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霧のいたずら

3.尋問。スマホに助けられる

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次の日の朝、宣言通りマーベリックが部下を引き連れてやって来た。

「尋問の為の部屋へ向かう。暴れればその場で切る。大人しく付いて来い」

手を縛ろうとするので私は息を吸いながら顔をあげる。

「止めて。私は、、悪い事はしてないわ。だから逃げない。ざ、罪人扱いは止めてちょうだい。」

出来るだけ胸を張り顔を見て言うが昨日、私を切った相手だ。
怖い。
だけど、どんなに顔が引吊ろうと上げてみせる。

「出ろ」

マーベリックは私を縛らずに牢屋の外へ促した。

私は目をつむり、心の中で決意を繰り返した。

「わかったわ。行きましょう。」

真っ直ぐマーベリックの目を見て頷いた。

尋問の部屋は、大学の教室のようなひな壇になっていて、ちょうど教壇の位置に椅子と机が用意されていてそこに座らされた。
机には私の私物が綺麗に並べられている。
マーベリックと兵士は、私の周りに立って見張りをしている。
ひな段には、呼び声から王や宰相、各長官達が集まっているようだ。

「何?この人の多さ、、」

刑事ドラマの取調室じゃ2、3人じゃない?
まず、名前と年齢、出身国を聞かれた。

「高橋メグミ、45歳。日本出身です」

「45歳?!何を馬鹿な。誤魔化すな。」

「そうだ。45歳ならシワも深く髪も白く毛量も少ないはず。お前は真っ黒ではないか」

私の髪は真っ黒だ。別に染めてる訳でなく白髪がまだ無い。親譲りなのだ。
ついでに言えば日頃のお手入れのお陰でシワも少ない。それに加えてバッチリメイクで隠されている。

「本当です。私の国でも若く見られてましたから。」

「嘘を言うな。証明出来る者を連れてこい。」

あちらこちらでヤジとあざけりが飛ぶ。

証人なんている訳がないじゃない!
わかってて言うから意地が悪いわ。
どうする?
悔しくて目の前の机を睨みつける。
ふと目にとまったのが私のカバンの中身だ。
コレだ!
スマホを手に取り高くかかげて叫ぶ。

「これを見て下さい!」

私の45歳の誕生日を祝い子供達がhappy birthdayを歌い「45歳おめでとう!」と言っている動画を再生する。
にこやかに歌う子供達。
ああ、ダメ。愛しくて涙が出てきた。

「ヒィー!」 

さっきまでヤジを飛ばしていた役人達が一斉に騒ぎだす。

「なんだ!人が小さな箱の中に入っているぞ!」

慌てふためき立ち去ろうとする者、目を凝らす者と辺りはパニックとなった。

「小人族か?」

マーベリックが私の手を掴む。
私はスマホを取り上げられないように両手で必死に持ち叫ぶ。

「違う!待って!これは動画です!危険ではありません!」

マーベリックがジッーと私を見下ろし、
「証明しろ」と手を離しながら言う。

「これは鏡と絵を組み合わせた機械です。誰か試して下さい。」

騒がしい中、すぐ脇の兵士が立たされた。
私は写して直ぐに再生すると一同から歓声が上がった。
陛下が片手を上げて静めて質問をした。

「どうだ?身体の不調はあるか?」

「な、何ともありません!」

と兵士は怯えた表情で体中を確かめながら答えた。

「次は私を。」
マーベリックが申し出る。再び写し直ぐに再生する。

「これは、、」

マーベリックの目がスマホに釘付けだ。

「マーベリックよ。撮られた事で身体の不調は無いか?苦しくはないか?」

「いいえ、どこも異常はありません。」

「なんと!」

「おっおっ!!」

「なんたる事だ!」
 
尋問室が驚愕の声で収集がつかなくなった。
ドン!
陛下が杖をつき、片手を上げ静かにさせる。
それからは、私はスマホに写る写真の質問攻めにあって私についての尋問どころでは無くなった。

スマホに写っている「私の世界」と「この世界」の違いは明らかだった。

結局、第一発見者が陛下であった事、
学者が過去に「異界からの旅人が現れ知恵の恩恵で文明が発展した」と歴史書にあると意見をし、私の数々の持ち物や異国の布で作られた衣装を身につけている事から、私は「異世界からの旅人」と認定されてしまったのだった。
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