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第六話
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マックスの機嫌は最悪だった。
週末になるとすぐに寮の談話室に呼びだされる。
テーブルを叩くいつもの癖はすでに威圧を表していた。
部屋に入るなりドンと鈍い音が響いて身をふるわせる。握った拳を何度かテーブルに打ちつけ、マックスはイライラと身体を揺すった。
「ロベルト殿下と親しいようじゃないか」
「親しいというほどでは……何度か言葉をかわしたくらいです」
「ふん……どうだか。内心では舞いあがっているんじゃないか? こんなチャンスはめったにないからな。まさか学院に入ったのはそれが目当てか?」
「そんなことはありません!」
ついカッとなって言い返せば、マックスは瞠目した。
それから驚いた自分に腹が立ったのか、視線はさらに剣呑なものになる。
怒りをたたえたまま、マックスは唇を無理やり笑みの形に歪めた。どうしてもわたしを貶めたい、そんな欲求が見え隠れする表情だった。
いつのまに二人の関係はこんなにねじくれてしまったのだろう。
マックスが一歩前に出る。思わずあとじさると、優位を確信したマックスの笑みがさらにふかいものになる。
「だいたいお前、自分の姿を鏡で見たことがあるのか? その流行遅れのドレス! 野暮ったい化粧! 貧弱な装飾品!」
わたしを頭のてっぺんからスカートの裾まで指さし、マックスは怒鳴った。
談話室の外にいた人々が何事かとふりかえるのが窓越しに見えた。
「侯爵夫人でも分不相応なのに、妃になんかなれるわけがないだろう!!」
答えを返すことはできなかった。
これ以上聞いていることもできなくて、わたしは談話室を飛びだした。背後から聞こえる「おい!!」という叫びをふりきって、女子棟に駆け戻る。
部屋に入ると、わたしの青ざめた顔にばあやが小さな悲鳴をあげた。
小さなころからずっと私の面倒を見てくれて、今回の入学でも屋敷からついてきてくれたばあや。
マックスの言ったことはやっぱり正しい。
入学のためにドレスや宝石を売り払ってしまったわたしの手元には、値のつかなかったものしか残されていなくて。
友人をつくろうとしなかったわたしにはお化粧の話題をする相手もいなくて。
毎朝わたしの身なりを整え、お化粧をしてくれるのはばあやだ。
学院で見かけたかわいらしい同級生のお化粧をばあやに説明しようとしたけれど、わたしにすらよくわからないものがばあやに伝わるはずはなかった。
眉や目元はもっとくっきりと強調されていた気がする。でもわたしがやろうとしてもお化けのような痛々しいお化粧にしかならなくて、結局はいつもどおりの格好になった。
週が明けて、変わり映えのしない装いで授業に出たわたしは、はじめて図書館に行かなかった。
その次の日も次の日も、わたしは授業が終わるとすぐに寮に戻り、ぼんやりとすごした。
マックスに会いたくなかったというのもある。
でもそれ以上に、ロベルト様に会うのが怖かった。
授業の終わりを知らせる鐘が鳴る。
そそくさとテキストを片付けると、わたしは立ちあがった。
教室から校舎を出て、中庭を抜けた先が寮だ。目立たぬよううつむいて、走るのははしたないので早足で人気のない道を行く。
――はずだったのに。
突然、教室の中を歓声と騒めきが吹き抜けた。
おまけにそれらの声の中に、自分の名が囁かれている。
何事かと顔をあげて。
わたしは目を見開いた。
「ロベルト様……」
「少し、話ができるかい?」
そこにいたのはロベルト様。
生徒たちの好奇の目を避けるように、ロベルト様はすぐに歩きだしてしまう。もとより何か言えるはずのないわたしは小走りに駆け寄るとあとについて歩いた。
避けていたのに。
わざわざ教室を調べて、会いにきてくださったのだ。
結局ご迷惑をかけてしまったと、胸が痛む。
「ごめん、俺が焚きつけたせいだ」
人気のない場所までくると、ふりむかないまま、ロベルト様は告げた。
あのときの会話を言っているのだろう。
謝らなければならないのはわたしたちのほうなのに。
「いいえ……わたしがきちんとマックスに向き合わなかったせいです」
それはマックスについて考えて、私が出した結論だった。
ここまで関係がこじれてしまった理由。
