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第一部 一章 転移編
魔力鑑定者と魔法の存在。
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受付嬢の__紅華さんだっけ?に、言われたは良いけどめんどくさいなぁ……
「あ、梨花さん、どうでした?僕はテストに受かったので冒険者になれましたが…」
「私は魔力鑑定者の元に行けってさ…めんどい…」
「まあまあ、そんな事言わずに行きましょ?僕も着いてきますから……」
なら良いか……1人だとだるいからねー。めんどいのがちょっとだけ軽減されたわ。
「じゃー行こー」
「少しはやる気持って下さいよー…」
そんな事言われてもな……でも奏斗が一緒なら良いか…
「はぁ…そういえば魔力鑑定者ってどこに居るの?」
「えっと……確か、ギルドから13本目の街灯の右の路地裏の2本目の道を真っ直ぐ行った先の公園にある右から4本目にある木の左を通って豪邸の間を通った先のテントだそうですよ」
「………え?」
「ですから、ギルドから13本目の街灯の右の路地裏の2本目の道を真っ直ぐ行った先の公園にある右から4本目にある木の左を通って豪邸の間を通った先のテントですってば」
「長くない?」
「それは……思いましたけど、この道案内を作った人の語彙力の問題ですし、無視しましょ?」
意外と奏斗ってグサッと来る事言ってくるな……まあ良いけど。
その後は、説明に書いてある通りに進んだ。豪邸の間に悩んだけど、勘で行ったら行けた。そして如何にも怪しいテントが。看板と思しき板には、
『魔力鑑定者カイトの鑑定テント、営業中です』
と、汚い文字で書いてあった。
「多分、ここで合ってるよね?奏斗」
「ええ……多分ここでしょうが…魔力鑑定者と書いてあるので」
「不安だなあ…」
取り敢えず入るか……。ギルドの紹介だから確かだと思うし。間違ってたら締め上げてやる。
そんな物騒な事を考えながらテントの中に入る。中はどちらかと言うと占いテントの様な内装で、水晶玉、鏡、などなど、占いグッズが置いてある。
「おや、お客さんだ。見た事ない顔だから新人さんかな?」
「僕は冒険者ですけど……」
「今回は私。冒険者になるために来た。紅華さんに調べて貰えって」
「へぇ。あの紅華にか……どんな事を調べに?」
「私が使う白魔術の事について。無精霊でも白魔術の様なものが使えるから」
「………は?」
「僕もこの目で見ましたが、本当ですよ …吃驚しましたが…」
「………………………は?」
そんな驚かれましても………本当の事だからなあ。精霊が居る事が当たり前のこの世界じゃあ可笑しいかもだけどね。うーん、いい説明あるかな?
「梨花さん、調べて貰ったら分かるんじゃないですか?」
「私も良く分かって無いから取り敢えず調べて?」
「あ、ああ。じゃあこの鏡を覗いてくれ。」
そう言って出された鏡を覗いてみると急に鏡が光りだして、私のステータスと思われる項目が沢山出てきた。
《澪乃梨花》
・年齢‐17歳
・職業‐勇者
・属性‐全
・魔力量‐36590
・特殊スキル‐先代勇者の加護・モンスターキラー
・冒険者ランク‐不明
と、出てきた。そして、私以外にも、カイトさんと奏斗まで、唖然としていた。何故なら………
「……勇者って何ですか…?まさかあの勇者ですか…?」
「そんな筈は……。だが、もし本当だったら、こんな貴重な人材を…勿体ない…とにかく診断表を渡しとかないと…」
「ありえな__ん?まさか…」
まさか、異世界転移したから?ラノベで良くあるあの展開?チート能力手に入れたとか!?
