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34.安らぐ場所
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お土産を馬車の中いっぱいに準備して女将さんに会いに行くと涙を流す勢いで喜んでくれた。
既に私が侯爵と結婚式を挙げる事は耳に入っていた。
「ライアンの事があったけど、アンタが侯爵様と結婚すると聞いて安心したよ。幸せになりなよ。」
「幸せかぁ。幸せになるのって難しいのかもね。ははは。」
「どうしたんだい?もう直ぐ結婚式を挙げるんだから幸せに決まってるだろ?」
そう言ってジッと瞳を覗き様子を伺っている。どうしよう。ハンナさんに相談する?でも、貴族が絡む事になるからこれ以上心配をさせたく無いな。
ニッコリと笑うとハンナさんに抱きついた。
「いつも気にかけてくれてありがとう。この世界のお母さんみたい。」
「私でよければそう呼んでおくれよ。本当なら御両親が見守って式を挙げるのに不安だよね。頑張るんだよ。」
まさかこれから結婚する相手が別の女と仲睦まじくしていて悩んでいるとは想像もできないだろうね。
マーガレットさんにも会いに行くと大いに喜んでくれた。久しぶりに会っても変わらない。ああ、やっぱりここはいいな。
最後に私の家へ寄ってもらった。
荷物を家の中に運ばせて鍵を閉めるからと先に侍女達を馬車に乗せた。
着席を確認するとカバンから手紙を取り出し侍女の手に握らせた。
「これを執事に渡してね。私はここで寝るから。屋敷に帰ってちょうだい。」
「えっ?エリコ様、突然どうされました?」
侍女が馬車から降りてこようとするので手で静止をした。
「さあ、直ぐに出発して。命令よ。」
「どうしてもですか?ご予定には無かったですよね?」
「うん。でも命令だから聞いてね。」
「か、かしこまりました。」
その時、隣の騎士団詰所から騎士ラルクが顔を出した。
「声がすると思えばエリコさんじゃないですか?久しぶりですね。」
「うん。今日はここに泊まるの。宜しくね。」
そう言って馬車の行者へ出発しろと手を振るとやっと出発してくれた。
「はあ。たしかもう直ぐ挙式ですよね?ここに居て大丈夫なんですか?」
「うん、大丈夫。じゃあもう入るわね。」
「あ、ちょっと!」
何か話したそうだったけど、そそくさと扉を閉めてしまった。
2階のリビングの静寂にやっと1人になれたと実感をした。
「ハァー。」
ああ、やっと泣けるわ。もう目が腫れてバレるとか涙を隠す必要は無い。
アルベルトと初めて会ったのはこの家だった。噂の強盗かと思う容姿で恐ろしかったのを覚えているわ。
あんな人だけど男気がある優しいところが好きになった。
勿論、付き合うとか結婚なんてするつもりは無かったわ。強引さと流れでこうなってるけど。
彼が実はあんな男前でモテモテでエスコートが上手で洗練されている貴族だなんて誰が思う?
あの姿を見てしまったら、何で私なの?と今でも思ってしまう。
私の魅力なんて特に秀でたところはない。あえて言うなら希少種?なんたって異世界人だもん。
「私が珍しかったからよ。私じゃ無くたって素敵な御令嬢は沢山いるから。」
悔しさと悲しみ。
見抜けなかった自分の情けなさ。
このまま遠くの都市へ行こうか?
ダメ。また見つかるし、前よりもっと悪い奴に捕まるかも。
それならこの家へ逃げ込むのが精一杯の抵抗だわ。
結婚式を今週に控えた結論だった。
既に私が侯爵と結婚式を挙げる事は耳に入っていた。
「ライアンの事があったけど、アンタが侯爵様と結婚すると聞いて安心したよ。幸せになりなよ。」
「幸せかぁ。幸せになるのって難しいのかもね。ははは。」
「どうしたんだい?もう直ぐ結婚式を挙げるんだから幸せに決まってるだろ?」
そう言ってジッと瞳を覗き様子を伺っている。どうしよう。ハンナさんに相談する?でも、貴族が絡む事になるからこれ以上心配をさせたく無いな。
ニッコリと笑うとハンナさんに抱きついた。
「いつも気にかけてくれてありがとう。この世界のお母さんみたい。」
「私でよければそう呼んでおくれよ。本当なら御両親が見守って式を挙げるのに不安だよね。頑張るんだよ。」
まさかこれから結婚する相手が別の女と仲睦まじくしていて悩んでいるとは想像もできないだろうね。
マーガレットさんにも会いに行くと大いに喜んでくれた。久しぶりに会っても変わらない。ああ、やっぱりここはいいな。
最後に私の家へ寄ってもらった。
荷物を家の中に運ばせて鍵を閉めるからと先に侍女達を馬車に乗せた。
着席を確認するとカバンから手紙を取り出し侍女の手に握らせた。
「これを執事に渡してね。私はここで寝るから。屋敷に帰ってちょうだい。」
「えっ?エリコ様、突然どうされました?」
侍女が馬車から降りてこようとするので手で静止をした。
「さあ、直ぐに出発して。命令よ。」
「どうしてもですか?ご予定には無かったですよね?」
「うん。でも命令だから聞いてね。」
「か、かしこまりました。」
その時、隣の騎士団詰所から騎士ラルクが顔を出した。
「声がすると思えばエリコさんじゃないですか?久しぶりですね。」
「うん。今日はここに泊まるの。宜しくね。」
そう言って馬車の行者へ出発しろと手を振るとやっと出発してくれた。
「はあ。たしかもう直ぐ挙式ですよね?ここに居て大丈夫なんですか?」
「うん、大丈夫。じゃあもう入るわね。」
「あ、ちょっと!」
何か話したそうだったけど、そそくさと扉を閉めてしまった。
2階のリビングの静寂にやっと1人になれたと実感をした。
「ハァー。」
ああ、やっと泣けるわ。もう目が腫れてバレるとか涙を隠す必要は無い。
アルベルトと初めて会ったのはこの家だった。噂の強盗かと思う容姿で恐ろしかったのを覚えているわ。
あんな人だけど男気がある優しいところが好きになった。
勿論、付き合うとか結婚なんてするつもりは無かったわ。強引さと流れでこうなってるけど。
彼が実はあんな男前でモテモテでエスコートが上手で洗練されている貴族だなんて誰が思う?
あの姿を見てしまったら、何で私なの?と今でも思ってしまう。
私の魅力なんて特に秀でたところはない。あえて言うなら希少種?なんたって異世界人だもん。
「私が珍しかったからよ。私じゃ無くたって素敵な御令嬢は沢山いるから。」
悔しさと悲しみ。
見抜けなかった自分の情けなさ。
このまま遠くの都市へ行こうか?
ダメ。また見つかるし、前よりもっと悪い奴に捕まるかも。
それならこの家へ逃げ込むのが精一杯の抵抗だわ。
結婚式を今週に控えた結論だった。
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