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1.愛しい人。どうか許してほしい。
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晴天の雲一つない空の下、汗ばむ季節にそよ風が心地よい。
夫のマーベリックが王城に行っている間、ケイコは侍女のルーシーと野生の木の実を摘みに森に来ていた。
「奥様、こちらにキカの実が密集してますよ。食べ頃ですよ!」
「ええ。ありがとう。今年は豊作ね。」
小脇に籠をかかえ木から木へと移動する。
辺りは甘い香につつまれ、
「イチゴ狩りみたいだわ。」
と時折、摘み食いをしながら移動していく。
ふっと地面に白いスミレのような花が目に留まった。
「まぁ、何て可愛いの。」
ケイコは花摘もうとした。その時、
「痛っ!」
何かが指を刺した。
指を見たけど何もない。
何だったのだろ?
「奥様~そろそろ帰りますよ~」
ルーシーが呼んでいる。
急ぎ合流して大量のキカの実をかかえ屋敷に戻った。
夜、マーベリックが帰ってきてもケイコの出迎えが無い。
珍しいな。と夫婦の部屋に向かうと、ケイコがソファで寝ていた。
「ケイコ、寝ているのか?」
「ああ、ごめんなさい。なんだか怠くって。お帰りなさい。もう、そんな時間?」
そう言って立ち上がろうとした時、グニャリと倒れた。床に落ちる寸前にマーベリックが受け留めた。
「ケイコ!大丈夫か?」
ええ。と返事はするものの、力が入らない。
「熱があるな。直ぐ医者を呼ぶ。」
程なく、医者が到着したがその間にも熱はドンドン上がっていく。
「マーベリック様、奥様は症状からお風邪ではございません。最近、変わった事はございませんでしたか?」
医師は症状の原因となる事のヒントをさぐる。
「手。指を花に、、刺したの。」
ケイコが苦しがりながら指を見せる。
指先を見ると赤く腫れ上がっていた。
「どんな花でしたか?」
「白いスミレ」
「スミレ?どんな花だ?この世界にない花だな。」
「もしや、地面に生えている背の低い白い花ですか?」
医師が尋ねるとケイコは頷いた。
「マーベリック様、おそらくその花に付く虫でグモに刺された可能性があります。」
「グモ!」
その場にいた一同が凍りつく。
この世界の人間なら誰でも知っている虫で噛まれると、ほぼ助からない。
よりによってグモとは!
「こ、抗生物質なら何とかなるかも、、」
ケイコが言うがこの世界にはそのクスリが無かった。
「そうですか、、」
ケイコは寂しそうに目を閉じる。
後はケイコの体力と運次第と言う事だった。
その日からマーベリックは付きっきりでケイコの看病をした。
スプーンで食事を食べさせて身体を拭いてやった。
「ごめんなさい。マーベリック私の為に。。」
ケイコは口を開けば謝ってばかりいる。自分のせいでこんな事になって申し訳ないのだ。
その度にマーベリックはケイコの髪を撫ぜながら
「大丈夫だ。早く良くなって遠出に行こう。」
と繰り返す。
ケイコはそのうち、ご飯も受け付けなくなってきた。
「マ、マーベリ、、ごめんなさい。ごめん。」
ケイコが時折、うわ言でマーベリックに詫びを入れる姿が痛痛しかった。
マーベリックは、自分に出来る事は無いか?西の魔女に頼むか?いや。魔女は病む者の内なる精神治療を得意とする。
他に何にかないか?決して諦めない。
フッと思いついた。
息子のワミサンに大急ぎで旅支度をさせた。
「ワミサン、すまないが手伝ってくれ。」
「親父様、一体どうするのです?」
「ちょっとな。付き合ってくれ。」
夫のマーベリックが王城に行っている間、ケイコは侍女のルーシーと野生の木の実を摘みに森に来ていた。
「奥様、こちらにキカの実が密集してますよ。食べ頃ですよ!」
「ええ。ありがとう。今年は豊作ね。」
小脇に籠をかかえ木から木へと移動する。
辺りは甘い香につつまれ、
「イチゴ狩りみたいだわ。」
と時折、摘み食いをしながら移動していく。
ふっと地面に白いスミレのような花が目に留まった。
「まぁ、何て可愛いの。」
ケイコは花摘もうとした。その時、
「痛っ!」
何かが指を刺した。
指を見たけど何もない。
何だったのだろ?
「奥様~そろそろ帰りますよ~」
ルーシーが呼んでいる。
急ぎ合流して大量のキカの実をかかえ屋敷に戻った。
夜、マーベリックが帰ってきてもケイコの出迎えが無い。
珍しいな。と夫婦の部屋に向かうと、ケイコがソファで寝ていた。
「ケイコ、寝ているのか?」
「ああ、ごめんなさい。なんだか怠くって。お帰りなさい。もう、そんな時間?」
そう言って立ち上がろうとした時、グニャリと倒れた。床に落ちる寸前にマーベリックが受け留めた。
「ケイコ!大丈夫か?」
ええ。と返事はするものの、力が入らない。
「熱があるな。直ぐ医者を呼ぶ。」
程なく、医者が到着したがその間にも熱はドンドン上がっていく。
「マーベリック様、奥様は症状からお風邪ではございません。最近、変わった事はございませんでしたか?」
医師は症状の原因となる事のヒントをさぐる。
「手。指を花に、、刺したの。」
ケイコが苦しがりながら指を見せる。
指先を見ると赤く腫れ上がっていた。
「どんな花でしたか?」
「白いスミレ」
「スミレ?どんな花だ?この世界にない花だな。」
「もしや、地面に生えている背の低い白い花ですか?」
医師が尋ねるとケイコは頷いた。
「マーベリック様、おそらくその花に付く虫でグモに刺された可能性があります。」
「グモ!」
その場にいた一同が凍りつく。
この世界の人間なら誰でも知っている虫で噛まれると、ほぼ助からない。
よりによってグモとは!
「こ、抗生物質なら何とかなるかも、、」
ケイコが言うがこの世界にはそのクスリが無かった。
「そうですか、、」
ケイコは寂しそうに目を閉じる。
後はケイコの体力と運次第と言う事だった。
その日からマーベリックは付きっきりでケイコの看病をした。
スプーンで食事を食べさせて身体を拭いてやった。
「ごめんなさい。マーベリック私の為に。。」
ケイコは口を開けば謝ってばかりいる。自分のせいでこんな事になって申し訳ないのだ。
その度にマーベリックはケイコの髪を撫ぜながら
「大丈夫だ。早く良くなって遠出に行こう。」
と繰り返す。
ケイコはそのうち、ご飯も受け付けなくなってきた。
「マ、マーベリ、、ごめんなさい。ごめん。」
ケイコが時折、うわ言でマーベリックに詫びを入れる姿が痛痛しかった。
マーベリックは、自分に出来る事は無いか?西の魔女に頼むか?いや。魔女は病む者の内なる精神治療を得意とする。
他に何にかないか?決して諦めない。
フッと思いついた。
息子のワミサンに大急ぎで旅支度をさせた。
「ワミサン、すまないが手伝ってくれ。」
「親父様、一体どうするのです?」
「ちょっとな。付き合ってくれ。」
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