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13 出奔 ※ 手マン(少し
しおりを挟むホーヴェスタッドで過ごした二百年の間に、エルフは人種族より耳が良い事を悟った。
酒場で働く彼らが、私の反応で一喜一憂している姿を知っていると告げたら、どんな顔をするだろう。
私のために、奥方が果実水の調合を試行錯誤している事も知っている。
店主が、私の来訪で心臓を高鳴らせるのが聞こえている。
昨夜、襲われた私たちを心配して、襲った男に怒っていた事も。
彼らは私たちに敵対していない、その事実だけでこの街全体を敵視しないで済む。
あそこの炒豆は美味しい。
また、食べたい。
「『リウラメン・デ・コレウ』」
ぱたぱたと飛んでいった白金の鳥を見送り、私はブレーに微笑んだ。
「別荘に行こう」
「そうだの」
ブレーがあまり期待してないように見えるのは、仕方ない。
宝窟には敵わなくても、私が作り上げた住み心地の良い木の洞だって悪くないと思うんだ。
一応、現状保存の魔法はかけておいた。
二百年の間、一度もかけ直してないから、どうなってるだろう。
追手がかけられる前に、街を出る。
……木の洞が中腐れして崩れている可能性は高いだろうな。
外壁にたどりつき、衛兵たちを壁にして隠蔽をかけて姿をくらませる。
一瞬でも見失ってくれたら、追われる可能性は一気に減る。
姿を隠して、ホーヴェスタッドを出たという記録を残さない。
人種族なら不名誉な逃走になるかもしれないけれど、私たちは妖精族だ。
突然消えた、とか言われるだろう。
まだ空に残る陽を見上げて方角を確認した後、背後を確認しながら街道を歩く。
「すまんな、魔法を使い過ぎているだろう」
「鈍ってるから鍛え直しになる」
この街で暮らした年月と同じだけ、私はブレーに甘やかされてきた。
居場所を用意されて、自分の食い扶持だけ稼いで生きてきた。
やりたくない事はしない、やらなくても生活できた。
たくさん甘やかしてもらった分、今度は私がブレーを甘やかしてあげたい。
ブレーは平穏なドワーフの窟で育ったと聞いた。
彼の普段の在り方や考え方からも、暴力や血生臭い事に縁が薄いと感じている。
獲物を狩る事なく、命を奪う事なく。
彼の手は奪う手ではなく、作り出す手だ。
斧や槌を振るう事はしても、戦うために使う事を知らない。
私はブレーと、彼の生まれ育った窟の話が好きだ。
先人が作り上げた平和を、子々孫々が守ってきたと分かるから。
それは、素晴らしい事だと思うから。
私は戦う事は嫌いだし、命を奪うのも好きではない。
けれど、生きるとは他者から奪う事だ。
自分の居場所を守るために、他者の命を奪う事だ。
集団に異端が混ざれば、その皺寄せがどこかに出る。
人種族の国で妖精族の私たちが暮らしていた事が、誰かのなにかを奪って巡り巡ったのか。
これまで周囲に、受け入れてくれる者しかいなかった事が奇跡だ。
奪う事は、私がやる。
ブレーから、奪わせはしない。
ブレーを、奪う側にさせはしない。
「転移できるだけの魔力が回復していないから、今日は野宿する」
「構わんが、なにに魔力を使ったんだ?」
ブレーは放出系魔法を扱えないけれど、理論は理解している。
私の魔力量が、人種族とは比べ物にならない位に多い事を知っていての疑問だろうけど、そこは気づいてもらいたかった。
「工房と倉庫に詰め込んでいた工具や資材の量を把握していないのか?、収納で魔力を使いきる日が来るとは思わなかった」
「初体験か」
初体験とは。
初めての……あれだ、きもちよかったやつ。
「そう……そ、そうだ!」
私も家を焼け出されるのは初めてだから、混乱しているのか。
な、なんで今ここでアレを思い出した?
