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今:花は求める

寝たふりをする木 1/3

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お久しぶりです、生きてます
春らしく鬱々と過ごしていたら、もう夏?!、と暑さに愕然としている木です

もっさりクマ系養蜂家×花蜜の供給源の人外美青年(雌雄同体、自覚のない異世界転生者)のつもり(^_^;)
雄しべと雌しべを備えているけれど、意識は男性に近いので男性体です

カントボーイも好きですが書くとなるとコレジャナイ
ε=ε=ε=ε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘
4話目以降は投稿不定です






   ・  ・
 

 すてきな夢を見ている。
 ずっと、この夢を見続けていたい。


 サンシェードを巻き上げる音と共に、かけ布団代わりの複葉越しでも室内が明るくなったのを感じた。
 目を閉じていてもまぶしかったので顔を背けて、ふわふわと心地良くまどろんでいたら「おーい」と声をかけられた。

 今日は休みだ。
 予定は入っていないから、久々にのんびりするつもりなんだ。
 いい夢を見ていた気がするから、もう少し眠っていたい。
 甘やかされている気分を味わいたかった。

「んー」

 起こさないでと訴えるように小さく唸って、仰向けだった体を横に倒すと、下敷きにしているロゼットが、柔らかく動きを受け止めてくれた。

「まだ寝る気か?」

 思った以上に近くで聞こえた声は、すぐそばまで彼が来ているからだろう。
 うん、と頷いてから手を伸ばしたら、指先に葉や花弁とは違う質感が触れた。

 これは彼の着ている服の手触りだ。
 ロゼットの脇に立っているのか。

「起きろよ、久々だから一緒に朝ごはんにしないか?」

 ちゃぷん、ちゃぽんと水の揺れる音がする。
 焼いたパンと肉の香ばしい匂いも。

 がたごとと音がして、彼が手に持っていたあれこれをロゼットの側にあるテーブルに置いたのだと気づく。

 頭部を覆う糸状の雄しべを、柔らかな手つきで撫でられた。
 力加減を間違えないようにと慎重に神妙に。
 彼の分厚い手のひらが気持ちよくて、頭部をゆっくりと傾けるようにしてほほを寄せた。

 彼に触れてもらえるたびに、人に似た姿になれて良かったと感じる。
 人の体温は熱いけれど、もっと撫でてもらいたい気持ちが伝わってほしい。

 でもな、いやだよ、起きないよ。
 むしろ一緒に寝ようよ。
 撫でられるだけでは物足りない。
 ぎゅーって抱きつかせてくれても、良いんだよ?
 彼の精で授精したい、できないけど。

 つい昨日までめちゃくちゃ忙しくて、ようやく一息つけるようになった。
 ひたすら作り続けたせいで花粉も花蜜もからっけつ。
 蜜と花粉を出せと撫で回されすぎたせいで、疲れてくたくた。

 繁忙期を乗り越えた後なんだから、ご褒美が欲しい。
 人肌の熱が欲しい、寂しいんだよ。
 最後に擬似授精セックスしたの、いつだっけ?

 精飲させてくれるだけでも良いのに、花蜜に味と匂いが移るからできない、なんて言って触らせてすらくれない。

 なんでこの身わたしは植物として生まれたのか。
 人の姿になれるのに、彼の子供を授かることはできないなんて。

 どこからか聞こえる鳥の歌声に薄く目を開けてみれば、目の奥を焼くほど明るい青空が見えた。
 巣箱の撤去をした後だから出入り口になる天窓は開けてないようだけれど、光合成したくてむずむずしちゃう。
 複葉が開いてしまいそうになるのを、意識して押さえ込んだ。

 網を張った換気窓が開けられているのか、温室内に風を感じる。
 温室の中がぽっかぽかになりすぎないように、と気を遣ってくれる優しさにときめいちゃうだろ。
 でもやだやだ、こんなに良い天気の日に健康的な休日を謳歌するなんて、普通すぎる。