幼いころからあの調子で、反論するだけ無駄なのだと理解したわたしは、いつも口をつぐんでいた。マックスから話しかけられなければ、自分から話しかけることもなかった。
いつしか、どんなに手酷い言葉を投げつけられても動じなくなっていた。それが余計に彼を怒らせていたのかもしれない。
侯爵家を継ぐと決まった日、驚くほどの鋭い言葉を向けてきたのは、わたしに対する不満を積み重ねた結果だったのだろう。
そして、わたしも。
凍りついていたはずの感情がいまになって揺さぶられているのは、ロベルト様に出会ったからだ。
マックスが原因ではない。それもまた彼のプライドを刺激するのだ。
「今度は何を言われたの?」
「いえ……」
そういえばロベルト様はまるでわたしの心を読んでいるようだ。
避けていた原因がマックスにあると、そしてマックスの爆発はロベルト様によって引き起こされたものだとわかっている。
「当ててみせようか。そのドレスや化粧だろう?」
「!」
思わず息をのんだわたしに、ロベルト様はうなずいた。
「彼の誹謗はことごとく俺がいいなと思った部分を突いてくるからね。感性は似てるんだろうなぁ」
金髪をかきまわしながらため息をつくロベルト様。
わたしはやっぱり何も言えない。
聞き違いでなければいま、ロベルト様は、わたしのこの古めかしい姿を褒めてくださったのだろうか。
「そのドレス、先王時代に流行したものだろう? 母上がいつも着ていらしてね、なつかしくて……それに襟や袖の部分はきちんと今風に修繕されているじゃないか。お化粧だって、おちついた、たおやかな女性のものだ」
そう。
このドレスは、お母様が思い出のドレスを手ずから直し、刺繍を入れてくださったもの。
お化粧は、お嬢様はお肌が綺麗ですから余計な派手さはいりませんと、ばあやがほどこしてくれたもの。
ロベルト様はいつも、本当に心を読んでいるかのように、わたしの欲しい言葉を贈ってくれる。
「ありがとうございます……」
「うん」
涙をにじませるわたしを前に、ロベルト様はにこりと笑ってポケットから書状をとりだした。
押されているのはよく知る刻印。
ターナー家のものだ。
「これは……?」
「時間はかかってしまったけど、準備は整った。君には怒られるかもしれないけどね」
ニッと、悪戯っ子のような笑みを浮かべて、ロベルト様は言った。
「婚約者様を見返してやろうじゃないか」
週末になるとすぐに寮の談話室に呼びだされる。
テーブルを叩くいつもの癖はすでに威圧を表していた。
部屋に入るなりドンと鈍い音が響いて身をふるわせる。握った拳を何度かテーブルに打ちつけ、マックスはイライラと身体を揺すった。
「ロベルト殿下と親しいようじゃないか」
「親しいというほどでは……何度か言葉をかわしたくらいです」
「ふん……どうだか。内心では舞いあがっているんじゃないか? こんなチャンスはめったにないからな。まさか学院に入ったのはそれが目当てか?」
「そんなことはありません!」
ついカッとなって言い返せば、マックスは瞠目した。
それから驚いた自分に腹が立ったのか、視線はさらに剣呑なものになる。
怒りをたたえたまま、マックスは唇を無理やり笑みの形に歪めた。どうしてもわたしを貶めたい、そんな欲求が見え隠れする表情だった。
いつのまに二人の関係はこんなにねじくれてしまったのだろう。
マックスが一歩前に出る。思わずあとじさると、優位を確信したマックスの笑みがさらにふかいものになる。
「だいたいお前、自分の姿を鏡で見たことがあるのか? その流行遅れのドレス! 野暮ったい化粧! 貧弱な装飾品!」
わたしを頭のてっぺんからスカートの裾まで指さし、マックスは怒鳴った。
談話室の外にいた人々が何事かとふりかえるのが窓越しに見えた。
「侯爵夫人でも分不相応なのに、妃になんかなれるわけがないだろう!!」
答えを返すことはできなかった。
これ以上聞いていることもできなくて、わたしは談話室を飛びだした。背後から聞こえる「おい!!」という叫びをふりきって、女子棟に駆け戻る。
部屋に入ると、わたしの青ざめた顔にばあやが小さな悲鳴をあげた。
小さなころからずっと私の面倒を見てくれて、今回の入学でも屋敷からついてきてくれたばあや。
マックスの言ったことはやっぱり正しい。
入学のためにドレスや宝石を売り払ってしまったわたしの手元には、値のつかなかったものしか残されていなくて。
友人をつくろうとしなかったわたしにはお化粧の話題をする相手もいなくて。
毎朝わたしの身なりを整え、お化粧をしてくれるのはばあやだ。
