猫が導く異世界。珍獣扱いはウンザリです！

1.ネコちゃん待ってよ！

私は玲奈レイナ18才の大学生。梅雨の雨がシトシト降る日の昼下り。
母のお使いで行った隣街の帰り道だった。

「ニャ～ン」

猫の声に振り向むと見事な紫陽花アジサイの咲く小道を見つけた。

「これはバエル！」

スマホを構えて写真を写していると、奥から立派なキジ猫が現れた。

「ニャーン」

「わぁ！モフモフちゃんだね。可愛い！」

愛らしい鳴き声と美しい毛並みに凛とした座り姿。
なぜようと手を出すとスッーと少し奥へ移動した。

「ニャーン」

小道に座って尾尻を振っている姿が愛らしい。

「ちゃっとだけだからジッとしててね。」

私がかがんで触れようとするとまたスッと奥へ行き鳴き声をあげた。

「恥ずかしがり屋さんなんだね。」

再び手を伸ばすとまたすり抜けて行く。

「ねぇ～ネコちゃん、ちょっとだけまってよ。」

猫は小首を傾げてまた愛らしく泣いた。

「もう！気をもたせるんだから。こうなったら意地でもモフモフさせてもらうからね。」

猫に宣言して近づくと突然、目の前に透明な壁が揺らいで見えた。
地上から水面を見るのとは、また違う。そう、まるで空気の濃度が違う揺らぎのような感じがする。

異様な物を前にして、怖くなりとっさに来た道を振り返った。
小道は、細く獣道のようになっていて両脇の紫陽花は背の高さ以上になり石垣が見え隠れしている。曲がりくねっていて入って来た入口なんて見えやしない。

「えっ？私、、こんな所を歩いていたの？」

ゾワリとするものが肌を走る。

「ニャ～、ニャ～、ニャ～」

戸惑っていると猫がこっちだよ。と言わんばかりに何度も鳴いた。
猫のいる所は、ここより明るいのでひらけているのかもしれない。
恐る恐る腕を入れてみた。

「何も変化が無いわ。」

触った感じも温度も変わりない。

戸惑いながらも少しづつ身体を半分進めて、慎重にそっと顔を入れてみた。

「うん、息もできるし大丈夫みたい。」

来た道も変化なく見える。

「ニャ～ニャ～」

猫がこちらに戻って来て足に擦り寄り、再び先へ進み鳴きながら待っている。
私は意を決して猫の元へかけ寄った。

これが人生最大の後悔になろうとは、、