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SS どうしてみんな優しいの? ちょっとだけ※
しおりを挟む分厚い筋肉の下の骨が、ボクのお尻にぶつかる。
ばちゅん、ばちゅんって水音がして、目の前が弾ける。
ごりゅっ、ごちゅんって奥まで貫かれると、快感で意識が弾け飛ぶ。
「あ、ああ"っきもぢい"いっっ!!」
「ぐう"う"うっ」
今日も、ボクは剣聖さまをお出迎えするのに成功した。
周りの人に迷惑をかけずに済んでよかった。
そう思いながら、硬い背中に爪をたてて、しがみついた。
◆ ◆
◆ ◆
ふと悲鳴のような声が聞こえて、上級使用人である女中たちは顔を上げた。
「……大丈夫かしら、あの子」
「たぶんね、領主さまがこんな人でなしだと思わなかったわ、あんな小さな子に連日、何時間も男の相手をさせるなんて……」
「ただの客人じゃないわ、剣聖よ、信じられないわよね」
剣聖ラエスパダ・マス・フエルテ一行が、領主の館に滞在して一ヶ月。
戦いの場に出る男が昂るというのは、それなりに有名な話ではあるけれど、本来なら館の外であがなうべき、が常識だ。
使用人は、労働力として雇用されているだけで、体を売りはしない。
客人が自分たちの仕事場で淫行に耽るのを、良しとしない。
高級な家財を汚されると後始末が大変なのだ。
血統を重んじる貴族社会の常識として、金で体を開く人間は少ない。
買った、売られた、と話題になるから。
とはいえ、突然、下級使用人の洗濯係から上級使用人の侍女に任命された少女、エスフエルツォはそんなことは知らないだろう。
エスフエルツォは、どこからか紹介され雇われて洗濯係をしていた、十歳程度の幼い少女だ。
苗字を持っていないということは、庶民の子供。
剣聖付きの侍女に任命されてからは、毎日のように、足音荒く館に戻ってくる剣聖の後をついてまわる姿が見られている。
他の使用人は恐ろしくて近寄れないから、目立つ。
戦いの気配を残して、殺気立った剣聖に笑顔で近づいていく姿は、任命されただけある、と護衛係にすら思わせた。
聖鎧を着た大柄な男の周囲を、幼い少女がちょこちょこと歩き回る姿は微笑ましい。
けれど、それが微笑ましいだけで済まないのは、その後に客間から聞こえてくる物音で明らかだ。
悲鳴のような嬌声は、何時間も延々と続く。
殺気立つ剣聖が、幼い少女に何をしているのか、考えるまでもない。
初めの頃こそ、エスフエルツォが心身を病んでしまうのではないか、と使用人たちは心配していた。
けれど意外なことに、本人は笑顔で剣聖を出迎えるのだ。
「お疲れ様です」
そう言って、鎧姿の男の手を引いて、いそいそと客間へ向かう姿。
チラチラと他の使用人たちを見る姿に、誰もがその内心に気がついた。
この子、他の使用人が自分と同じ目にあわないように、って気遣ってる!?
気がつけば、誰もが少女を守ろうと考えていた。
勘違いに気がつかずに。
エスフォルタが思っているのは〝剣聖さまが人前で穴掘って埋まるんじゃないか〟という心配だ。
使用人たちの思っている〝他の使用人まで襲うんじゃないか〟という心配と全く噛みあっていない。
けれど。
エスフォルタは願うこともないままに、他の使用人たちに愛されることに成功していた。
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