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7話 新兵器登場!

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 【Raid Battle!】

 【兎月舞う新緑の主】

 【荒れ狂う魚尾砲】

 【レイドバトル同時発生につき難易度が上昇します】






 「Ж/#††#:##ЖЖЖ」

 【兎月舞う新緑の主の気分高揚!】

 【一時的に攻撃力がアップします】

  鼻をくんくんさせた後、いつもより怒り気味のウサギが突進してきた。


 「なんだこのアナウンス!?
 はじめて見るんだが!?
 ここに来て新要素とか止めてくれよな……」

 俺が嘆いていてもウサギの突進は止まらない。
 巨体で行われる突進は戦車での走行のように威圧感がある。
 まあ、その戦車よりも格段に速いのだが……


 「だが、その突進はもう見慣れてる!
 俺が他のレイドボスに挑んだのを嫉妬して頭が回っていないのか?」

 そんなAIがレイドボスに積まれているとは考えがたいが、このドン底ゲームの運営ならやりかねないのが頭を痛めさせる。

 しかし、新兵器ができたのだ。
 それを試さないわけにはいかない。


 「これが俺の新兵器!
 μ素材の鞭だ!」

 そう言いながらとりあえず適当に振り回してウサギを牽制をする。
 μ素材とかいう唐突なワードが出てきて俺も驚いたが、どうやらЖというのは尻尾のウナギ部分に由来するものらしく、ウサギ部分に由来するものはμ(ミュー)というらしい。

 これからこのレイドボスはミュージェーと呼ぶのが正しいのかもしれない。
 まあ、他の人にこの情報を広めるつもりがないので便宜上このままジェーと呼ばせてもらう。

 何故名前が分かったかと言うと、【槌鍛治士】からこの紐のような鞭を受け取った時に個人アナウンスが流れたからだ。


 【μの鞭を獲得しました!】
 みたいな感じのやつね。

 まだ広めるつもりがないのは【名称公開】がレイドボスにも適用される可能性があるからだ。
 カットインで名前が割れているのは尻尾のウナギだけだが、それで弱体化は発生しなかった。
 つまり合体している状態だと別の名前になっている可能性が高い。
 それを俺が考えているレイドチーム以外に先に正式名称を突き詰められて先に狩られるのを防ぐためだ。
 ミュージェーちゃんは俺が狩る!
 いや、ミュージェーっていうのは正式名称ではないみたいだけど……
 全く弱体化してないし……
 それかレイドボスには【名称公開】が適用されないのかもしれないが……


 「おらっ、お前の体の一部に攻撃される気分はどうだ!
 おらっおらっ!」

 今までのアタックよりも確実にダメージの通りが良く感じられて心地よくなってきた結果、三下っぽい感じで振り回してたら普通に隙を突かれてミンチになった。
 うーん、この。







 「よおっ、鞭の使い心地はどうだった!
 結構イケるだろ!」

 相変わらず死に戻りをした先にいるのはガチムチおっさんの顔だ。
 安心する。

 「鞭の使い心地はともかく、結構有効だったきがする。
 メイン武器が包丁だから鞭と両方使うのが結構手間というか、今までの感覚と違いすぎるというか……」


 流石に斬撃系統の武器から鞭にいきなりチェンジしたら戦闘スタイルが合わないのはなんとなく分かっていた……が新兵器完成に調子に乗った俺は深く考えずにレイドボスに挑んでいたのだ。
 その結果がこのZAMAなんだが。


 「うーむ、確かに【包丁戦士】なのに鞭をメインで使うと包丁戦士とはいったい……?
 ワシも迷走しておったか!」

 「いや、戦法としては悪くないな。
 これだけだと俺には合わないってだけで」

 「それならこういうのはどうだ!」

 そういうなり俺の包丁と鞭を取り上げた。

 「おいっ、どういうつもりだ」

 「まあまあ、そんなに慌てることは無いだろう!
 ここにこれを着けて、高温で接合して……ほれできたぞ!」


 そういうと持ち手にさっきの鞭が巻き付いた包丁が返ってきた。
 これはもしや……

 「滑り止めだ!」

 「おいっ、これどうするんだよ!
 遠距離攻撃要素消えただろ!」

 「そんなに慌てるなと言っておるだろう!」


 両手の平をこちらに向けて抑えるようにそう言うが、本当にどうすんのこれ?

 「持ち手の一番下についている紐をほどいてみろ!
 それでワシのやりたかったことがわかるはずだ!」

 素直に従うのが癪だったので【槌鍛治士】を包丁で切り裂いてみた。
 たしかに滑り止めが効果を発揮していて、握りやすくはなってるな。

 【槌鍛治士】の断末魔を聞いて満足した後、さっき言っていた紐をほどいてみる。
 ちなみにこの紐もミュー素材の紐のようだ。

 ほどかれたと同時に持ち手に巻き付いていた鞭が一気に広がり戦っていた時のような武器として使える形状に戻った。

 鞭と包丁の持ち替えも楽になるし、鞭部分を柄として使ったら包丁を遠距離から飛ばしたり、回収したり振り回したりできる……気がする!


 「これは色々応用できそうで便利だ、サンキュー【槌鍛治士】!
 ……あっ、さっきPKしてたの忘れてた」



 草原に俺の虚しい声がぽつんと流れた瞬間だった。










 その頃、レイドボスに槌で挑むおっさんが居たとか居なかったとか。

  【Bottom Down-Online Now loading……】
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