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32.花祭りの偶然

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レイモンド・ルドヴィカがルドヴィカ侯爵邸を去ったの確認すると直ぐに執事に尋ねた。

「ねぇ、アルベルトと話がしたいんだけど無理なの?」

「はい。城の軍部にいらっしゃいますから。お手紙をお届けしましょうか?」

仕方がない。とりあえず、彼の息子が来て財産放棄の書類を書いたと報告しておくか。

「うーん、じゃあ、お願いします。」

彼の顔を見てレイモンドから押し付けられた事を詳しく聞き出したい。
一体、どれだけの事をやらかすと父親をあんな言い方するわけ?

でも、家に全く帰れない程に忙しく仕事をしている人に手紙で聞く内容ではないわ。

手紙を用意して執事に渡すと結婚式で飾る花を選びに外出が許可された。

「夜会以来の外出だわ!もう外に出ていいの?」

「はい。夜会でご主人がエリコ様と御結婚をすると公言された事でエリコ様は聖女では無いと知れ渡りました。聖女は結婚出来ませんからね。」

成る程ね。乙女で無いといけないから。じゃあ、ナオちゃんは恋をしても一生乙女でいて結婚もしちゃダメ?こんな世界に召喚された上に制限される訳?
どうするか決めるのは自分だわ!

そんな事を考ているとカッとした気持ちになる。どうしても国の意思で自由を奪われるのは納得がいかないわ。

カッとした気持ちで馬車に乗っていたけど、花屋に着き見て回ると癒され落ち着きを取り戻した。
優秀な侍女長の適切なアドバイスのお陰でスムーズに決める事が出来た。

それにしても、、、新郎が一切の立ち合いが無い結婚式の準備。わかっていても虚しくなる。2人の結婚式なのに。
何だか帰りの馬車でナーバスになってしまった。

「別に結婚しなくてもいいのにね。そう思わない?」

同乗していた侍女長に心の内を漏らすと驚いて声が裏返ってしまった。

「な、何をおっしゃるのです!是非にして下さいませ。」

「恋人ではダメなの?彼の息子の笑い声が引っかかって仕方がないの。」

「式まで後2週間ですよ。お疲れが出ているんです。どうでしょう、明日は気分転換に隣町ヨドガーワのお祭りに行ってみては?町中が黄色とオレンジ色の花で飾られてはなやかですよ。」

そんな事でこの憂いが消えるのか疑問だけど屋敷こもるよりマシよね。

*****

翌日は警備の者と侍女を連れて隣町ヨドガーワの「花祭り」にやって来た。

王都よりは劣るけど、この町も賑わっている。メインストリートは馬車が絶え間なく走り回り歩道は大勢の人が行き交っていた。

お祭りのメイン会場の広場には沢山の飲食店が集まり大賑わい。大道芸までいるわ。食べ物が美味しくてつい食べ過ぎて腹痛を起こしてしまった。

「ごめんなさい。ちょっと休ませて。欲張りすぎちゃて動くとお腹が痛むの。」

残念ながら祭りのせいで高級宿は何処も埋まっていて、仕方がなく中心部から離れた郊外の宿が手配された。

腹痛も治り帰り道、窓の外をボンヤリ眺めていると先の方に赤髪の男性と肩を大きく出したドレスの女性がお互いの腰に手を回して仲良く歩く姿が目に留まった。なんて羨ましい。と思って追い抜きぎわに顔を見た。

「アルベルト?!」

馬車はそのまま通り過ぎて彼らは小さくなって行ったが間違いなく彼だった。
女に微笑み耳元で何か囁き、女はニヤけた顔をしていた。

なんで?!誰あの女?なんでここに?

「エリコ様、どうされましたか?r」

窓にかじりつく私を見て侍女が不安そうな顔をしている。彼女は見てないんだ。

「馬車を引き返して。」

直ぐに来た道を引き返して行く。反対車線から窓にかじりついて見ていると、まだイチャイチャとしながら歩道を歩いていた。

「今のはご主人様!あっ。」

侍女も気が付き慌てて口元に手を当てたが遅かった。彼女もアルベルトと認識したんだから間違いないわ。

「もういいわ。屋敷へ帰りましょう。」

一体どう言う事?城の軍部にいる人が何故ここに?あのタダならぬ関係にしか見えない女は何者なの?

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