歳の頃に、妹が生まれ、真奈と名付けられた。幼稚園児になった玲奈は、活発な娘で、よく他の子達と遊んでいた。特におままごとが好きで、家でも1人で人形を使って遊んだ。
「れなが、ママでちゅよ~。」
2004年4月、玲奈は大阪市内の小学校に入学し、そこでは優等生として学校生活を送っていた。

   小学校高学年になり、玲奈は2次性徴が始まり、身体に変化が起きた。夏のプールの授業、水着を来た時に胸が大きくなっている感じがした。
(もしかして、オッパイ大きくなってる?)
プールで泳いでいると、女子の何人かが見学していた。
(ん?どないしたん?)
授業後に、見学していた女子に話を聞くと、その娘は生理だったという。夏休みのある朝、玲奈が起きてから、お手洗いに行って用を足した時、ショーツに微かに血が付いているのが見えた。
(もしかして、生理?)
それから、玲奈はナプキンをするようになり、6年生になる頃には、一際背が伸びて、むっちりとした身体になった。玲奈自身も、そのことには自覚があり、男子の視線を釘付けにしていることも感じていた。
(玲奈のカラダ、めっちゃ見てる…。)
7月のある日、生理で見学した分の補習として、放課後にプールで泳いでいた。玲奈の他に、もう1人男子がいた。彼は内気で大人しい感じの子である。補習が終わり、玲奈はシャワーを浴びた後に、更衣室で着替える。
「ふー…。プール気持ち良かった…。」
更衣室は玲奈1人だけなので、水着を脱いで、裸になり、タオルで身体を拭く。先程まで一緒にいた男子は、先にシャワーを浴びて、そそくさと更衣室に向かっていた。2次性徴が始まった身体は、徐々に丸みを帯び、胸も膨らみ、女性の身体に近づいてきていた。
「おぱんちゅ、あった。」
カバンから、キャラクターものの可愛らしいパンツを履いた時に、ふと誰かの視線を感じた。窓に目をやると、先程の男子が覗いていた。目が合うと、彼は視線を逸らした。
「ねぇ。今、玲奈しかおらんから、入って来ぃよ。」
「えっ?いいの?」
拍子抜けした様子で、彼は女子更衣室に入った。そして、2人きりの時間。
「玲奈ちゃん、可愛いパンツ履いてる…。」
「そう?玲奈のこと可愛いって言ってくれて、ありがとう。」
そう言うと、玲奈は靴下を履いて、ランドセルを背負った。
「うわー!!セクシー過ぎる~!!!」
「これは、みんなに内緒やで🖤」

    2010年に中学校に入学。中学生になった玲奈は、バレーボール部に所属し、バレーボールに打ち込んだ。運動神経が良い玲奈は、メキメキと上達し、レギュラーに定着した。この年の秋に行われたW杯バレーをテレビで観戦。
「最後の相手、アメリカか。めっちゃ強いで…。」
最終戦の相手は、アメリカ。これまでほとんど勝てていない。この試合で大活躍したのは、木村沙織。エースとして覚醒する転機となり、彼女の活躍もあって、見事勝利を挙げた。
「やったーー!!」
玲奈は、この大会で刺激を受け、より一層、バレーボールに精を出した。2年生になると、男子の友人が出来、彼らと一緒に遊ぶことが増えた。
「玲奈ちゃん、調子はどない?」
「ええよ。」
陽気な彼は、沖田博也(ひろや)。梅田に住んでおり、ラップとヒップホップが好きな少年。夏休みのある日、玲奈は彼と一緒に鶴橋へ遊びに行った。保護者として、高2の彼の姉も一緒に来た。姉は、麻里子と言い、黒髪ショートの少しパンクな感じの娘。大阪環状線で鶴橋駅に着くと、焼き肉の匂いがプンプン漂い、高架下の鶴橋商店街には所狭しと韓国料理店やその食材を扱っている店が建ち並んでいた。
「めっちゃ濃い感じやな…。」
「玲奈ちゃん、今めっちゃK-Pop流行ってるやん。せやから、このリトル韓国の鶴橋と桃谷を今日は満喫しよな。」
「姉貴ぃ、グラサン決まってんな。」
真夏の大阪はかなり暑く、この狭い鶴橋商店街を廻ると、歩いているだけでも汗が吹き出す。鶴橋と言えば、焼き肉。学生だけでもリーズナブルなお店でいただく。
「K-Popで言うたら、ウチは東方神起が好きやな。」
「玲奈は、少女時代が好きです。妹がK-Popの影響で、ダンサーになりたいって言ってます。」
ダンサーと聞いて、博也が反応する。
「ダンサーか、ええやん。俺はラッパー目指してる。」
話が弾んだ所で、注文した肉が来て、焼き始める。熱気と煙が立ち込め、玲奈はテンションが上がる。焼きたてのホルモンは、程よく脂が溶け出し、噛むと口の中で旨みが広がる。
「美味しい~!」
「せやろ?鶴橋来たら、ホルモンは食うとかなな。」
焼き肉を堪能し、その後は桃谷にある生野コリアンタウンに向かった。そこでK-PopのCDなどを買い、リトル韓国を満喫した。
「姉貴ぃ、玲奈ちゃん。俺の予想やけど、来年はPSY(サイ)がめっちゃ流行ると思うで。YouTubeの影響力は凄いで。」
この時は、半信半疑だったが、2012年の上半期にPSYの「江南STYLE」が大ヒットした。
「オッパ、江南STYLE!」
「ホンマにヒットしたー!!!」