「詳細を見てみる。ちょっと待ってろ」
……私の妄想邪魔された…まあ良いけど…。それより、カイトさん、急に神妙な顔になって鏡に向かってるけど何やってるんだろう。
暫くすると、勇者って書かれてる所がズームアップされて、細かい事が出てきた。
《勇者》
<「魔法」と「魔法剣」が行使出来る。イメージ次第で無限大の可能性が有る>
そこまでチートそう……では無いかな?イメージだと、限界点もありそうだし、戦闘中だときつそう……。それに、勇者なのに目的とか無いし。
「魔法……!?」
「白魔術…とは全く違いそうです…」
「イメージ次第……。つまりは…」
頭の中にくるくると空を飛ぶイメージを浮かばせる。自分の意思で色んな角度、スピードに出来て……。
「【飛翔】」
そっと唱えてみるとふわりと体が浮かぶ感覚が体全体を覆う。カイトさんと奏斗が声も無く固まってるけど無視してふわりと移動したりしてみる。ここは大空じゃないから自由ではないけれど、かなり楽しい。暫くして硬直が解けたカイトさんが私を問い詰める。
奏斗って意外と予想外の事態に弱いんだなあ。
何て呑気な事を考えながらカイトさんの話を聞いてみる。
「今のは何だ!明らかに詠唱が無かったし…これが魔法か!?」
「多分、そうなんだと思う。イメージしたし」
にしても飛ぶの楽しい!奏斗とカイトさんの頭上をくるくる回って空中一回転したり!途中、一回転した時に2人とも顔を赤くして俯いたけどどうしたのかな?まあ良いか。
「梨花さん、もう力がある事は証明されましたし、そろそろギルドに向かった方が良いと思いますよ?」
「え~……」
「今日は夜遅いし泊まって行けよ。この時間帯は盗賊が出るからな…」
「ありがとう、お言葉に甘えさせて貰うね」
「ただ……。俺の心情的にここで寝てくれ…。後飯は置いとく」
うーん、寝にくそう。カイトさんにはもてなして貰ってるから文句も言えないしな…。ご飯付だし。
「まあ……かなり妥協してオッケーしようではないかー」
「頭が高いっつーの」
そんな会話も挟んで寝かせて貰った。ふかふかの毛布を貸して貰ったから別に寒く無いし逆に快適だった。梟だと思われる鳴き声を聞きながら目を閉じているとたちまち眠くなって、直ぐに寝れた。日本で生活していた頃はアイツらから逃げれるとは思って無かったけどこんな形だけど逃げれた。神様はまだ味方なのかな…。そんな事を考えながら眠りについた。
*
起こされたのはまだ外が真っ暗な時間だ。眠りを邪魔したのは誰だ……?と、思いながら目を開けるとそこに居たのは奏斗だった。あの優しそうな奏斗がそんな意地悪するか思考を巡らせていると声を掛けられた。
「梨花さん、大変です!カイトさんがピンチです!」
「んにゃあ…?」
理解に時間が掛かったけど外から聞こえる悲鳴と爆発音で全てを理解した。テロか何かが起こっているんだと。
「それで、どうしてカイトさんがピンチに?」
「魔族と戦っているんです!それで……かなり苦戦している様でして__」
奏斗の言葉はそこで止められた。何故なら……
「ぐぁっ…!」
「カイトさん!?」
「にげ……ろ……お前らで…敵う相手じゃ……」
カイトさんがテントの入口に吹っ飛んで来て、私達の目の前に来たからだ。しかもかなりの重症だ。腕、腹部、脚に大きな傷が有って、傷がかなり深いのだ。
「梨花さん、戦えますか?」
「勿論!カイトさんを任せたよ?」
「ええ、お任せ下さい!」
「ま……て…」
