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王室騎士団総団長マーベリックとケイコの婚約
15.アルフレッド家での静養
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ケイコは静養の間、マーベリックの屋敷で世話になっていた。マーベリックが自宅に帰る事を許さなかったからだ。
「自宅に帰るだと?その足でか?また倒れたらどうするんだ!」
ケイコは仕方が無く留まる事にした。
確かにここ居ればメイドの目があるし身の回りの世話をしてくれるので治療に専念が出来た。
王城にこもっていたマーベリックがたまに帰宅して会える楽しみもあったが、とうとう彼に遠征の話が来た。
「ケイコが屋敷にいれば俺も安心できる。くれぐれも大人しくしとけよ。」
彼の顔を見上げれば片眉が上がって不信感を表している。ケイコはニッコリして、
「マリアンヌ様がいらっしゃるので安心して。」
と言うと、何故かマーベリックは、
「だから心配だ。」
と大きなため息を吐いて遠征に出かけていった。
体調が戻るに連れ暇を持て合わすようになった頃、「待ってました」とばかりにマリアンヌとメリッサがお茶に誘い、それが日課になった。
「まさか身分のない者とお茶を楽しむ日が来るとわ。」
マリアンヌが遠慮のない言葉を吐きながらお茶をすする。
「まぁ、叔母様、ケイコは国賓でしてよ。」
「やはり身分は重要なのでしょうか?」
ケイコはオズオズと2人に尋ねてみた。
「クックック、本当に可笑しな事を言う。そうだわ。メリッサ、近々、領地に戻るのでケイコを連れて行こうと思う。あなたも来なさい。」
「えっ!叔母様、マーベリックのいない時にそれはまずいのでは?」
「私は静養中なので、そろそろ自宅に、」
ピシャリと扇を向けられ言葉を遮られた。
「元気になれば商売と王宮の仕事に戻るのだろう?なら今しかない。アルフレッド家で貴族とは何か体験なさい。4日後にたちますからね。」
マリアンヌに断る事や口答えが出来る訳もなく一同は向かう事になった。
*****
アルフレッド家の領地の本邸は王都の物よりもさらに大きく重厚で召使いも沢山いた。流石、三大貴族だ。
マリアンヌは馬車から降りると出迎えの召使い達へケイコを紹介した。
「この者はケイコと言う。マーベリックが大切にしているから扱いには注意するように。」
そう紹介されケイコはとっさに挨拶をした。
「ケイコでございます。宜しくお願い致します。」
すると早速、マリアンヌからお叱りがあった。
「召使い相手に挨拶はいらぬ。覚えておきなさい。」
「はい。」
ケイコは、着いた途端にやってしまった。とすっかり気持ちが沈んでしまった。
(貴族の決まり事って本当に多いわ。私、大丈夫かしら?不安しかないわ。)
翌日からは慣れない貴族の生活が始まった。何より驚いたのが着替えの多さだ。
まず起床して朝食の為の着替えだ。
「お召物の着替えをどうぞ。」
朝食後に普段着に着替える。
昼食前にまたドレスに着替えをして、終われば普段着に着替える。
一息ついた頃に今度は、
「領地の見回りの時間でございます。
外出着にお着替えを。」
帰ったら、普段着に着替え、次は夕飯の為のドレスに着替えだ。
ケイコには、こんなに着替える意味がわからない。
メリッサに尋ねると、
「人と食事をする時はドレスに着替えるものなの。王都ではマーベリックが煩わしがって禁止をしていたの。騎士はいつ呼び出しがあるかわからないのにいちいち着替えてられないものね。」
5日目の昼食にマーベリックの従兄弟のアーサー夫妻がやって来た。
アーサーは、ケイコを見るなり汚い者を見る目つきでマリアンヌに尋ねた。
「ケイコは、まだ居たのか?叔母上、何故、この者がここに?」
マリアンヌが扇で口元を隠しながらサラリと答えた。
「勿論、貴族をわかっていないので見せる為。知らぬと言うのは命知らずな事よ。」
アーサーの妻ダイアナも嫌味たっぷりだ。
「本日の席順は、当然ケイコは末席ですわね。前回お会いした時は上座にいて屈辱を受けましたからね。同じ机で食事を取る事自体、可笑しな事。誘われても貴方の身分なら遠慮をするものよ。知らないのなら教えて差し上げますわ。」
ケイコはジッと耐えて皆の会話に耳を傾けている。
メリッサが時折、心配そうな視線送ってくれるので、それだけで心強かった。
「叔母上、領地に戻られたという事は、宣誓の儀の準備でしょうか?