    中3になった玲奈は、最後の大会後に引退し、受験勉強に勤しんだ。高校でも、バレーボールを続けたい玲奈は、大阪市の私立女子校 金蘭会高校を受験。見事、合格して、2013年に入学した。オリエンテーション合宿を経て、クラスに馴染み、バレーボール部に入部。ここでは、2人の女子と友達になった。
「玲奈よりオッパイあるで。」
茶髪ショートの、セクシーさ満点の彼女は、河本里奈。玲奈よりもハッチャけている。
「もー、オッパイ出さんといてよ。」
黒髪のポニーテールの娘は、黒木彩香。3人の中では、ツッコミ役である。この3人は、コートに立てば、彩香はリベロ、里奈は前衛センターで、玲奈が最後に仕留めると上手く歯車が噛み合い、互いの実力も向上していった。

     2年生になった2014年、春高バレーを制し、夏の大会に向けて、日々、練習に励んでいた。夏休みに入り、里奈がある提案をした。
「そうや、今度のオフの日に、ユニバ行かへん?」
「ユニバ、ええやん。」
「ユニバって?」
玲奈は、この当時、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の存在を知らなかった。玲奈にとっては、未知の領域である。当日、玲奈はTシャツ半パンというラフな格好で、JR大阪駅で2人と合流し、大阪環状線でユニバーサル・スタジオ・ジャパンへ向かった。到着すると、そこはハリウッド映画の世界が広がっていた。
「何コレー!!!」
「玲奈、めっちゃはしゃいでるやん。」
玲奈は、中学時代の男友達と一緒に行った鶴橋や、今回のユニバーサル・スタジオ・ジャパンなど、友達はいつも自分の知らない世界へ連れていってくれたのだと、確信した。女子校の友達と、夏休みの1日をユニバーサル・スタジオ・ジャパンで満喫。

ジョーズ
船で進んでいくと、人喰い鮫が現れた。
「サメおるー!!」
「これが、ジョーズやで。」
ガイドの女性がバズーカを放つも、タンクに当ててしまい、炎上した。
「タンク燃えたー!!」

ハリウッド・ザ・ドリームライド・バックドロップ
2013年より始まったアトラクション。通常のハリウッド・ザ・ドリームライドとは逆で、後ろ向きに走行する。
「後ろ向き?」
「そう、それでバックドロップ。」
背後の様子が分からないまま、コースターは急降下。バックドロップに玲奈は絶叫した。下りてからは、半泣きになっていた。
「死んだ思うた…。」

ジュラシックパーク
ここのレストランで昼食。その後、アトラクションに乗り、ビビる玲奈ちゃんは、最後にT-REXとご対面。
「待って待って、恐竜おるて、あぁぁぁぁぁ!!!!!!」
コースターは急降下し、玲奈は水を被ってびしょびしょになった。
「めっちゃ、びちょびちょやん…。」

初めてのユニバーサル・スタジオ・ジャパンを満喫し、英気を養った。帰りの電車内で雑談。
「これで、今度の大会もイケるで。」 
「私がリベロやるから、前は里奈頼むで。」
「うん。で、最後は玲奈が仕留めてな?」
「玲奈が、全部決めたるわ。」
勢いそのままに、夏の大会を制し、全国大会に出場。迎えた決勝で、リベロの彩香が防ぎ、里奈が上げたボールに向かって、玲奈は駆け出し、高く飛び上がった。
(これを、決める!!)
そして、激しく相手コートめがけて、叩きつけた。これが決まり、勝利して、全国大会を制した。
「やったーー!!!!」
これで、2014年度の公式戦全てを制し、3冠達成を果たした。玲奈は、感無量の気持ちだった。
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