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さらわれた騎士団総団長の嫁ケイコ(前半)
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隣国タイス王国のベーグル伯爵家のお茶の時間。ローズマリアお嬢様は花の形のお菓子を食べて驚きの声をあげた。
「美味しい!何これ?」
「はい、隣国のお菓子でクッキーでございます。」
執事ニコラスは苦労して手に入れた甲斐があったとニッコリした。
「こんな美味しくて可愛いお菓子は初めてよ!ネェ、次のお茶会はこれを出して。」
「ローズマリア様、申し訳ありません。なにぶん手に入りにくい品でして、これで最後でございます。」
「嫌よ。もう決めました。では、職人を連れて来なさい。我が家で雇いましょう。」
「それは良い考えでごさいます!では直ぐに手配いたしましょう。」
翌日、召使頭ミタイが下男を連れて使いとして出発した。
*****
ケイコは、クッキー屋で困りはてていた。
「だから何度も申しますけど、
私はここを離れるつもりはありません。
お引き取り下さい。」
この人達、本当にしつこいわね。
昨日も何度も来たけど、今朝もオープンから来ているわ。
仕方がない。
今日は早々に引き上げよう。
最近は、売り子のマリを雇っているので後を頼む事にした。
店を出るとドアの前に馬車が着く。
もぉーこんなにドアに近寄らなくてもいいのに!
と思った瞬間、口を塞がれ無理やり馬車に連れ込まれた。
そして、薬品の臭いの布をかがされ、意識が遠のいた。
*****
「起きろ。」
ボンヤリとした意識で、目覚めると幌馬車の中で男に呼びかけられていた。
店に来ていた隣国のミタイと言う男だ。私は口と手を縛られていた。
「起きろ。食べなさい。
騒ぎたてると痛い目にあうぞ。」
脅されながら縄がとかれる。
「あなたミタイよね?
私をどうするつもりなの?」
「我がグーゼル伯爵家に仕えてもらう。
お前をお望みなのだ。素直についてくると言えば手荒な事はしない。」
「店を出た所をさらうなんて随分手荒な事をするのね?
こんな事、許されないわよ!」
「それを決めるのはご主人様だ。よく覚えておきなさい。」
私は2人を思いっきり睨みつけた。
あぁ、なんてことに!
マーベリックごめんなさい。
私、さらわれてしまったわ。
外は真っ暗で自分達の灯りが照らす範囲で見ると原野、つまり街と街の間を走っているようだ。
今はどの辺りだろう?
何とか脱出しなければ!
*****
「まだ眠っているな。起きろ。」
ペシペシと頬を軽くビンタされる。
う、うーん、、頭が重い。身体も痛い。
いつの間に眠ったのだろう?
目を開いたらミタイと目が合った。
「馬車から出て家に入りなさい。」
私は縄を解かれ幌馬車を降りた。
そこは村はずれの一軒家だった。
一服もられ眠らされていたようだ。
ガンガンする頭を我慢して男に話しかける。
「あなた達、悪い事は言わないわ。
直ぐに私を解放して。黙っててあげるから。」
ミタイが頭を振り、反対にクギを刺された。
「お前が素直にベーグル伯爵家に仕えると決心すれば拘束はしない。
断るならまた縛るだけだ。」
「お断りしたでしょ?早く解放して。」
バッと口を掌でつかまれた。
「口の利き方に注意しなさい。使用人としての躾けが必要のようだな。私はいずれお前の上司になる。今は我慢してやろう。」
表情のない目で見つめられゾッとした。
それっきり私は口を紡ぐ事にした。
嫌だ。絶対に嫌だ。こんな男のいる所になんて行きたくない!
あぁ、どうしたら良いのだろう?
何か考えないと、、
仕方がない。
観念するフリをしよう。
「わかったわ。お屋敷で働きます。
だから、もう縛らないで。お願いします。」
「始めからそうしていれば良いものを。
契約書だ。サインをしなさい。」
「私はこの国の人間じゃないから字が読めないの。綴りを教えて。」
本当は書けるんだけど、ワザと見真似て汚い字のサインをした。こんな契約書無効にしてやるわ。
「早速だけど、私もプロよ。
クッキーの作りの参考にするのでお嬢様の事を教えて下さい。」
髪とペンを借りて私の国の言葉でメモを書く。
一枚は間違えた!と丸めて床に捨てた。
「成る程、わかりました。
お嬢様へのお土産にここでクッキーを作りたいのだけど。そんなに時間はかからないわ。」
「ほほう。
それは良い心がけだ。さっきまで噛みつきそうな奴がどうしたのだ?」
「価値をアピールさせて頂戴。どうせなら味見してもらって高いお給料をお願いしたいわ。」
「ふん。中々の自信だな。
よかろう。人の賑わう昼に関所を通る予定だ。それまでに出来るか?」
「お任せ下さい。材料の調達をお願いします。」
こうして大量のクッキーが焼き上がった。
割れた物を味見させる。
「はっはっはっ。本当に美味い菓子だ。お嬢様がお喜びになられるぞ。
我らの評価もあがるしな。」
高笑いをして上機嫌だ。
「包装も重要です。
ただの紙袋に模様を描けばこのようにお洒落になるんですよ。」
「うむ。見違えるものだな。」
「それと、これは繊細なお菓子で色や形の悪い物がどうしても沢山出るんです。二等品はお嬢様にはお出しできないので、同僚の皆さんのご挨拶用に袋詰めしますね。」
「その調子でお屋敷でもお仕えするように。出来たら出発するぞ。」
「美味しい!何これ?」
「はい、隣国のお菓子でクッキーでございます。」
執事ニコラスは苦労して手に入れた甲斐があったとニッコリした。
「こんな美味しくて可愛いお菓子は初めてよ!ネェ、次のお茶会はこれを出して。」
「ローズマリア様、申し訳ありません。なにぶん手に入りにくい品でして、これで最後でございます。」
「嫌よ。もう決めました。では、職人を連れて来なさい。我が家で雇いましょう。」
「それは良い考えでごさいます!では直ぐに手配いたしましょう。」
翌日、召使頭ミタイが下男を連れて使いとして出発した。
*****
ケイコは、クッキー屋で困りはてていた。
「だから何度も申しますけど、
私はここを離れるつもりはありません。
お引き取り下さい。」
この人達、本当にしつこいわね。
昨日も何度も来たけど、今朝もオープンから来ているわ。
仕方がない。
今日は早々に引き上げよう。
最近は、売り子のマリを雇っているので後を頼む事にした。
店を出るとドアの前に馬車が着く。
もぉーこんなにドアに近寄らなくてもいいのに!
