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四、生まれたままで
46 東鬼
しおりを挟むタクの痩せた頬を、細い背中を、噴き出した汗がつたっていく。
顎から垂れた汗の雫が、ポタ、ポタとおれの腹にしたたる。
「あ、……ぁ、……ぅぅ……っ」
かふ、かふと苦しそうな呼吸をしながら、タクがおれの珍宝を受け入れていく。
疲れきって踏ん張れなくなってるタクの体が落ちねえように、両脇をおれが支えてるが、このまま貫きたい衝動に逆らうのがつれえ。
一気に突っ込んだらタクが死んじまう!と思って我慢してるが、正直もう耐えられそうにない。
「……ん"ん"ん"っ!!」
「ッおっおっっ」
ゴリュ、と異音を立てて、亀頭部分がぬるりと中に滑り込んだ。
歯を食いしばり、明らかな苦痛に顔を歪めているタクは、指の関節の色が白くなるほどタオルを握りしめて、必死で呼吸を繋いでる。
一方のおれも、ひたすら耐えていた。
人の姿をとってる時とまるで違う、脳天まで電流を流されるような快感に。
タクの柔らかい肉に包まれた亀頭が、嬉しいと震える。
きつい、狭い、なのに最高に気持ちいい。
今すぐ精を放っておひいさまに種付けをし、鬼の妖気と匂いをまとわせたいと、鈴口が開くのを感じた。
金玉が腹側へせり上がって、タクの胎内へ放て、ザーメンを塗りこめ、孕ませろ!と要求してくる。
生だからなのか。
相手がタクだからなのか。
初めて鬼の姿で、珍宝を受け入れられたからか。
珍宝がそのまま溶けちまいそうな快感に負けて、腰を突き上げようとした時に、ちゅ、とかすかな音が耳に届いた。
「たっく、ん、すき、らいすきぃ」
衝撃と痛みで意識がもうろうとしているのか、タクがうわ言のような口調で繰り返し、おれの胸にキスを落としていた。
ちゅ、ちゅ、と子供がするような拙いキスだ。
ただ唇を押し当てて、音を立てるだけの。
愛撫というより、目の前におれがいるから反射的にそうしているように見える。
キスの合間にはぁ、はぁ、と苦しそうに呼吸をしてるのは、意識がしっかりしてねえからだろう。
前からやってる、痛みを逃すとかいう呼吸法をしてねえってことは、そういうこったろう?
「タク、おいタク?」
腰を振る前で良かった。
タクの姿を見て冷静になれた。
今ここでおれが腰を振って奥へ突き進んだら、間違いなくタクは壊れちまう。
「すき、たっくんっ、たっくんすきらのぉ」
おそらく、今のタクは、自分が何を口走ってんのかを理解してねえ。
体が下に落ちねえように気をつけつつ首をねじ曲げて、おれの胸にキスを続けるタクの顔をよく見れば、目の焦点が合ってなかった。
瞳孔もちょーっと開いちまってねえか?
これ、マジでやべえやつか?
声をかけても反応がない。
痛みと突っ込まれた衝撃で、ちょっとおかしくなっちまってんのかもしんねえ。
ちょっと様子を見てみるか。
それとも抜いた方がいいのか?
もっと奥まで受け入れてもらいてえ気持ちはあっても、今は先っぽだけで十分だ。
タクの体が弱いのは事実で、おれが気にしてねえとしても、無理をさせる理由にはならねえ。
無理させて寝込ませちまうと、次のセックスを延期にされそうだ。
何より、タクがおれに「好き」って言ってくれんのなんて、こんな時くれえだ。
ちゃんと意識がある時に、数分おきにでも言ってもらいてえのに、言ってくんねえんだもん。
恥ずかしがって言わねえんじゃなくて、頑固で男前なタクだから、そんな可愛い姿を見せるのは自分らしくねえって思い込んでる節はある。
意識せずの爆弾発言でおれを翻弄してんのが、わざとじゃねえってのは知ってんだ。
タクを知れば知るほどに、気位の高いお猫さまに見えてくる。
気まぐれに近寄ってきてスリスリするくせに、こっちからは触らせてくんねえとか、苦行か!!
くっそー、タクの可愛らしさは一体どうなってんだよ!!
もしかして上限がねえのか!?
