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1.幼い記憶と今の俺

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「お母さん、僕ね今日も鈴を鳴らしてきたよ。だから早く良くなって。」

「あら、ありがとう。祐介は本当に良い子ね。お母さん、元気が出てきたわ。ふふふ。」

母は、そう言って笑っていつも頭を撫ぜてくれてた。だから俺は毎日、かかさずに学校の帰り道にある神社の鈴を鳴らしたのに。

それから間もなくして母は、亡くなった。

「神様の嘘つき!鈴を鳴らして手を合わせたらお願いを聞いてくれるっていってたのに!」

この時、たった7歳で母がいなくなった喪失感と神様なんてこの世にいない事を思い知った。

それから13年が経ち大学生になった俺は、母の法事は仏式で行い、クリスマスにはキリストの誕生をパーティーで祝い、正月は神社へ初詣に行く典型的な日本人になった。

勿論、神様なんて信じない。これは俺が身を持って知った真実だ。
でもこんな奴、俺の周りには溢れている。

そんな中、大学で出来た友人の福原 良太は、変わった奴だ。

「俺、たまーになんだけど、何かを感じる時があるぽいんだ。たまーにな。」

「ポイ?なんじゃそれ。何かってなんだ?」

「そりゃ、何かだ。見られているぽいと言うか圧を感じるぽいやつさ。お前、もしかして不感症タイプ?」

「はあ?お前が敏感ちゃんで被害妄想なだけだろ?俺はまともだ。」

いるんだよな。たまに自分は人と違う。霊感があると自己暗示かける奴。

本人も「感じてるぽい」と曖昧な言い回しで嘘つきにならない保険をかけている所がアイツらしい。

「あー!疑ってるだろ?証明してやるから一緒に旅行に行こうぜ。行きたい所があるんだ。」

「イヤだって言っても強引に連れて行くんだろ?わかったよ。いつだ?」

「明後日。桃ちゃんの資格試験がもう直ぐって聞いたんだ。だから絶対に御守りを渡したいんだ。」

「お!とうとう告るのか?」

「お、おう。そうさ。最強のパワースポット神社でオレの恋愛祈願もして一石二鳥だ。良いだろ?」

ハイハイ。好きにして下さいよ。
ま、俺も素直に旅行は行きたい。

そんな訳で良太と俺は1泊2日の旅に出る事にした。
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