後継者はどなたにするのか決められたのですか?」
「その時期じゃな。」
「んまぁ!叔母様、私くし、その日は空けてますのよ。いつでも御連絡をお待ちしておりますので。ホッホッホッ。」
「叔母上、妻が1番の適任でしょう。
今、口頭で委任して頂いても構いませんよ。」
「クックック、夫婦そっくりじゃな。せっかちな所が。」
「ホッホッホッ。ウィリアムの嫁のエリザベスじゃ役不足ですわよ。私くしに是非任せて下さいね。」
「ハハハッ!叔母上、お待ちしていますよ。ハハハッ!」
と杯を掲げて酒を飲み干した。
「クックック!楽しみは取っておく物だよ。クックック!」
マリアンヌも杯を掲げて飲み干した。3人は不気味な笑いで食堂の間を退席して行った。
後に残されたケイコはメリッサに「宣誓の儀」について尋ねた。
「我がアルフレッド家本家の女主人の後継者を委任する伝統の儀式よ。
今の女主人は叔母様よ。マーベリックの妻が亡くなったとき、叔母様が本家の血筋なので任命されたの。叔母様が最近、お歳を理由に降りると言われたの。
女主人は、魅力的な地位だから誰がなるのかってざわついているのよ。」
「成る程。ダイアナ様かエリザベス様が有力なのね。」
「さぁーどうかしら?2人を比べるならどちら大差ないわ。」
メリッサは、うんざりとした顔をした。
「自宅に帰るだと?その足でか?また倒れたらどうするんだ!」
ケイコは仕方が無く留まる事にした。
確かにここ居ればメイドの目があるし身の回りの世話をしてくれるので治療に専念が出来た。
王城にこもっていたマーベリックがたまに帰宅して会える楽しみもあったが、とうとう彼に遠征の話が来た。
「ケイコが屋敷にいれば俺も安心できる。くれぐれも大人しくしとけよ。」
彼の顔を見上げれば片眉が上がって不信感を表している。ケイコはニッコリして、
「マリアンヌ様がいらっしゃるので安心して。」
と言うと、何故かマーベリックは、
「だから心配だ。」
と大きなため息を吐いて遠征に出かけていった。
体調が戻るに連れ暇を持て合わすようになった頃、「待ってました」とばかりにマリアンヌとメリッサがお茶に誘い、それが日課になった。
「まさか身分のない者とお茶を楽しむ日が来るとわ。」
マリアンヌが遠慮のない言葉を吐きながらお茶をすする。
「まぁ、叔母様、ケイコは国賓でしてよ。」
「やはり身分は重要なのでしょうか?」
ケイコはオズオズと2人に尋ねてみた。
「クックック、本当に可笑しな事を言う。そうだわ。メリッサ、近々、領地に戻るのでケイコを連れて行こうと思う。あなたも来なさい。」
「えっ!叔母様、マーベリックのいない時にそれはまずいのでは?」
「私は静養中なので、そろそろ自宅に、」
ピシャリと扇を向けられ言葉を遮られた。
「元気になれば商売と王宮の仕事に戻るのだろう?なら今しかない。アルフレッド家で貴族とは何か体験なさい。4日後にたちますからね。」
マリアンヌに断る事や口答えが出来る訳もなく一同は向かう事になった。
*****
アルフレッド家の領地の本邸は王都の物よりもさらに大きく重厚で召使いも沢山いた。流石、三大貴族だ。
マリアンヌは馬車から降りると出迎えの召使い達へケイコを紹介した。
「この者はケイコと言う。マーベリックが大切にしているから扱いには注意するように。」
そう紹介されケイコはとっさに挨拶をした。
「ケイコでございます。宜しくお願い致します。」
