依り代に選ばれた子

十二話

　次の金曜日がきた。

　同じように泉に入り、着物に着替えるよう言われる。
　この、約一週間の間に、月希はすっかり明るさを失い、必要以上に喋ることをやめてしまっていた。
　一族の者がどこからか監視しているようなこの状況では、喋りたくないと思ったし、また金曜の夜になる前までに心を殺さなきゃと思った。

　ボクハナニモカンジナイ。ナニモカンジタクナイ。

　また嫌な試練を受けなければならなくて、人ではないナニカに自分の体を好き勝手されるけど何も感じない。正直に言えば感じたくない。
　その為の訓練をしようと、何を言われても何も返事をしないことに決めた。友達は不思議がって三日ほどは声をかけてくれていたけれど、金曜の朝には誰も声をかけてくれなかった。
　そんなの何も感じない。だってぼくは親から見放され、ナニカに体を自由にされるんだもの。そんなの、この世界の誰からも見放されてるようなものだ。感じない。感じたくない。嬉しいも悲しいもいらない。


　着物に着替え、玄関に連れて行かれ草履を履いたら目隠しで進む。何も考えたくない。

　両側で月希を支えていたお手伝いさん二人が消え、目隠しの中の真っ暗な世界。


　ズルズルズルズル、ピチャリ。

　ピチャリ、ピチャリ。
　
　音が近づいてくるだけ、大丈夫。
　前回同様に両手首を頭の上で括られる。ピチャリ。ぬめぬめ、耳の中を這いずりまわる音に支配される。両の乳首、本来ならくすぐったいはずの脇、ぬめぬめ、ぬめぬめと移動し、それは段々と下に向かっていく。

　ぬめぬめ、まだ小さな月希のシンボルにそれは巻き付いて濡らしていく。しっかり濡らしたら後は、まだ慣れていない後口に無理やり入ってくる。ぞわぞわっと体が粟立ち、やっぱり嫌だと思ってしまった。一瞬でも考えてしまったら最後、その思いは変わらずどんどん湧いてくる。
「嫌だ！………やめて、助けて、来ないで！誰か！誰か出して！ここから出して！！誰か来てったら！！」

　数日声を出してなかった喉は、最初の一声は掠れたものの、その声を取り戻す。誰も来ないと分かっていながらも、お尻から侵入して内蔵をも犯そうとするナニカには嫌悪感しかない。
「お願い！助けて！いや！嫌だよ！なんでぼくばっかり！いやだそれ以上入らないで！」

　自分の怒鳴り声が鳴り響くだけの空間は、突如破られた。
　ガシャ！バリバリバリバリ。