テントの外に出るとかなり酷い状況になっていた。それでも、テントが無事だったのはカイトさんが決死の思いで守ってくれたからだろう。魔族が何処か探していると頭上から声が掛けられた。
「ふぅん、あんたが例の勇者か」
上を見てみると、綺麗に整った顔と、短くカットされた黒い髪。大きく広がっている羽が見えた。見た事ある様な気もするけど…気のせいか。多分魔族……吸血鬼辺りだと思われる。取り敢えず、怒りを抑えながら会話をする事にした。冷静にいられるかどうかは分からないけど。
「そうだけど?情報早いんだね」
「そりゃ勿論。ちっちゃい虫と梟の使い魔が街を観察してるからな」
「カイトさんを攻撃したのはどうして?」
「勇者殺しに反抗したからさ。邪神様の命令は絶対だからな」
「へぇ、その邪神って奴、心配性何だね。女の子1人殺す為にこんな部隊作るなんてさ」
私は至極冷静に答えてるつもりだけど、怒りが相手に伝わってるかも知れない。そうしたら…相手は隙を突いて襲いかかって来るかも知れない。気を付けなければ。
「ま、それも邪神様らしいっちゃらしいけどな。……おっと、そう言えば名乗って無かったな、俺は邪神四天王が4番、グロティアル。血染吸血鬼だ」
「へぇ、名乗って良いんだ。名前とか、伏せた方が良くない?」
「良いんだよ、俺の流儀だ。ところでお前、名前は?」
「澪乃梨花。勇者だよ」
「お前こそ、名前を媒体にしてやる呪いの妖術とか掛けられても良いのかよ」
「そっちが名乗ったんだからこっちも名乗らなきゃね」
「だが……良かったな。呪いで殺される運命だけは回避出来るんだからなっ!」
私が油断している隙を突いて奴……グロティアルは襲いかかって来た。羽のお陰でかなり早い。後1秒反応が遅れていたら爪の餌食になっていたと思うと怖気が走る。どうやら、爪に魔力…だと思う物を付与して殴り掛かって来てるらしい。混乱する頭で思い付いた作戦をやけくそでやってみる。
吸血鬼は水が苦手な筈だから…流水で……そう!海だ!
「【海流】!」
「なっ……!?」
私の掌から溢れんばかりの水が出て来て、グロティアルの羽に直撃……はしなかったけど、掠った程度の傷は付いた。そして私は……吹っ飛ばされた衝撃で動けない。これもどうにかしないと……。グロティアルがゆっくりと近付いてくる。今度こそ死ぬんじゃないかと思った時、私の頭に一つのワードが浮かんで来た。そう、『魔法剣』だ。近くに剣は……流石に無い。奏斗に貸して貰うしか…いや、奏斗は治療術師。剣何て…持ってないはず。カイトさん…カイトさんなら持ってるかも知れない。
「カイトさん!聞こえる!?聞こえたらこっちに剣を投げて!」
少し待っても剣が飛んでくる気配は感じられない。つまり…爆発音で聞こえなかったのか?動けない可能性は?いや、奏斗が居るからそれは無い。ギリッと歯を食いしばってグロティアルを向いても、こっちの声は爆発音で聞こえない筈だから、後少しなら猶予は存在する。お願い…来て!そう願っていると、私の目の前を白い光が覆う。そしてまた、あの声が聞こえてくる。
『梨花……やっと貴女の手にこの片手剣…いいえ、勇者の剣…【光剣】を授ける時が来ました…』
どう言う事?何時でも良かったんじゃ…?
『いいえ、それが無理だから今渡すのです』
条件みたいなのがあったって事?
『そうです、貴女自身がこの剣を求めた時に渡す、と言う掟があるのですよ』
そっか…だから今だったんだね。ねえ、この剣でアイツは倒せる?
『貴女の今の実力では無理です』
ズバッと言いやがって……あ、今って事はいつか倒せるって事なの?