学院で見かけたかわいらしい同級生のお化粧をばあやに説明しようとしたけれど、わたしにすらよくわからないものがばあやに伝わるはずはなかった。
眉や目元はもっとくっきりと強調されていた気がする。でもわたしがやろうとしてもお化けのような痛々しいお化粧にしかならなくて、結局はいつもどおりの格好になった。
週が明けて、変わり映えのしない装いで授業に出たわたしは、はじめて図書館に行かなかった。
その次の日も次の日も、わたしは授業が終わるとすぐに寮に戻り、ぼんやりとすごした。
マックスに会いたくなかったというのもある。
でもそれ以上に、ロベルト様に会うのが怖かった。
授業の終わりを知らせる鐘が鳴る。
そそくさとテキストを片付けると、わたしは立ちあがった。
教室から校舎を出て、中庭を抜けた先が寮だ。目立たぬよううつむいて、走るのははしたないので早足で人気のない道を行く。
――はずだったのに。
突然、教室の中を歓声と騒めきが吹き抜けた。
おまけにそれらの声の中に、自分の名が囁かれている。
何事かと顔をあげて。
わたしは目を見開いた。
「ロベルト様……」
「少し、話ができるかい?」
そこにいたのはロベルト様。
生徒たちの好奇の目を避けるように、ロベルト様はすぐに歩きだしてしまう。もとより何か言えるはずのないわたしは小走りに駆け寄るとあとについて歩いた。
避けていたのに。
わざわざ教室を調べて、会いにきてくださったのだ。
結局ご迷惑をかけてしまったと、胸が痛む。
「ごめん、俺が焚きつけたせいだ」
人気のない場所までくると、ふりむかないまま、ロベルト様は告げた。
あのときの会話を言っているのだろう。
謝らなければならないのはわたしたちのほうなのに。
「いいえ……わたしがきちんとマックスに向き合わなかったせいです」
それはマックスについて考えて、私が出した結論だった。
ここまで関係がこじれてしまった理由。
幼いころからあの調子で、反論するだけ無駄なのだと理解したわたしは、いつも口をつぐんでいた。マックスから話しかけられなければ、自分から話しかけることもなかった。
いつしか、どんなに手酷い言葉を投げつけられても動じなくなっていた。それが余計に彼を怒らせていたのかもしれない。
侯爵家を継ぐと決まった日、驚くほどの鋭い言葉を向けてきたのは、わたしに対する不満を積み重ねた結果だったのだろう。
そして、わたしも。
凍りついていたはずの感情がいまになって揺さぶられているのは、ロベルト様に出会ったからだ。
マックスが原因ではない。それもまた彼のプライドを刺激するのだ。
「今度は何を言われたの?」
「いえ……」
そういえばロベルト様はまるでわたしの心を読んでいるようだ。
避けていた原因がマックスにあると、そしてマックスの爆発はロベルト様によって引き起こされたものだとわかっている。
「当ててみせようか。そのドレスや化粧だろう?」
「!」
思わず息をのんだわたしに、ロベルト様はうなずいた。
「彼の誹謗はことごとく俺がいいなと思った部分を突いてくるからね。感性は似てるんだろうなぁ」
金髪をかきまわしながらため息をつくロベルト様。
わたしはやっぱり何も言えない。
聞き違いでなければいま、ロベルト様は、わたしのこの古めかしい姿を褒めてくださったのだろうか。
「そのドレス、先王時代に流行したものだろう? 母上がいつも着ていらしてね、なつかしくて……それに襟や袖の部分はきちんと今風に修繕されているじゃないか。お化粧だって、おちついた、たおやかな女性のものだ」
そう。
このドレスは、お母様が思い出のドレスを手ずから直し、刺繍を入れてくださったもの。
お化粧は、お嬢様はお肌が綺麗ですから余計な派手さはいりませんと、ばあやがほどこしてくれたもの。
ロベルト様はいつも、本当に心を読んでいるかのように、わたしの欲しい言葉を贈ってくれる。
「ありがとうございます……」
「うん」
涙をにじませるわたしを前に、ロベルト様はにこりと笑ってポケットから書状をとりだした。
押されているのはよく知る刻印。
ターナー家のものだ。
「これは……?」
「時間はかかってしまったけど、準備は整った。君には怒られるかもしれないけどね」
ニッと、悪戯っ子のような笑みを浮かべて、ロベルト様は言った。
「婚約者様を見返してやろうじゃないか」
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