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異世界からの迷子ショウタ君
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王室騎士団総団長マーベリックは、この日、2週間の地方巡回を終え、最後の確認場所のイビキ池へ向かった。
ここは魔物が出ると言う事で恐れられ、森の奥にある池の周囲は立ち入り禁止区域になっていた。
「総団長、足跡です!それも子供の大きさです!」
それは騎士が池の湖畔で見つけた。
嘘だろ?と駆けつけると、たしかに子供の足跡に見える。
「付近を捜索しろ。魔物に注意しろよ。!」
間も無く低木の陰に横たわる少年が発見された。
他の人間は確認されず少年1人のようだ。
少年は息をしているが呼び掛けても応じない。
「至急、王都へ連れて行く。急げ!」
到着後、王城の医師による治療が始まった。
「 総団長、少年は飢餓状態です。危ない所でした。何日も食べてないようです。」
もしや少年は、、
マーベリックはイビキ池の秘密の場所を思い浮かべていた。
医師の治療により少年が意識を回復したと報告があがってきた。
マーベリックはケイコに少年の世話をさせる事にした。
「ケイコ、少年はお前の世界から来たかもしれん。そのつもりで慎重に世話を焼いてくれ。」
「えっ!それが本当なら、どれだけ寂しい思いをしたんでしょう。」
ケイコは自身の経験から誰よりもその寂しさがわかる。明日から頼むと言ったのに今から行くと早速、登城して行った。
「こんにちわ。私はケイコよ。貴方のお名前は?」
「ショウタ」
「いい名前ね。気分はどう?ご飯は何が好きなの?」
「体が重いの。直ぐに眠くなるよ。オムライスが好き。
ねぇー、ママとパパはどこ?誰も教えてくれないんだ。」
「ここには居ないわ。
元気になったら会えるから。
じゃー、早く良くなるようにご飯をいっぱい食べようね。」
ケイコはまずショウタ君に寄り添う事から始めた。
厨房にオムライスを頼んだがこの世界には無かった。つまりショウタ君は、私のいた世界から来た事になる。
「ジャジャーン!
今日のお昼はオムライスだよー。」
「わぁ!ケイコおばさん、嬉しいな。
ママのはねーいつもケチャプで名前を書いてくれるの。
ねーいつになったらママに会えるの?」
毎日、ママに会いたい。と聞いてくる。ケイコも子供と離れて暮らしているので胸が痛み涙が出そうになるのをグッと我慢して明るく振る舞う。
「ショウタ君は、神社に行った?」
「うん。何で知ってるの?入っちゃダメなのに蝶々を見つけて、、、」
ああ、、やはりそうか。。
「急に真っ暗になって、、怖くって、、ママー!
ウッ、ウッ、アッー」
とうとう泣き出してしまった。
「ごめんね。怖かった事を思い出させて。驚いたよね。おばちゃんがギューしてあげる。」
ケイコは抱きしめ頭を撫ぜる。
こんなに幼いのに神様は酷すぎる。
どれだけひもじく心ボソかった事か。
おばさんの私でもどれ程戸惑い泣いたか、、、
「ねぇマーベリック。ショウタ君はこれからどうなるの?」
「今、陛下と宰相とで話を詰めている。
ここでの事は夢だった事にしてアチラの世界へ帰ってもらうつもりだ。」
「えっ!そんな事が出来るの?」
「ああ。今、西のバーさんをこちらに呼びつけている。
バーさんに暗示をかけてもらい、此処の事は忘れてもらう。思い出しても夢だと思うようにする。
ここへの道がバレたら大混乱になるからな。記憶を消すのが妥当だろう。」
「確かにそうだけど、、」
「うん?何か不満か?」
背の高いマーベリックがケイコの頭にポンと手を置き目を見つめる。
「ううん、私もそうされてたのかなぁと思っただけよ。」