『そうですね…まあ、そう言う事にしときます。私にも……予想がつかないので。ですが、撃退するレベルの力はあります。では、貴女を現実世界に戻すので。健闘を祈ります』
話終わらせたな__と突っ込む余裕も無く現実世界に戻された。グロティアルはまだ近付いている最中だから、準備時間は幾らでもある。私は近くに落ちてた【光剣】を隠しながら構えて、奴を待つ。【魔法剣・海裂剣】を放つ為に。
「あ、梨花さん、どうでした?僕はテストに受かったので冒険者になれましたが…」
「私は魔力鑑定者の元に行けってさ…めんどい…」
「まあまあ、そんな事言わずに行きましょ?僕も着いてきますから……」
なら良いか……1人だとだるいからねー。めんどいのがちょっとだけ軽減されたわ。
「じゃー行こー」
「少しはやる気持って下さいよー…」
そんな事言われてもな……でも奏斗が一緒なら良いか…
「はぁ…そういえば魔力鑑定者ってどこに居るの?」
「えっと……確か、ギルドから13本目の街灯の右の路地裏の2本目の道を真っ直ぐ行った先の公園にある右から4本目にある木の左を通って豪邸の間を通った先のテントだそうですよ」
「………え?」
「ですから、ギルドから13本目の街灯の右の路地裏の2本目の道を真っ直ぐ行った先の公園にある右から4本目にある木の左を通って豪邸の間を通った先のテントですってば」
「長くない?」
「それは……思いましたけど、この道案内を作った人の語彙力の問題ですし、無視しましょ?」
意外と奏斗ってグサッと来る事言ってくるな……まあ良いけど。
その後は、説明に書いてある通りに進んだ。豪邸の間に悩んだけど、勘で行ったら行けた。そして如何にも怪しいテントが。看板と思しき板には、
『魔力鑑定者カイトの鑑定テント、営業中です』
と、汚い文字で書いてあった。
「多分、ここで合ってるよね?奏斗」
「ええ……多分ここでしょうが…魔力鑑定者と書いてあるので」
「不安だなあ…」
取り敢えず入るか……。ギルドの紹介だから確かだと思うし。間違ってたら締め上げてやる。
そんな物騒な事を考えながらテントの中に入る。中はどちらかと言うと占いテントの様な内装で、水晶玉、鏡、などなど、占いグッズが置いてある。
「おや、お客さんだ。見た事ない顔だから新人さんかな?」
「僕は冒険者ですけど……」
「今回は私。冒険者になるために来た。紅華さんに調べて貰えって」
「へぇ。あの紅華にか……どんな事を調べに?」
「私が使う白魔術の事について。無精霊でも白魔術の様なものが使えるから」
「………は?」
「僕もこの目で見ましたが、本当ですよ …吃驚しましたが…」
「………………………は?」
そんな驚かれましても………本当の事だからなあ。精霊が居る事が当たり前のこの世界じゃあ可笑しいかもだけどね。うーん、いい説明あるかな?
「梨花さん、調べて貰ったら分かるんじゃないですか?」
「私も良く分かって無いから取り敢えず調べて?」
「あ、ああ。じゃあこの鏡を覗いてくれ。」
そう言って出された鏡を覗いてみると急に鏡が光りだして、私のステータスと思われる項目が沢山出てきた。
《澪乃梨花》
・年齢‐17歳
・職業‐勇者
・属性‐全
・魔力量‐36590
・特殊スキル‐先代勇者の加護・モンスターキラー
・冒険者ランク‐不明
と、出てきた。そして、私以外にも、カイトさんと奏斗まで、唖然としていた。何故なら………
「……勇者って何ですか…?まさかあの勇者ですか…?」
「そんな筈は……。だが、もし本当だったら、こんな貴重な人材を…勿体ない…とにかく診断表を渡しとかないと…」
「ありえな__ん?まさか…」
まさか、異世界転移したから?ラノベで良くあるあの展開?チート能力手に入れたとか!?
