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28話 考察会議は踊る!~メッテルニヒ合流編~

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 はい、前回のレイドボス討伐の翌日。

 新緑都市アネイブルがジェーの支配から開放された今、プレイヤーたちの拠点は【草原(仮)】から新緑都市アネイブルに移っていた。
 
 この光景を見ると頑張った甲斐があるな~と思えてくるぞ。
 樹木でできたストリートをプレイヤーたちの喧騒によって活気溢れている雰囲気を堪能しながら歩いてきたが、こんなにこのゲームのプレイヤーがいたのか!?と思うくらい人がいる。

 始まりの街が解放されて各地のエリアを探索していた人がここに戻ってきたり、一度このゲームから離れていたプレイヤーが噂を聞きつけて復帰したのかもしれない。
 ちょっと感慨深いな、PKし放題じゃないか!

 俺はそんな新緑都市アネイブルにある、樹木でできた建物の1つに来ていた。
 建物にはプレイヤーが手書きで書いたということが見てすぐわかる雑さで【メッテルニヒ】と書かれていた。
 この建物の名前らしい。

 「ようこそ、新緑都市アネイブルでの検証班の拠点へ!
 どうでしょうか、この【メッテルニヒ】の出来栄えは?」

 そこにはもはや見慣れてきた【検証班長】が出迎えてきた。
 まあ、俺を呼んだのはこいつだから居てもらわないと困るが。

 「出来栄え……って言ってもほぼそのまま流用だろ?
 アネイブルクラスタの俺は騙せないと思った方がいいぞ?
 看板はオリジナルって分かったが」

 「いい味出てますでしょう?
 ボクが書きました!」

 いや、雑としか思わなかったが……

 「いや~、私はいいと思いますよ?
 名前もかっこいいですし!
 金属の名前みたいですね!」

 爆弾魔は的外れなコメントし過ぎだぞ!
 そう思っていたらムッと頬を膨らませて反論してきた。

 こういう表情だったりが可愛いからアイドルとしてある程度は成功してるんだろうな?
 こら、照れるな。

 「それにしても【メッテルニヒ】とは……
 検証班の拠点としての名前に使うのは皮肉が利いていないか?」

 「ほほう、【包丁戦士】さんそこに気がつきましたか」

 「ふえっ?えっ?
 なんのことです??」

 ボマードちゃんはさっき的外れのことを言っていたから気づいていないのだろう。

 「クレメンス・ヴェンツェル・ロタール・ネーポムク・フォン・メッテルニヒ=ヴィネブルク・ツー・バイルシュタイン、オーストリアの外相だった人物のことで合ってるな?」

 「その通りです。
  勢力均衡、正統主義でヨーロッパの秩序を守ろうとした人です。」

 「良さそうな人ですね」

 「ところがどっこい、検閲を義務にしたり、監視のための機関を作ったりしたぞ」

 「なんか聞いたことのあるような文字の並びですね……」

 「そして、この集まりをやる上で一番皮肉なのがこの人が参加した会議ですね」

 「会議……ですか?」

 全くピンと来てないなこいつ……

 「1814年から1815年にかけて開かれたウィーン会議だな。
 その会議を揶揄してよく言われることがあってな?
 会議は踊る、されど進まず、だ」

 「このどん底ゲームで【検証班長】を勤めるなら、そうなるかもしれないという覚悟を持って検証しますよ……という想いを込めてつけました」

 ちょっと飽きてきたのかボマードちゃんは【名称公開】を発動させたり止めたりして遊びはじめた。

 「いやー、歴史のおべんきょーは学校だけで充分ですよ!
 わざわざゲームの中でもやりたくないです!」

 この反応、ボマードちゃんは学校に通っているということか。
 リアルの詮索はオンラインゲームではマナー違反だがこういう言葉の端から気づいてしまうこともよくある。

 昔やっていたゲームで一緒に遊んでいたプレイヤーを特定したら、今まで全く関わりのなかった隣の部屋の住人だった……みたいなことがあった。
 これは笑い話だが、そうならない可能性もあるのが怖いところだ。

 「まあ、これからやる考察会議も【メッテルニヒ】にちなんで、されど進まず……になるかもしれないが、進まなくても情報の共有、整理ができるだけでも俺は嬉しいと思う」

 「いや~、私もですね~
 アナウンスとかスキルとか称号とか討伐報酬とか、実績とかわけのわからない情報が増えましたからね!!
 助けてください【検証班長】さま~!」

 【検証班長】さま~!
 いつもこういうときはボマードちゃんの発言をいじるが、今回に関しては俺も同じく情報過多によって混乱しているのでたまには良いだろうと思い便乗してみた。

 「……いいでしょう、【メッテルニヒ】での考察会議開催です!」

 







 えっ、せっかく新緑都市解放されたのに散策しないんですか(困惑)
 

  【Bottom Down-Online Now loading……】
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