マーベリックはもう片方の手をケイコの腰に回し、優しい熱い視線を送る。
「俺を忘れさせるなんて。許可する訳ないだろう。奥様。」
チュと口づけを落とす。
マーベリックは、思い返していた。
彼女の場合は、あの日、騎士として殺めなければいけなかった。
真っ赤な異国の服に金帯姿の怯える彼女に心が動いた。
ほんの一瞬だ。
そのほんの一瞬、剣を下ろすのが遅れた。
そして陛下から「待て」がかかり、彼女の首の皮だけを切った。騎士としては失格だった。
結果、彼女は生き残った。
深い孤独と悲しみにも耐えた。
衛兵からの報告で見に行く度に、
夜の薄暗い渡り廊下の隅で人目を忍んで自分が現れた庭を見下ろし声を殺し泣いていた。
かける言葉が見つからず見守るしか出来なかった。
人生の半分が過ぎた大人でも孤独に耐えるのがやっとだ。
だからこそショウタは早く返してやりたい。
「ケイコ、ショウタを返す時は協力を頼むぞ。アチラでは、お前がショウタの側に居ても違和感がないからな。」
俺達は日本国では目立つからな。と自身の赤い髪を摘んでいる。
「ええ。協力するわ。早く家族の元に返してあげたいわね。」
家族と言う単語を使う時、ケイコは無意識に遠い目をする事に気がついていない。
マーベリックは、これも秘密にしようと思う。
知ったところで、悩みが増えるだけだからな。
「キャー誰か子供が倒れてる!救急車!
誰か!」
周りにいた大人達が駆け寄り直ぐに救急車の手配がされた。
間も無くショウタは病院へ運ばれて行った。
「行ったか?」
「ええ。これで一安心ね。でも本当に暗示は聞いているの?」
「大丈夫だろう。別の神社の近くで見つかったし何とかなるさ。」
「さぁ、帰るぞ。」
「ええ。」
どうか早く家族と再会出来るといいね。日本の警察は優秀だから直ぐに見つかるだろうけど。
元気でね。ショウタ君。
もう、あの神社に入ったら、、鳥居をくぐったらダメだよ。
ここは魔物が出ると言う事で恐れられ、森の奥にある池の周囲は立ち入り禁止区域になっていた。
「総団長、足跡です!それも子供の大きさです!」
それは騎士が池の湖畔で見つけた。
嘘だろ?と駆けつけると、たしかに子供の足跡に見える。
「付近を捜索しろ。魔物に注意しろよ。!」
間も無く低木の陰に横たわる少年が発見された。
他の人間は確認されず少年1人のようだ。
少年は息をしているが呼び掛けても応じない。
「至急、王都へ連れて行く。急げ!」
到着後、王城の医師による治療が始まった。
「 総団長、少年は飢餓状態です。危ない所でした。何日も食べてないようです。」
もしや少年は、、
マーベリックはイビキ池の秘密の場所を思い浮かべていた。
医師の治療により少年が意識を回復したと報告があがってきた。
マーベリックはケイコに少年の世話をさせる事にした。
「ケイコ、少年はお前の世界から来たかもしれん。そのつもりで慎重に世話を焼いてくれ。」
「えっ!それが本当なら、どれだけ寂しい思いをしたんでしょう。」
ケイコは自身の経験から誰よりもその寂しさがわかる。明日から頼むと言ったのに今から行くと早速、登城して行った。
「こんにちわ。私はケイコよ。貴方のお名前は?」
「ショウタ」
「いい名前ね。気分はどう?ご飯は何が好きなの?」
「体が重いの。直ぐに眠くなるよ。オムライスが好き。
ねぇー、ママとパパはどこ?誰も教えてくれないんだ。」
「ここには居ないわ。
元気になったら会えるから。
じゃー、早く良くなるようにご飯をいっぱい食べようね。」
ケイコはまずショウタ君に寄り添う事から始めた。
厨房にオムライスを頼んだがこの世界には無かった。つまりショウタ君は、私のいた世界から来た事になる。
「ジャジャーン!