「詳細を見てみる。ちょっと待ってろ」
……私の妄想邪魔された…まあ良いけど…。それより、カイトさん、急に神妙な顔になって鏡に向かってるけど何やってるんだろう。
暫くすると、勇者って書かれてる所がズームアップされて、細かい事が出てきた。
《勇者》
<「魔法」と「魔法剣」が行使出来る。イメージ次第で無限大の可能性が有る>
そこまでチートそう……では無いかな?イメージだと、限界点もありそうだし、戦闘中だときつそう……。それに、勇者なのに目的とか無いし。
「魔法……!?」
「白魔術…とは全く違いそうです…」
「イメージ次第……。つまりは…」
頭の中にくるくると空を飛ぶイメージを浮かばせる。自分の意思で色んな角度、スピードに出来て……。
「【飛翔】」
そっと唱えてみるとふわりと体が浮かぶ感覚が体全体を覆う。カイトさんと奏斗が声も無く固まってるけど無視してふわりと移動したりしてみる。ここは大空じゃないから自由ではないけれど、かなり楽しい。暫くして硬直が解けたカイトさんが私を問い詰める。
奏斗って意外と予想外の事態に弱いんだなあ。
何て呑気な事を考えながらカイトさんの話を聞いてみる。
「今のは何だ!明らかに詠唱が無かったし…これが魔法か!?」
「多分、そうなんだと思う。イメージしたし」
にしても飛ぶの楽しい!奏斗とカイトさんの頭上をくるくる回って空中一回転したり!途中、一回転した時に2人とも顔を赤くして俯いたけどどうしたのかな?まあ良いか。
「梨花さん、もう力がある事は証明されましたし、そろそろギルドに向かった方が良いと思いますよ?」
「え~……」
「今日は夜遅いし泊まって行けよ。この時間帯は盗賊が出るからな…」
「ありがとう、お言葉に甘えさせて貰うね」
「ただ……。俺の心情的にここで寝てくれ…。後飯は置いとく」
うーん、寝にくそう。カイトさんにはもてなして貰ってるから文句も言えないしな…。ご飯付だし。
「まあ……かなり妥協してオッケーしようではないかー」
「頭が高いっつーの」
そんな会話も挟んで寝かせて貰った。ふかふかの毛布を貸して貰ったから別に寒く無いし逆に快適だった。梟だと思われる鳴き声を聞きながら目を閉じているとたちまち眠くなって、直ぐに寝れた。日本で生活していた頃はアイツらから逃げれるとは思って無かったけどこんな形だけど逃げれた。神様はまだ味方なのかな…。そんな事を考えながら眠りについた。
*
起こされたのはまだ外が真っ暗な時間だ。眠りを邪魔したのは誰だ……?と、思いながら目を開けるとそこに居たのは奏斗だった。あの優しそうな奏斗がそんな意地悪するか思考を巡らせていると声を掛けられた。
「梨花さん、大変です!カイトさんがピンチです!」
「んにゃあ…?」
理解に時間が掛かったけど外から聞こえる悲鳴と爆発音で全てを理解した。テロか何かが起こっているんだと。
「それで、どうしてカイトさんがピンチに?」
「魔族と戦っているんです!それで……かなり苦戦している様でして__」
奏斗の言葉はそこで止められた。何故なら……
「ぐぁっ…!」
「カイトさん!?」
「にげ……ろ……お前らで…敵う相手じゃ……」
カイトさんがテントの入口に吹っ飛んで来て、私達の目の前に来たからだ。しかもかなりの重症だ。腕、腹部、脚に大きな傷が有って、傷がかなり深いのだ。
「梨花さん、戦えますか?」
「勿論!カイトさんを任せたよ?」
「ええ、お任せ下さい!」
「ま……て…」
テントの外に出るとかなり酷い状況になっていた。それでも、テントが無事だったのはカイトさんが決死の思いで守ってくれたからだろう。魔族が何処か探していると頭上から声が掛けられた。
「ふぅん、あんたが例の勇者か」