と思った瞬間、口を塞がれ無理やり馬車に連れ込まれた。
そして、薬品の臭いの布をかがされ、意識が遠のいた。
*****
「起きろ。」
ボンヤリとした意識で、目覚めると幌馬車の中で男に呼びかけられていた。
店に来ていた隣国のミタイと言う男だ。私は口と手を縛られていた。
「起きろ。食べなさい。
騒ぎたてると痛い目にあうぞ。」
脅されながら縄がとかれる。
「あなたミタイよね?
私をどうするつもりなの?」
「我がグーゼル伯爵家に仕えてもらう。
お前をお望みなのだ。素直についてくると言えば手荒な事はしない。」
「店を出た所をさらうなんて随分手荒な事をするのね?
こんな事、許されないわよ!」
「それを決めるのはご主人様だ。よく覚えておきなさい。」
私は2人を思いっきり睨みつけた。
あぁ、なんてことに!
マーベリックごめんなさい。
私、さらわれてしまったわ。
外は真っ暗で自分達の灯りが照らす範囲で見ると原野、つまり街と街の間を走っているようだ。
今はどの辺りだろう?
何とか脱出しなければ!
*****
「まだ眠っているな。起きろ。」
ペシペシと頬を軽くビンタされる。
う、うーん、、頭が重い。身体も痛い。
いつの間に眠ったのだろう?
目を開いたらミタイと目が合った。
「馬車から出て家に入りなさい。」
私は縄を解かれ幌馬車を降りた。
そこは村はずれの一軒家だった。
一服もられ眠らされていたようだ。
ガンガンする頭を我慢して男に話しかける。
「あなた達、悪い事は言わないわ。
直ぐに私を解放して。黙っててあげるから。」
ミタイが頭を振り、反対にクギを刺された。
「お前が素直にベーグル伯爵家に仕えると決心すれば拘束はしない。
断るならまた縛るだけだ。」
「お断りしたでしょ?早く解放して。」
バッと口を掌でつかまれた。
「口の利き方に注意しなさい。使用人としての躾けが必要のようだな。私はいずれお前の上司になる。今は我慢してやろう。」
表情のない目で見つめられゾッとした。
それっきり私は口を紡ぐ事にした。
嫌だ。絶対に嫌だ。こんな男のいる所になんて行きたくない!
あぁ、どうしたら良いのだろう?
何か考えないと、、
仕方がない。
観念するフリをしよう。
「わかったわ。お屋敷で働きます。
だから、もう縛らないで。お願いします。」
「始めからそうしていれば良いものを。
契約書だ。サインをしなさい。」
「私はこの国の人間じゃないから字が読めないの。綴りを教えて。」
本当は書けるんだけど、ワザと見真似て汚い字のサインをした。こんな契約書無効にしてやるわ。
「早速だけど、私もプロよ。
クッキーの作りの参考にするのでお嬢様の事を教えて下さい。」
髪とペンを借りて私の国の言葉でメモを書く。
一枚は間違えた!と丸めて床に捨てた。
「成る程、わかりました。
お嬢様へのお土産にここでクッキーを作りたいのだけど。そんなに時間はかからないわ。」
「ほほう。
それは良い心がけだ。さっきまで噛みつきそうな奴がどうしたのだ?」
「価値をアピールさせて頂戴。どうせなら味見してもらって高いお給料をお願いしたいわ。」
「ふん。中々の自信だな。
よかろう。人の賑わう昼に関所を通る予定だ。それまでに出来るか?」
「お任せ下さい。材料の調達をお願いします。」
こうして大量のクッキーが焼き上がった。
割れた物を味見させる。
「はっはっはっ。本当に美味い菓子だ。お嬢様がお喜びになられるぞ。
我らの評価もあがるしな。」
高笑いをして上機嫌だ。
「包装も重要です。
ただの紙袋に模様を描けばこのようにお洒落になるんですよ。」
「うむ。見違えるものだな。」
「それと、これは繊細なお菓子で色や形の悪い物がどうしても沢山出るんです。二等品はお嬢様にはお出しできないので、同僚の皆さんのご挨拶用に袋詰めしますね。」
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