上 下
4 / 12

4.突然の接触

しおりを挟む
今日もエリザベスが優雅にスケジュールを読み上げた。今日の外出はお茶会だった。

「今日のスイタール伯爵夫人主催のお茶会には後令息のスタンプ様とそのご友人も参加されます。」

「あら?お茶会は、いつもなら女性ばかりなのにどうしたの?」

「アリサ様の為です。そろそろどなたか気にいる方が出て来た頃では無いでしょうか?セッティングしますからおっしゃって下さいね。」

「そ、そんな人いないわ。紹介なんてしなくっていいから。こう言うのは自分で探すからそっとしておいて。」

「なりませんね。1日も早くお相手を見つけ御結婚され守り人様の世継ぎをお産み下さいませ。」

「えっ?何、、それ。どうしてそんな事を、、」

「我々、貴族が婚姻で世継ぎを授かるのが義務と同じく、守り人様も平和の世を続ける為にお世継ぎ様を授かるものなのです。」

「そんな馬鹿なこと言わないでよ!強制なの?」

「義務でございます。」

エリザベスはニッコリとした笑顔を崩さないから本気のようだ。

「本日のスタンプ様もおススメです。見た目は申し分無く、財産、収入も安定の有望株ですしお決めになっても宜しいかと重います。」

気分が悪くなり黙り込んだ。
義務だなんて。理不尽な。
私は勝手にここに連れて来られのに。
そりゃ豪華な生活を送っているけれど、私が望んだことでは無いわ!
ここにいたらそのうち勝手に夫を決められそう。ううん、きっと決められちゃうだろう。
何とかしてここを出よう。
でも、どうする?


スイタール伯爵夫人主催のお茶会はさんざんだった。
あからさまに口説いてくる男性が3人。
少人数なのでどこに席を移動しても必ず着いてくる。

「ちょっとお化粧直しに席を外すわね。」

部屋から出ると護衛がピタリと着いてくる。
流石にトイレの部屋まで着いて来ない。廊下で待機だ。

「フゥー、」

やっと1人になれたと手を洗いの鏡を見ている時だ。

「守り人様、どうかお静かに。危害は加えません。」

一人で洗面所に居たはずなのに声をかけられて、飛び上がる程、驚いた。
やっとの思いで悲鳴を抑えた。

手洗いの台の収納扉が開き侍女の制服を来た娘が身を縮めていた。
這うように出てくるとひざを降り頭を下げた。

「このような失礼をお許し下さい。この方法でしか接点が持てませんでした。」

サッと手を伸ばし手紙を渡された。

「これは?」

ドアに目をやりしゃがんで彼女の目線になると小声で話しかけた。

「あなたは誰?」

「私は隣国サンミール王国の密偵です。お願いがございます。秘密裏に我が国へどうかお越し下さい。」

「どう言う事?何故私が?」

「国は日照りで大飢饉にあい民は飢えてます。この国に援助を求めたのに攻めて来られ砦が破られる寸前です。そうなれば戦火は国全体に広がり犠牲になるのは民です。どうか我が国へ守り人の守護を頂きたいのです。お気持ちがあれば秘密裏にお連れします。」

「あなたを信じろと?どうやって?」

「まず手紙に書いた仲介人とお逢い下さい。夜会で見かけたと言えば良いです。詳しくはその時にです。」

「私が告げ口をするかもよ。今も大声をあげるかもよ?」

「守り人様は話を聞いて下さいました。我が身の覚悟は出来ています。どうか加護の力で民をお救い下さいませ。」

「頭をあげて。そんなの約束で来ないわ。
悪いけど、私はもう行くわ。」

その言葉に密偵はペコリと礼を取ると元の洗面台の下へ隠れた。
扉が閉まったのを確認すると洗面室のドアを開けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

果たされなかった約束

家紋武範
恋愛
 子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。  しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。  このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。  怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。 ※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋 伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。 それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。 途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。 その真意が、テレジアにはわからなくて……。 *hotランキング 最高68位ありがとうございます♡ ▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。

猫宮乾
恋愛
 再婚した父の元、継母に幽閉じみた生活を強いられていたマリーローズ(私)は、父が没した事を契機に、結婚して出ていくように迫られる。皆よりも遅く夜会デビューし、結婚相手を探していると、第一王子のフェンネル殿下が政略結婚の話を持ちかけてくる。他に行く場所もない上、自分の未来を切り開くべく、同意したマリーローズは、その後後宮入りし、正妃になるまでは婚約者として過ごす事に。その内に、フェンネルの優しさに触れ、溺愛され、幸せを見つけていく。※pixivにも掲載しております(あちらで完結済み)。

処理中です...