上を見てみると、綺麗に整った顔と、短くカットされた黒い髪。大きく広がっている羽が見えた。見た事ある様な気もするけど…気のせいか。多分魔族……吸血鬼辺りだと思われる。取り敢えず、怒りを抑えながら会話をする事にした。冷静にいられるかどうかは分からないけど。
「そうだけど?情報早いんだね」
「そりゃ勿論。ちっちゃい虫と梟の使い魔が街を観察してるからな」
「カイトさんを攻撃したのはどうして?」
「勇者殺しに反抗したからさ。邪神様の命令は絶対だからな」
「へぇ、その邪神って奴、心配性何だね。女の子1人殺す為にこんな部隊作るなんてさ」
私は至極冷静に答えてるつもりだけど、怒りが相手に伝わってるかも知れない。そうしたら…相手は隙を突いて襲いかかって来るかも知れない。気を付けなければ。
「ま、それも邪神様らしいっちゃらしいけどな。……おっと、そう言えば名乗って無かったな、俺は邪神四天王が4番、グロティアル。血染吸血鬼だ」
「へぇ、名乗って良いんだ。名前とか、伏せた方が良くない?」
「良いんだよ、俺の流儀だ。ところでお前、名前は?」
「澪乃梨花。勇者だよ」
「お前こそ、名前を媒体にしてやる呪いの妖術とか掛けられても良いのかよ」
「そっちが名乗ったんだからこっちも名乗らなきゃね」
「だが……良かったな。呪いで殺される運命だけは回避出来るんだからなっ!」
私が油断している隙を突いて奴……グロティアルは襲いかかって来た。羽のお陰でかなり早い。後1秒反応が遅れていたら爪の餌食になっていたと思うと怖気が走る。どうやら、爪に魔力…だと思う物を付与して殴り掛かって来てるらしい。混乱する頭で思い付いた作戦をやけくそでやってみる。
吸血鬼は水が苦手な筈だから…流水で……そう!海だ!
「【海流】!」
「なっ……!?」
私の掌から溢れんばかりの水が出て来て、グロティアルの羽に直撃……はしなかったけど、掠った程度の傷は付いた。そして私は……吹っ飛ばされた衝撃で動けない。これもどうにかしないと……。グロティアルがゆっくりと近付いてくる。今度こそ死ぬんじゃないかと思った時、私の頭に一つのワードが浮かんで来た。そう、『魔法剣』だ。近くに剣は……流石に無い。奏斗に貸して貰うしか…いや、奏斗は治療術師。剣何て…持ってないはず。カイトさん…カイトさんなら持ってるかも知れない。
「カイトさん!聞こえる!?聞こえたらこっちに剣を投げて!」
少し待っても剣が飛んでくる気配は感じられない。つまり…爆発音で聞こえなかったのか?動けない可能性は?いや、奏斗が居るからそれは無い。ギリッと歯を食いしばってグロティアルを向いても、こっちの声は爆発音で聞こえない筈だから、後少しなら猶予は存在する。お願い…来て!そう願っていると、私の目の前を白い光が覆う。そしてまた、あの声が聞こえてくる。
『梨花……やっと貴女の手にこの片手剣…いいえ、勇者の剣…【光剣】を授ける時が来ました…』
どう言う事?何時でも良かったんじゃ…?
『いいえ、それが無理だから今渡すのです』
条件みたいなのがあったって事?
『そうです、貴女自身がこの剣を求めた時に渡す、と言う掟があるのですよ』
そっか…だから今だったんだね。ねえ、この剣でアイツは倒せる?
『貴女の今の実力では無理です』
ズバッと言いやがって……あ、今って事はいつか倒せるって事なの?
『そうですね…まあ、そう言う事にしときます。私にも……予想がつかないので。ですが、撃退するレベルの力はあります。では、貴女を現実世界に戻すので。健闘を祈ります』
話終わらせたな__と突っ込む余裕も無く現実世界に戻された。グロティアルはまだ近付いている最中だから、準備時間は幾らでもある。私は近くに落ちてた【光剣】を隠しながら構えて、奴を待つ。【魔法剣・海裂剣】を放つ為に。
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