今日のお昼はオムライスだよー。」
「わぁ!ケイコおばさん、嬉しいな。
ママのはねーいつもケチャプで名前を書いてくれるの。
ねーいつになったらママに会えるの?」
毎日、ママに会いたい。と聞いてくる。ケイコも子供と離れて暮らしているので胸が痛み涙が出そうになるのをグッと我慢して明るく振る舞う。
「ショウタ君は、神社に行った?」
「うん。何で知ってるの?入っちゃダメなのに蝶々を見つけて、、、」
ああ、、やはりそうか。。
「急に真っ暗になって、、怖くって、、ママー!
ウッ、ウッ、アッー」
とうとう泣き出してしまった。
「ごめんね。怖かった事を思い出させて。驚いたよね。おばちゃんがギューしてあげる。」
ケイコは抱きしめ頭を撫ぜる。
こんなに幼いのに神様は酷すぎる。
どれだけひもじく心ボソかった事か。
おばさんの私でもどれ程戸惑い泣いたか、、、
「ねぇマーベリック。ショウタ君はこれからどうなるの?」
「今、陛下と宰相とで話を詰めている。
ここでの事は夢だった事にしてアチラの世界へ帰ってもらうつもりだ。」
「えっ!そんな事が出来るの?」
「ああ。今、西のバーさんをこちらに呼びつけている。
バーさんに暗示をかけてもらい、此処の事は忘れてもらう。思い出しても夢だと思うようにする。
ここへの道がバレたら大混乱になるからな。記憶を消すのが妥当だろう。」
「確かにそうだけど、、」
「うん?何か不満か?」
背の高いマーベリックがケイコの頭にポンと手を置き目を見つめる。
「ううん、私もそうされてたのかなぁと思っただけよ。」
マーベリックはもう片方の手をケイコの腰に回し、優しい熱い視線を送る。
「俺を忘れさせるなんて。許可する訳ないだろう。奥様。」
チュと口づけを落とす。
マーベリックは、思い返していた。
彼女の場合は、あの日、騎士として殺めなければいけなかった。
真っ赤な異国の服に金帯姿の怯える彼女に心が動いた。
ほんの一瞬だ。
そのほんの一瞬、剣を下ろすのが遅れた。
そして陛下から「待て」がかかり、彼女の首の皮だけを切った。騎士としては失格だった。
結果、彼女は生き残った。
深い孤独と悲しみにも耐えた。
衛兵からの報告で見に行く度に、
夜の薄暗い渡り廊下の隅で人目を忍んで自分が現れた庭を見下ろし声を殺し泣いていた。
かける言葉が見つからず見守るしか出来なかった。
人生の半分が過ぎた大人でも孤独に耐えるのがやっとだ。
だからこそショウタは早く返してやりたい。
「ケイコ、ショウタを返す時は協力を頼むぞ。アチラでは、お前がショウタの側に居ても違和感がないからな。」
俺達は日本国では目立つからな。と自身の赤い髪を摘んでいる。
「ええ。協力するわ。早く家族の元に返してあげたいわね。」
家族と言う単語を使う時、ケイコは無意識に遠い目をする事に気がついていない。
マーベリックは、これも秘密にしようと思う。
知ったところで、悩みが増えるだけだからな。
「キャー誰か子供が倒れてる!救急車!
誰か!」
周りにいた大人達が駆け寄り直ぐに救急車の手配がされた。
間も無くショウタは病院へ運ばれて行った。
「行ったか?」
「ええ。これで一安心ね。でも本当に暗示は聞いているの?」
「大丈夫だろう。別の神社の近くで見つかったし何とかなるさ。」
「さぁ、帰るぞ。」
「ええ。」
どうか早く家族と再会出来るといいね。日本の警察は優秀だから直ぐに見つかるだろうけど。
元気でね。ショウタ君。
もう、あの神社に入ったら、、鳥居をくぐったらダメだよ。
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