1 / 14
アミンダ
少年は出会う 1
しおりを挟む
ゴールデンウィークですが、非日常が続いております
早く元の日々に戻って欲しいと願っています
:スカベンジャー:Scavenger
ごみやくずを拾い集めて生活する人
体内の不要物質や毒性物質を処理する器官・細胞・物質など
英語で「腐肉食動物」の意味
:覡:
巫〝カンナギ〟=女
覡〝オカンナギ〟=男
*
雨ふらないかな、と座ったまま四角い空を見上げたけれど、雲一つない空からは雨つぶ一つ落ちてきそうにない。
お水が飲みたい。
お腹すいた。
最後にパンを食べたのは、何日前だったかな。
最後に温かいスープを飲んだのは、いつだったかな。
父さんと母さんが、ぼくもいっしょに連れてってくれたら良かったのに。
少しおそくなったけど、きっと「おそかったな」って、むかえてくれるよね?
ぼくも神様の〝永遠の原〟に、入れてもらえるよね?
はりついてぺったりくっついたのどからは、ひゅうひゅうと音がするだけで、神様への祈りが声にならない。
声に出なくても、届くかな。
お願いです、神様、じ愛の神のマナ様。
どうか、ぼくを父さんと母さんの側にむかえてください。
力の入らないうでで体をだきしめて、目を閉じた。
次に目が覚めたら、父さんと母さんがいてくれるはずだって、信じて。
すごく良いにおいで目が覚めた。
スープだ。
目を開けたのに前が見えない。
真っ暗の中で、そっと口に固いものが当てられて、口の中に温かさが広がる。
かわいた口の中がじんじんってしびれて、するりとのどを下りていったスープは、神様の食事なのかもしれない。
何度もスープを飲みこんだら、体が温かくなって、ねむってしまった。
目を覚ますたびに、温かいスープをだれかが飲ませてくれる。
それから二回スープを飲んで、やっと、ここが神様のみもとじゃないと気がついた。
どこかでニグティンガーレが鳴いている。
チーチキ、チーチク、夜だよ、と。
神様のみもとには夜がなくて、いつも春風がそよいでいて、そこにしかいない天の鳥が夢見るような歌を奏でてくれる、って学校に来た助祭様が教えてくれた。
だから、ここは……神様のみもとじゃない。
神様のいる場所に、夜を告げるニグティンガーレはいない。
ぼくは、父さんと母さんの所に行けなかったの?
そんなのひどいよ神様、ぼくはどんな悪いことをしたの?
父さんと母さんに会いたい。
お腹がふるえて、鼻のおくがツンと痛くなる。
すると、カリリと固いもので木をこすったような音がした。
「だれかいるの?」
「だれか、いる、ベスト、いる」
のどの奥でうなるような、男の人の低い声が、すごく近くで聞こえた。
ここがどこか分からないけれど、ずっと近くにいたってこと?
じゃあ、この人がぼくにスープを飲ませてくれた人?
不思議と、こわくなかった。
声は低くてうなるようで聞こえにくいし、片言の話し方だったのに。
「ベスト?」
「そう、ベスト、なまえ、ふょる、ふぉゆ……べスト」
「ベストさん?」
「さん、なに?」
低い声の主が、大人の男性のようだと思ったから、さんをつけてみたら、聞き返された。
始めは聞かれたことの意味が分からなかったけれど、男性はもう一度同じことをくりかえした。
「さん、なに?」
「ベストさん?」
「そう、なまえ、ベスト、さん、なに?」
名前に〝さん〟付けするのは、ふつうじゃないの?
近所の人だっておじさん、おばさんって呼ぶのに。
「……ええとね、さんは、名前につける呼び方で、大人の人に使うよ」
「ベスト、うん、ベストさん、なみだ、こまる、どこ、いたい?」
ベストと名乗った男の人の話し方は、すごくぎこちなくて、でも本当に心配してくれていると伝わってくる。
手のひらでこすったほっぺがぬれていて、ぼくは人前で泣いたことがはずかしくなった。
もう八才なのに、小さな子供みたいに泣いているところを見られた。
「どこ、いたい?」
「心」
「こころ、どこ?」
「ここ」
ぼくは指先で自分の胸を指さした。
早く元の日々に戻って欲しいと願っています
:スカベンジャー:Scavenger
ごみやくずを拾い集めて生活する人
体内の不要物質や毒性物質を処理する器官・細胞・物質など
英語で「腐肉食動物」の意味
:覡:
巫〝カンナギ〟=女
覡〝オカンナギ〟=男
*
雨ふらないかな、と座ったまま四角い空を見上げたけれど、雲一つない空からは雨つぶ一つ落ちてきそうにない。
お水が飲みたい。
お腹すいた。
最後にパンを食べたのは、何日前だったかな。
最後に温かいスープを飲んだのは、いつだったかな。
父さんと母さんが、ぼくもいっしょに連れてってくれたら良かったのに。
少しおそくなったけど、きっと「おそかったな」って、むかえてくれるよね?
