【R18】I've got a crush on ogre

Cleyera

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四、生まれたままで

42 東鬼

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 三日くれえで、タクは動けるようになった。
 動けるようにはなったものの、全身があざだらけだ。
 特に上半身は赤黒くまだらになり、おれの指の形の濃い赤痣だけでなく、何箇所も打撲痕になってる。
 おれが抱きしめて潰そうとしたからなのは分かってんだけど、見るたびに後悔で息が苦しくなる。

 あれからおれは、昼休憩を長くもらって本社の鍛錬場に走り、積極的に衝動を発散する時間をとるようにしてる。
 いつかどっかで働くから、鍛錬を残業扱いにしてくれって頼んだのに、休みすぎだ!てめえはもっとタダ働きしろ!って給料出ねえんだぜ、ひどくねえか?

 くそ、金がねえ。
 とりあえず金を使う予定はねえが、これから先になにがあるか分かんねえもんな。

 残業代は出なくても、破壊衝動を発散しておかねえと、またタクを傷つけちまうかもしんねえから、我慢してやることにした。
 おやっさん、覚悟してろ。
 いつかぎゃふん!と言わせてやる。

 とりあえず組手の相手が必要で、誰でもいいから!と勤務先の違うおっさんたち(妖)を巻き込んで、投げて、投げて、投げて、投げまくったからか、なんかおっさんたちの受け身が上手くなった。
 昨日くれえから、おれの顔を見るなり逃げるおっさんもいる。
 逃がさねえけどな。

 これでも怪我させねえように、当身だの関節技だの使ってねえんだ。
 妖は本気で投げても壊れにくいから助かる。

 あとな、ちょっと変化が緩んで本性が出たおっさんたちの、ヘッタクソな受け身の音が、ベシャッ……からスパーン!に変わってくのが、なかなか楽しい。

 久々に道場に顔だして、師範に型がおかしくなってねえか見てもらわねえとな!って思うくれえ楽しかった。
 衝動を発散すんのは必要で、組手も一人で鍛錬すんのも好きだけど、暴れてえんじゃねえ。
 タクを壊したくねえのと同じだ。
 ああ、おれは人間として生きてんのが好きなんだな、って気がついた。





「さてと、やろうか東鬼シノギ
「……何をだ?」

 タクを殺しかけてから四日目、おれの休みの日。
 出勤を見越した時間に起きるようになったタクが、鉤爪が突き刺さった傷を保護するものを、包帯から大きな絆創膏バンソウコウに変えていたかと思えば、少し緊張した様子でおれに声をかけてきた。

「何をって、一つしかないだろ、ごく普通の……セ……行為だよ」
「普通って何をどうすんだ?」
「今までに、俺はお前と……三回してるよな?」
「おう」
「途中まではともかく、どうしていつも俺が動けなくなるまでセ……続けるのかを聞きたい」
「あー、それな、んー」
「普通なら、一回か二回で満足しておしまいだろう?それくらいが普通だよな?」

 そういう意味の普通か。
 おれの前戯とか、ちんぽの突っ込み方が下手くそなのかと思って焦った。
 んー、確かに人間で、連続で何十回もする奴はいねえよな。

 鬼にとっては、自分のおひいさまを朝から晩まで抱くのが〝普通〟なんだけどな。
 そいつを、タクに説明したところで、解決しねえよな?
 お互いの性欲の強さが、根本から違うって話にしかなんねえし、おれが我慢すりゃ済む話でもある。

 適当に誤魔化すか?と一瞬思って……もうすでに何度も言ってるかもしんねえけど、何度でも本当のことを言おうと思った。

 おれはタクの漢っぷりを信じることにした。
 一方的にタクを〝おひいさまおれのもん〟だと思ってるだけじゃ、もう足んねえ。
 タクにとってもおれが唯一の〝鬼〟でありてえ。

 情けねえかもしんねえが、おれがタクを抱くんじゃなくて、タクにおれを受け入れてもらおう。
 呆れられるのは間違いねえけど、タクがおれに嘘をつかないように、おれもタクには嘘や隠し事をしねえようにしよう。
 まあ、どうしてもって時はあるだろうけどよ。

「そんなんじゃぜんっぜん足りねえ、バケツ一杯出しても足んねえよ」
「……なんでそんなに得意そうドヤ顔なんだよ。
 お前の性欲が強いのは知ってるけど、本当にそれが理由なのか?
 前にもう二、三人相手を増やせって言っただろう、なんで嫌がるんだ?」
「あのよ、タクは、おれにセフレがいた方が良いのか?」
「良いわけないだろう!
 良くなくても、おれがお前を満足させてやれないから、言ってるんだ!」