すると早速、マリアンヌからお叱りがあった。
「召使い相手に挨拶はいらぬ。覚えておきなさい。」
「はい。」
ケイコは、着いた途端にやってしまった。とすっかり気持ちが沈んでしまった。
(貴族の決まり事って本当に多いわ。私、大丈夫かしら?不安しかないわ。)
翌日からは慣れない貴族の生活が始まった。何より驚いたのが着替えの多さだ。
まず起床して朝食の為の着替えだ。
「お召物の着替えをどうぞ。」
朝食後に普段着に着替える。
昼食前にまたドレスに着替えをして、終われば普段着に着替える。
一息ついた頃に今度は、
「領地の見回りの時間でございます。
外出着にお着替えを。」
帰ったら、普段着に着替え、次は夕飯の為のドレスに着替えだ。
ケイコには、こんなに着替える意味がわからない。
メリッサに尋ねると、
「人と食事をする時はドレスに着替えるものなの。王都ではマーベリックが煩わしがって禁止をしていたの。騎士はいつ呼び出しがあるかわからないのにいちいち着替えてられないものね。」
5日目の昼食にマーベリックの従兄弟のアーサー夫妻がやって来た。
アーサーは、ケイコを見るなり汚い者を見る目つきでマリアンヌに尋ねた。
「ケイコは、まだ居たのか?叔母上、何故、この者がここに?」
マリアンヌが扇で口元を隠しながらサラリと答えた。
「勿論、貴族をわかっていないので見せる為。知らぬと言うのは命知らずな事よ。」
アーサーの妻ダイアナも嫌味たっぷりだ。
「本日の席順は、当然ケイコは末席ですわね。前回お会いした時は上座にいて屈辱を受けましたからね。同じ机で食事を取る事自体、可笑しな事。誘われても貴方の身分なら遠慮をするものよ。知らないのなら教えて差し上げますわ。」
ケイコはジッと耐えて皆の会話に耳を傾けている。
メリッサが時折、心配そうな視線送ってくれるので、それだけで心強かった。
「叔母上、領地に戻られたという事は、宣誓の儀の準備でしょうか?
後継者はどなたにするのか決められたのですか?」
「その時期じゃな。」
「んまぁ!叔母様、私くし、その日は空けてますのよ。いつでも御連絡をお待ちしておりますので。ホッホッホッ。」
「叔母上、妻が1番の適任でしょう。
今、口頭で委任して頂いても構いませんよ。」
「クックック、夫婦そっくりじゃな。せっかちな所が。」
「ホッホッホッ。ウィリアムの嫁のエリザベスじゃ役不足ですわよ。私くしに是非任せて下さいね。」
「ハハハッ!叔母上、お待ちしていますよ。ハハハッ!」
と杯を掲げて酒を飲み干した。
「クックック!楽しみは取っておく物だよ。クックック!」
マリアンヌも杯を掲げて飲み干した。3人は不気味な笑いで食堂の間を退席して行った。
後に残されたケイコはメリッサに「宣誓の儀」について尋ねた。
「我がアルフレッド家本家の女主人の後継者を委任する伝統の儀式よ。
今の女主人は叔母様よ。マーベリックの妻が亡くなったとき、叔母様が本家の血筋なので任命されたの。叔母様が最近、お歳を理由に降りると言われたの。
女主人は、魅力的な地位だから誰がなるのかってざわついているのよ。」
「成る程。ダイアナ様かエリザベス様が有力なのね。」
「さぁーどうかしら?2人を比べるならどちら大差ないわ。」
メリッサは、うんざりとした顔をした。
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