 ほら、一緒にのんびりしよう?
 人は光合成できないと知ってるけど、ひなたぼっこならできるよ。
 いちゃつきたいんだよ、ねえ、良いでしょ。

 指先に触れる布をぎゅうと握りこむと、上の方から小さく息を吐く音がした。
 見なくても苦笑してる顔が思い浮かべられる。

 ごそごそ、と布が擦れる音が近くで聞こえる。
 ロゼットには体重がかけられていないけれど、服を捕まえているからすぐ側にいるはず。

「ほら、起きろー」

 つん、と温もりが唇に触れた。
 指先よりも太くて柔らかいけれど、唇よりも固くてはりのある温もり。
 ほのかに香る彼の体臭。

 ああ、彼の生殖器官おちんちんだ。

 これは釣り餌だ、と一瞬でわかったし、反応すれば手のひらの上で転がされてしまうと理解している。
 ちょっとしたいたずらのつもりだと言うことも知っている。
 でもそれでも、我慢できなかった。


 好きなんだもの。
 彼も、彼の生殖器官も、彼の生殖器官にキスしてあげることも。


 他人が苦手で真面目な彼が、いたずらのつもりでこんなことができる相手であれることが嬉しい。
 弱点をさらせるくらい気を許してくれている、ってことだから。

 ん、と鼻にかかった声をもらしながら弾力のある温もりに唇を寄せると、なぜかすでに先端が濡れていた。

 ……えっ?
 えーっと、なんでなにもしてないのに、もう先走ってんの?

 寝てる姿を見ていただけで興奮した……わけないよな?
 この温室が完成してから一緒に眠っているから寝姿は見慣れているし、ごく普通に就眠した複葉の中で寝ている姿に興奮するとは思えない。

 まあいいか、もらえるならくわえちゃおー、と唇を少し開いて先端に吸い付く。

 頭は持ち上げずに、目は閉じたまま。
 首から下は閉じた複葉の中に隠れている。
 あくまでゆっくりと寝ぼけている感じでやるのがポイントだ。
 起きているとばれていても、いきなりぱっくんちょは驚かせてしまうから。

「おい、まて、起きろよ、え?、ねぼけてんのか」

 あれ、起きてることに気付いてない?
 まあいいや、逃がさないぞー。
 そっちはいたずらのつもりでも、心の栄養不足で欲求不満の花に生殖器官を差し出したんだから、逃すものか。

 服の端を指先で握ったまま、ちゅ、ちゅと音を立てながら生殖器官の先端に吸い付く。
 ちろ、ちろっと舌の先で穴を撫でてやれば、じわりとしょっぱい味が滲むことが嬉しい。

 ひさしぶりすぎて、めちゃくちゃ美味い。
 これだけで授精しちゃいそう、人の精では無理だけど。
 彼との間に実を結ぶことができたら良いのに。

 複葉の中でもじもじと腰を揺らしながら、生殖器官の先端を舌先で可愛がり続ける。

 もっといっぱいおしゃぶりしたい。
 舐めるだけでは物足りなくなってきて、丸く膨らんだ先端を包み込むようにねっとりと咥え込むと、びくん、と生殖器官が震えた。

 先端を舌で覆うように押し付けて、唇で先端を揉み込む。
 消化液唾液を口腔内に溜めて、わざとぐちゅぐちゅと音を立てると気持ちが盛り上がってきた。

 根元までぐっぽり咥えこみたい。
 寝ぼけてますってふりして根元までいったらだめかな。

 どうしようかなと考えながら、先端をくにくにとほじくる。
 竿は固くなるのに、ここはぷにぷに。
 唇ではさんで揉み込むと、弾力があってすごく楽しい。

 頭の上から荒くなった呼吸が聞こえてくる。
 見なくても分かる。
 腰を振りたいのを我慢して、握った拳を震わせているんだろう。

 根元まで突っ込むと苦しがると思って我慢してくれてるんだよな。
 初めて咥えた時に、下手すぎて口から消化液をこぼしてしまったことが、むせて苦しんでいたように見えたらしい。

 見た目は人の頭部にそっくりだけど、人のように肺呼吸してないから奥を突かれても苦しくない。
 何度も言ったのに、どうも信じてないみたいなんだよな。
 寝ぼけてる(ふり)から後でいくらでもごまかせそうなもんなのに、強引にしない優しいところも好きだから良いんだけど。

 微細なしわが伸びてぷりっとハリの出た先端を唇ではむはむしながら、心地よさにうっとりする。

 動物である人の生殖器官は熱い。
 植物であるこの身が高温障害を起こして枯れてしまいそうに熱い。
 でも、その熱を受け止めるのが、すごく好きだ。

 
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