 表情はあまり動かなくても、本気で悔しがってるのは口調から伝わってくる。
 めちゃくちゃ嬉しい。
 タクが前におれを独占してえって言ってくれたのは本気なんだな。
 おれも独占されてえし、してえよ。

「我慢すっから」
「お前に我慢させたいわけじゃない」

 えー、なんだよそれ。
 難しくねえ?
 我慢しねえで、タクを困らせねえで発散する方法。
 ……ぜんっぜんなんも思いつかねえ。

「……ど、努力」
「しなくていいんだよ……でも、体だけの関係の相手とは、人の姿でだけにしてくれ」
「?」
「鬼のお前を受け入れるのは俺だけだ、それなら我慢できる、するから……良いだろ?」
「っ!!」

 タクの覚悟が嬉しいと同時に悲しい。
 どんだけ体が弱いのをコンプレックスにしてんだよ!って。
 そんなもんおれは気にしてねえっての!

 激しく抱いても壊れねえ相手が良いなら、初めっから相応の体格と体力がある奴をおひいさまに選ぶって。
 おれは鬼の本能に逆らってでも、タクが良いんだよ!

 この言葉がタクのコンプレックスから出たもんでも、これから先、ずっとおれの珍宝チンポウを受け入れると言ってくれたのが嬉しい。
 珍宝を独占してえって意味だよな?
 人の姿でセックスした方が、タクに負担が少ねえってのに。
 なんでわざわざ茨の道を行くんだよ、と思いつつ嬉しくてたまんねえ。

 タクに悲しい思いをさせたくねえ。
 もしも立場が逆で、性欲を持て余したタクが他の鬼にまたがりでもしたら、おれは相手を許せねえ。

 タクが手を伸ばして、マットレスの横に座ってるおれの胸に触れる。
 赤鬼の肌は堅いだろう。
 それでもおれは、タクの細い指の優しい感触に目を細める。

 柔らかくて、冷たい。
 愛おしい。

 心臓の鼓動と肉の硬さを確かめるように、おれの胸の中央のくぼみを指先で撫でてから、飾りのように小さな乳首をかすめて、脇腹へと。
 それだけで、ぞくりと背筋に刺激が走る。
 股間に熱が集まる。

「動くなよ」

 タクに見せねえ方がいいよなってだけの理由で、布を巻いているだけの股間が盛り上がる前に、座り直そうとするおれを、細い指先が簡単に止める。
 力を込めなくてもふりはらえるのに、動けねえ。

 綺麗に透き通った鳶色の瞳に、魅入られちまったようだ。
 タクの瞳に、激情が見える。
 激しい流れのように強い意志には、おれじゃ太刀打ちできそうにねえ。

「ダメだ、まだ傷が治ってねえだろ」
「傷が治ってないから、今のうちにお前のちん……ぽう?に慣れておけば、お披露目……だったか?の頃に傷も完治して、そのまま復職できるだろう?」

 あまりにも前向きなタクの言葉に、ぽかんと口を開けていると、ぽすんと手のひらで口を覆われた。
 今のおれは三メートル越えの体格に従い、頭もでかくなってるせいで、小さい手だなと思ってしまう。

 華奢で骨ばった細っこい手だ。
 守ってやんねえといけないのに、おれが守られてる。

「その姿の時に変な顔しないでくれよ」
「変っておれが?そんな変な顔してんのか?」

 もがもがと覆われた口の中で呟くと、タクが顔を歪めた。
 変な顔をしているよ、と小さくうなずいて、かすかに笑う。

「くすぐったい」

 気がついた時には、舌先でタクの手のひらを舐めていた。
 ちろ、ちろとくすぐるように舐めるだけでは足りずに、すぐに舌全体でベロベロと舐めあげる。
 ひんやりとした手のひらが、ごちそうに思えるのはなんでだ?

 サメの歯のように鋸歯状になっている牙で、指や手のひらを裂かないように気をつけながら、タクの手を味わう。
 うめえ、超うめえ。
 味なんてしねえし、匂いもしねえのに、なんか超絶うめえ。

 このまんまタクの全身を舐めちまおう。
 うおー、すっげー名案じゃねえ?

「待て、待てって、くすぐったいって言ってるだろ!」

 手を離そうとするタクを押し倒そうとして、おれの体がでかすぎてマットレスに乗れないことに気がつく。
 そうだ、今は鬼だった。
 マットレスの中身、なんだっけか。
 綿か?思い出せねえ。
 おれが乗ってつぶれちまったら、タクの寝るとこが無くなって困る……となると、おれがマットレスの代わりだな。
 
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