「……ぁ」
「タク?」
「しの……ぎ?」
あー、戻っちまったか、残念。
もう少しで良いから「すき、すき」って舌足らずな感じで言われてたかった。
普段のタクが一番だけどよ。
「タッくんって呼んでくれよ」
「タッくん?」
「わかるか?」
「……なにが?」
「入ったぞ、先っぽだけ、だけどな」
あっれぇ?なんかこういうやりとり、前にもしなかったか?と思いながら、首を精一杯曲げて汗まみれのタクの顔を舐める。
汗を拭いてやりてえけど、手が空いてねえから舐めることしかできなかった。
タクの体には力が入ってねえから、おれが脇を支えてねえと、ズルズルっと落ちて根元まで突っ込んじまうことになりかねねえ。
今、それはできねえ。
本気でダメだ。
「さきっぽ?」
「おう、先っぽな」
顔を垂れる汗を舐められたことに嫌悪を感じねえのか、キョトンとする。
クソ可愛い。
まだおかしくなってんのかー?と、様子を見てると、おれの言葉を繰り返したタクの、ぼんやりしていた目が、何度目かの瞬きで理性の光を取り戻した。
「……は、はいった?」
「おう、先っぽは、な」
「ほんとうにはいったのか?」
「おう、先っぽが、な」
「……さきっぽをれんこするなよ」
「仕方ねえだろ、根元まで突っ込みてえの我慢してんだからよ!」
やっぱ、タクは精神面が肉体を凌駕してんな。
口調がふにゃふにゃになっちまってんのに、目の光はいつもと変わんねえ。
タクの肉体的な負担を考えりゃ、人の姿の時みてえに強引に突っ込むのは無理だ。
これから先、何回も、何時間も、何日もかけて、タクの腔をほぐしていかねえと、こればっかりは。
「……ごめん、もうむりかも」
「おう、おれもそう思う、きつすぎて出そうなのを我慢してんだっ」
「え?」
「うっ、悪い、無理、もう我慢できねえっ……うおおおっっ」
「あ、まて、まっ、あ、あつっ!?あついっっ!!」
タクを揺さぶらねえように、奥へ突っ込まねえように耐える。
必死で耐えて、タクも珍宝も一ミリも動かさねえまま、タクの腹の中に射精した。
痛みが原因なのか、汗をかきすぎてるからなのか、体が冷え切ってるらしいタクは、直腸への射精を熱く感じるのか、鬼の精液の量が多いからなのか、悲鳴をあげて逃げようとする。
タオルも握れねえくれえ消耗してるタクが、おれの胸をぺたぺたと撫でるように足掻く姿に、たまんなく興奮させられる。
放ってる途中なのに、睾丸が重てえ。
「ひぃ、あ、や、やだっ、これ、やぁっっ、やだぁっ!」
タクの聞きなれない泣き声を聞きながら、そういやあ鬼って、精液の量が人間と比べらんねえくれえ多かったなーと思い出す。
人に化けてる時でも多かったはずだが、鬼の姿だと、本気で一晩でバケツぐらい溜まるんじゃねえかと思いながら、タクが珍宝の先端を包んでくれる喜びに浸った。
めちゃくちゃ我慢して、抜いた。
一回射精した程度じゃ全くしおれる気配がなく、ガチガチのままだったから、タクが痛がったけど仕方ねえ。
勃起しっぱなしの珍宝が痛くて、冷静になれねえかと思ってたが、おれの精液に血が混ざって垂れる尻を見た瞬間に、頭が冷えた。
一瞬で冷静になった。
気が付いた時には人の姿になってて、ぐったりしてるタクを風呂場に連れていき、全身を丸洗いした。
痛えのは分かってっけど、尻も洗った。
おれの精液を胎の中に残しておくわけにはいかねえ。
ガキができるか、腹を壊すか、どっちにしろ碌なことにはならねえからな。
タクが、歯を食いしばって痛みを我慢してんのが分かって、つれえ。
風呂を急いで済ませ、部屋に戻って傷の手当てをしようとしたおれに、タクが半分以上閉じて寝かけていた目を開けて、声をかけてきた。
着替えてる途中から疲れが出たのか、反応がなくなってるのは分かってた。
「……タッくん」
「おう、どうした?」
「大好き」
「っ、おう、おれもな、タクが大好きだ!!」
タクの尻は病院に行くほどじゃねえが、傷になっちまった。
事前に用意してもらってた傷薬を丁寧に塗り込んで、一応、腰から尻を固定するように布を巻いておく。
「次は……入るかな?」
「え……次も、あんのか?」
てっきり、もう二度としねえって言うと思ってた。
一度目で切れて痛い目を見ちまうと、次は嫌がるだろうなって。
それか、鬼の姿は嫌だ、って言うとか。
「タッくんが、今日みたいに優しくしてくれるなら、な」
「する、絶対する、めちゃくちゃ優しくする!!」
「ふふ」
珍しくタクが笑い声をこぼす。
嬉しそうに、目元を緩めて。
「じゃあ、期待してる……から」
すうと眠りに落ちたタクの姿を見ながら、胸の奥に湧き出した感情に、なんて名前をつけたら良いのか分からなくて、呆然としてしまう。
……ああ、おれはきっと、タクのためなら、命を投げ出すことも惜しまねえだろう。
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