「すまんな」
私の不埒さに気づいてないブレーの言葉に、こちらこそ不純でごめんと思った。
「責めてない、事前に空間拡張の魔法道具を倉庫に使っている事は教えておいてもらいたかった」
「すまん」
しまってもしまってもしまっても、終わらなかった。
全部魔法で収納しておけばいざという時に安心、位の軽い考えで収納し始めたのに、終わらないよー、とすごぉく怖かったんだぞ。
「怒ってない」
「……ありがとうエレン、好きだ」
「っっ、わ、わたし、もっ」
胸が、胸がくるしぃ。
なんなんだよぉ、いっつも不意打ちで心臓ぶち抜こうとすんのやめてぇっ!
二百年、言われ続けているのに、免疫ができない。
私もブレーに好きだと言いたいのに、いつどうやって言えば?
どんな時に言ったら伝わる?
それなりの距離を歩いて、追手がいない事を確認した。
警戒して、人種族が使っている街道を離れる事にする。
ブレーは森や林、草木の生えた山道を歩く事が苦手なので、できる限り開けた場所を進む。
私以上に夜目の効くブレーと二人なら、焚き火は必要ない。
どこででも野宿できる。
日が完全に暮れる前に場所を決めて、『収納』から魔法道具の天幕と寝台を取り出した。
「寝台を使うのか?」
「地面が好みならやめる」
「布団が良い」
「同意する」
特注の二人で眠れる大きさの寝台を、ここで使わないでどこで使う。
両親に贈られた天幕には、外側は擬態の魔法式、内側は空間拡張の魔法式が刻まれている。
二人が眠れる寝台だって楽に使える。
人種族除け各種、鳥除け、虫除け、動物除け、魔物除けの魔法道具を出して、天幕を広く囲うように配置して起動した。
二百年以上前のものだけれど、魔法式の確認は私、消耗部品の整備はブレーがしてくれているので、きちんと動く。
警戒して魔法で遮音結界を重ねた。
「天幕内は靴を脱いで、掃除が面倒くさい」
「おう、分かった」
ブレーは素直に従ってくれた。
「思った以上に広いな、これは良い魔法道具だ」
「両親からの成人祝いだ」
両親は、変なエルフの私を愛してくれている。
飛び出してから一度も帰っていないのに手紙を定期的に送ってくれて、魔法道具の勉強も後押ししてくれた。
親不孝だな、と自分でも思うけれど、里に帰りたいとは未だに思えない。
ようやく緊張から解放されたように、目を細めて目尻に皺を刻んだブレーに手を伸ばして、抱きしめた。
「ご飯にしよう」
「……こいつをそのままにしてか?」
「これは別にそういう気分とかじゃなくて、緊張してたから」
対人戦闘の可能性に私の股間は反応していた。
緊張と興奮の混ざった半勃ちだ。
もちろん自分では気がついていた!
ブレーに気づかれると思わなかった!
「もう、安全なのだろう?」
「……」
私が察知できる範囲内では、と頷くと同時に、寝台に押し倒された。
「エレンがいてくれて良かった、わしだけでは途方にくれとった」
「そん、……、ん、……っっ」
そんな事ない。
ブレーは人好きされるから誰かが助けてくれた、と言葉にする前に口を塞がれた。
「エレン、抱かせてくれ」
「……ぁう、う、んっ」
胸がどきどきする。
二百年で初めて屋外とか、なにそれ、ダメな感じの背徳感んんっ!
明かりのない天幕の中で、あっという間に服を脱がされた。
〝ブレー君〟関連の諸々は家と一緒に焼けたと白状させられて、食材として持っていたグリョン・ロの粘液が用途違いで大活躍した。
「ぅあ、ぁあっ、ぁは、はげしぃっ」
四つん這いで、ぐっちゃぐっちゃと音をたてられながら、尻の穴をかき混ぜられる。
音は激しいのに、手つきが優しいのがたまらない。
資材や工具の多さで私が私物を諦めたと知ったからなのか、いつも以上に丁寧で気持ちいい。
びりびりする腹側には触れてくれないから達する事は出来そうにないけれど、中からぞくぞくがあふれて、声が止められない。
「ブレー、もういいからっ」
昨日も散々使った尻の穴は、ぐずぐずにとろけている。
ブレーの太い指を三本飲み込んで、好き好き、もっとしてと食んでいるのが自分で分かった。
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