ぼくも神様の〝永遠の原〟に、入れてもらえるよね?
はりついてぺったりくっついたのどからは、ひゅうひゅうと音がするだけで、神様への祈りが声にならない。
声に出なくても、届くかな。
お願いです、神様、じ愛の神のマナ様。
どうか、ぼくを父さんと母さんの側にむかえてください。
力の入らないうでで体をだきしめて、目を閉じた。
次に目が覚めたら、父さんと母さんがいてくれるはずだって、信じて。
すごく良いにおいで目が覚めた。
スープだ。
目を開けたのに前が見えない。
真っ暗の中で、そっと口に固いものが当てられて、口の中に温かさが広がる。
かわいた口の中がじんじんってしびれて、するりとのどを下りていったスープは、神様の食事なのかもしれない。
何度もスープを飲みこんだら、体が温かくなって、ねむってしまった。
目を覚ますたびに、温かいスープをだれかが飲ませてくれる。
それから二回スープを飲んで、やっと、ここが神様のみもとじゃないと気がついた。
どこかでニグティンガーレが鳴いている。
チーチキ、チーチク、夜だよ、と。
神様のみもとには夜がなくて、いつも春風がそよいでいて、そこにしかいない天の鳥が夢見るような歌を奏でてくれる、って学校に来た助祭様が教えてくれた。
だから、ここは……神様のみもとじゃない。
神様のいる場所に、夜を告げるニグティンガーレはいない。
ぼくは、父さんと母さんの所に行けなかったの?
そんなのひどいよ神様、ぼくはどんな悪いことをしたの?
父さんと母さんに会いたい。
お腹がふるえて、鼻のおくがツンと痛くなる。
すると、カリリと固いもので木をこすったような音がした。
「だれかいるの?」
「だれか、いる、ベスト、いる」
のどの奥でうなるような、男の人の低い声が、すごく近くで聞こえた。
ここがどこか分からないけれど、ずっと近くにいたってこと?
じゃあ、この人がぼくにスープを飲ませてくれた人?
不思議と、こわくなかった。
声は低くてうなるようで聞こえにくいし、片言の話し方だったのに。
「ベスト?」
「そう、ベスト、なまえ、ふょる、ふぉゆ……べスト」
「ベストさん?」
「さん、なに?」
低い声の主が、大人の男性のようだと思ったから、さんをつけてみたら、聞き返された。
始めは聞かれたことの意味が分からなかったけれど、男性はもう一度同じことをくりかえした。
「さん、なに?」
「ベストさん?」
「そう、なまえ、ベスト、さん、なに?」
名前に〝さん〟付けするのは、ふつうじゃないの?
近所の人だっておじさん、おばさんって呼ぶのに。
「……ええとね、さんは、名前につける呼び方で、大人の人に使うよ」
「ベスト、うん、ベストさん、なみだ、こまる、どこ、いたい?」
ベストと名乗った男の人の話し方は、すごくぎこちなくて、でも本当に心配してくれていると伝わってくる。
手のひらでこすったほっぺがぬれていて、ぼくは人前で泣いたことがはずかしくなった。
もう八才なのに、小さな子供みたいに泣いているところを見られた。
「どこ、いたい?」
「心」
「こころ、どこ?」
「ここ」
ぼくは指先で自分の胸を指さした。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
生贄として捧げられたら人外にぐちゃぐちゃにされた
キルキ
BL
生贄になった主人公が、正体不明の何かにめちゃくちゃにされ挙げ句、いっぱい愛してもらう話。こんなタイトルですがハピエンです。
人外✕人間
♡喘ぎな分、いつもより過激です。
以下注意
♡喘ぎ/淫語/直腸責め/快楽墜ち/輪姦/異種姦/複数プレイ/フェラ/二輪挿し/無理矢理要素あり
2024/01/31追記
本作品はキルキのオリジナル小説です。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
絶滅危惧種の俺様王子に婚約を突きつけられた小物ですが
古森きり
BL
前世、腐男子サラリーマンである俺、ホノカ・ルトソーは”女は王族だけ”という特殊な異世界『ゼブンス・デェ・フェ』に転生した。
女と結婚し、女と子どもを残せるのは伯爵家以上の男だけ。
平民と伯爵家以下の男は、同家格の男と結婚してうなじを噛まれた側が子宮を体内で生成して子どもを産むように進化する。
そんな常識を聞いた時は「は?」と宇宙猫になった。
いや、だって、そんなことある?
あぶれたモブの運命が過酷すぎん?
――言いたいことはたくさんあるが、どうせモブなので流れに身を任せようと思っていたところ王女殿下の誕生日お披露目パーティーで第二王子エルン殿下にキスされてしまい――!
BLoveさん、カクヨム、アルファポリス、小説家になろうに掲載。
オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う
hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。
それはビッチングによるものだった。
幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。
国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。
※不定期更新になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる