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秘密の刻
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※鐘崎&紫月が想いを告げ合う前の両片想いの話です。
それは鐘崎と紫月が互いの気持ちを言葉に出して打ち明け合うずっと以前のことだった。
二人が想いを通わせたのは二十七歳の暮れである。それまでは互いに互いが好きだということは何となく分かっていたものの、どちらからもはっきりと告げることなく過ごしていたのである。
頃は春まだ浅い、花冷えの午後だった。実家の一之宮道場で午前中の稽古手伝いを終えた紫月は、昼食時にも作ったお好み焼きを再度焼いて届けようと鐘崎の元を訪ねた。
「今からなら三時のおやつにちょうどいいべ」
鐘崎は甘い物を好んでは食べない。休憩時間にはブラックのコーヒーや緑茶などは口にするが、甘味大魔王の自分と違ってクッキーやら饅頭といった茶菓子には殆ど手をつけないのだ。
そんな彼の小腹に納めるにはお好み焼きなどが打ってつけだ。焼き立てで、まだホカホカと湯気の立っているそれを大事そうにパックに詰めては、組事務所へと走った。
「紫月さん! いらっしゃいませ」
組最奥の応接室で幹部の清水剛が出迎えてくれる。この頃はまだ鐘崎姓にもなっていない為、名前呼びである。
「剛ちゃん、こんちゃ! 邪魔するぜぇ」
紫月は清水や源次郎らの分のお好み焼きを彼に手渡すと、
「遼は? 部屋の方か?」
事務所に鐘崎の姿が見えなかったのでそう訊いた。
「ええ。今日は珍しく用事が入っていないもので。若は昼飯の後、お邸の方へ引き上げられましたよ」
自室にいるだろうからと微笑む。
「おう! そっか。ンじゃ、ちょっくら行ってくらぁ」
「ええ、ごゆっくり」
清水に手を振り、鐘崎の分のお好み焼きを持って住まいの方へと向かう。組事務所と住居の棟は渡り廊下で繋がっているからすぐだ。
「遼ぉー、いるかぁ?」
自室に鍵はかかっておらず、勝手知ったる我が家のごとく扉を押し開けたのだが、昼間だというのに遮光カーテンが引かれていて、しかも灯りも点いておらず真っ暗闇だった。
出掛けたのだろうか――一瞬そう思ったが、何やらくぐもった声が小さく漏れ出していて、暗闇の中で時折微かにうごめく人の気配が感じられた。
(もしか具合でも悪ィのか?)
紫月は焦って、咄嗟に手にしていたお好み焼きを廊下の飾り台の上へと置き、鐘崎の様子を見んと部屋へ踏み入った。
ところが――である。
「……ッ、は……ぁ……クッ――!」
妙に艶かしいような低い声が断続的に漏れ聞こえてきて、思わずビクりと歩をとめた。
次第に目が暗さに慣れてくれば、ぼんやりとうごめくシルエットが広い部屋の中央――ソファの上で小刻みに揺れている。肩が上下し、その動きが強く早くなるにつれて、声もまた大きさを増していく――。
何をしているのか――など聞かずともすぐに分かった。
(うわ……やっべ! まさかマスベの最中だってか……?)
見てはいけない――とまでは言わないが、鐘崎からすればあまり知られたくはないお取り込み中なのは確かだろう。そう、つまりは自慰の真っ只中に訪ねてしまったというわけらしい。
(やっべえ……。こいつぁ……いくら何でも声掛けるわけにゃいかねえべ)
いくら幼い頃から遠慮のない間柄とはいえ、さすがに自慰の最中に不意打ちは気まずいだろう。そう思った紫月は、忍び足で部屋を後にせんとそっと後退りした。
鐘崎はといえば、コトに夢中でまったく気がついていない様子だ。そろそろクライマックスに近いのか、くぐもっていた嬌声も、雄を扱く手の動きもどんどんと激しさを増していく。
見てはいけない、いかに何でも失礼だ、頭では分かっているのだが、興味はそれを勝るか――無意識に足が止まってしまう。
早く退散しなければと思う反面、もう少し見ていたい気もして紫月は暗闇の中で染まった頬を押さえつつ、瞳をパチパチとさせてしまった。
(くっそぅ……暗視センサーでもありゃあなぁ。もちっとはっきり見えんだけっどもが……)
うーぬぬぬ、と目ん玉をひん剥く勢いでついつい凝視してしまう。
「……く……っは、紫……月……!」
ソファの上では闇の中で天高く仰ぎながらのけぞる鐘崎の逞しい肢体がシルエットとなって果てたようだ。
その瞬間、遮光カーテンの隙間からわずかに漏れていた細い陽の光が鐘崎の手に握られた冊子のような物を照らし出した。紫色のカバーがついたタブレット大の冊子だ。
ふう――と大きな溜め息と共にソファから立ち上がるシルエット。慌てて廊下へと飛び出し、お好み焼きを置き忘れたまま清水のいる事務所の棟へと全力疾走した。
◇ ◇ ◇
「おや、紫月さん。随分早いお帰りで。若はいらっしゃいませんでしたか?」
清水が事務の手を止めて不思議顔を向けてよこす。
「や、あの……いや、遼はいた! つか、いたと思うけど……その、ちょうどウチから電話きちゃってさ……! その……えっと、なんかそう! 稽古な、稽古! ご、午後の稽古が急に入って、す、すぐ帰って来いって親父が……」
そんなわけなんで俺はこれで――! と言い残し、紫月は慌てたように組を後にした。
「紫月さん……? あの、お気をつけて!」
清水はワケが分からず瞳をパチクリとさせながら見送った。
道場までは歩いてすぐだが、そのすぐすら猛ダッシュの勢いで紫月は足をもつれさせながら走っていた。
(やっべえ……マジやっべ! えれえモン見ちまった……。つか、ふ……ぐふふふ)
焦る傍ら、何故か顔の筋肉が自然とゆるんできては、意思とは裏腹に瞳がカマボコ型に弧を描いていくような感覚に見舞われる。
(やべえ……顔が勝手にニヤけちまう……。こんなん誰かに見られたら変質者と間違えられっぞ……!)
パンパンッと両手で頬を叩きながらシャキッとせんと鼻息を荒くする。
(けど、あの紫の本……あれ、ぜってーオカズだよな? 遼のやつ、いったいどんなの見ながらシコってんだべ)
俄然興味が湧いてしまう。
道場に帰ると、父の飛燕もまた、えらく早かったなと不思議顔をしてよこした。
「なんだ、遼二坊はいなかったのか?」
「うん、いた……。いや、いなか……いや、いたけどいなかったつか……」
「はぁ?」
ワケが分からんとばかりにポカンと口を開けた父を、愛想笑いでごまかす紫月であった。
一方、鐘崎の方はといえば廊下に出たところでどこからか旨そうな匂いがしているのに気付いては、こちらもまた不思議顔で首を傾げていた。
「お好み焼き……? もしかして紫月のヤツか?」
この棟まで入って来られる人間は限られている。その上、いかにも手作りといったお好み焼きとくれば紫月しかいないだろう。それを手に組事務所へ向かえば、ちょうど清水らも三時の休憩で同じお好み焼きを広げていたところだった。
「若! お疲れ様です! 今しがた紫月さんがいらして我々にまでほら、これを――」
お好み焼きをもらったことの礼と同時に『若はお会いになりませんでしたか?』と聞かれる。
「いや――俺は会ってねえが」
「そうでしたか。何でも若のお部屋へ向かう途中で道場の親父殿から至急帰って来るようにとお電話があったそうで。急に稽古が入ったとかで慌てて帰られましたが――」
「…………そうか」
「今、お茶をお淹れしますね。たいへん美味しいお好み焼きで!」
紫月さんは本当に料理がお上手ですねと言いながら清水が茶の支度をしてくれている。
「ああ、すまん……」
と言って座りながらも眉根が寄ってしまう。
(まさか――な。まさかあいつ……)
アレを見たってんじゃねえのか――? と、次第に心臓がバクバクと加速する。
(いや、道場の親父さんから電話があったってことだし、それで急いで帰っただけだろう……)
疑心暗鬼になる必要はない。鐘崎はそう自分に言い聞かせながらも、えらくそわそわとしたまま三時のティータイムを終えたのだった。
その後、スマートフォンを取り出してお礼方々紫月に宛ててメッセージを打った。
どうせ仕事も入っていない午後だ。会いにいくことも、はたまた電話で直接話すこともできたのだが、万が一アレを見られていたのではと思うと何を話していいやら言葉に詰まりそうだ。
こういう時にメッセージ機能は有り難い。
旨かった。ご馳走さん!
せっかく来てくれたのに会わずに帰っちまったようだが――また寄ってくれ。
とにかくは余分なことには触れずにお礼の短文に留めておく。しばしの後、明るい絵文字付きのメッセージが返ってきて、鐘崎はとホッと胸を撫で下ろすこととなった。
悪ィ!🙏
お前ン部屋に寄ろうと思ったんだけど、親父がめっさ急用だって電話してきてさ📞
おめえとはいつでも会えっからと思って、とりま帰った💨
お好み焼き旨かったべ?
食ってくれてサンキュなぁ😘
いつもと変わりのない明るい文面だ。それを見つめながら、鐘崎は愛しげに瞳を細めるのだった。
◇ ◇ ◇
その数日後――鐘崎の部屋を訪れた紫月は、何ともそわそわと落ち着きのなく部屋の隅にある本棚に気を取られていた。
(紫の本、紫の本、紫の……おわッ、あった! あれだ……)
「紫月、ちょっと待ってろ。おめえの好きなケーキをな、忠さんに焼いてもらってんだ。茶淹れてくっから」
忠さんというのは鐘崎組の厨房を預かってくれている腕のいい料理人のことだ。今日は紫月が遊びに来ると知って、鐘崎が頼んでおいてくれたのだそうだ。
彼が部屋を出て行くのを見送りながら、紫月は急いで本棚へと駆け寄った。
(これか――! 遼のオカズ……覗き見っつのは気が引けっけど、ちびっとだけ……な)
悪いと思う気持ちよりも興味の方が先立ってならない。想像するにグラマーな女のグラビアか何かだろうが、いったいどんなタイプのものを見ているのか気になってしまうわけだ。
すまん! と手を合わせ、紫のカバーが掛かった冊子を抜き取ってパラりと中を開いた。想像とは裏腹に、それは固い台紙付きのアルバムだった。
「ンだよ、エロ雑誌じゃねんかよ……って……! ッゲ! ンだ、これ……」
中身は写真だった。しかもすべて自分――紫月――のものだ。
「やややや……ちょい待ちッ! こんなん……いつの間に……」
写っているショットはどれも覚えがあれど、中には見覚えのない寝顔らしきものも混じっている。背景からしてこの部屋の中なのは間違いないが、そういえば一緒にテレビを観ている最中などに寝入ってしまったこともままある。その時に撮られたのだろう。
(あんにゃろ……隠し撮りしやがったなー!)
そうは思えど、アルバム一杯に自分の写真だけというのを目にしながらフッと頬がゆるんでしまう。
(こんな……俺ン写真ばっか一冊にまとめてるって……。そういやあいつ、イく時に俺ン名前呼んでたっけ……)
つまり自分を想像しながらイったということだ。
(遼のやつぅ……お、俺をオカズにしながらヌいたってのか?)
「あぅあー! いったいどんな想像よ……」
激しく求め合うようなラブラブなシチュエーションか、それとも案外――
「無理矢理モノだったりして……」
鐘崎に服をひん剥かれたり、あるいは腕を縛られたりして犯される――そんな妄想がブワッと頭をよぎり、瞬時に頬が熱を持つ。
「ぐ……ふふふふ。やっべえー……」
思わず地団駄を踏みながら踊り出したくなるほどに気持ちが高揚する。
(まあなぁ、マスかく時のオカズって案外ありきたりのシチュよか激しい妄想が多いっていうしな)
あの鐘崎も自分を組み敷く想像をしながら高みに昇っているのかと思うだけでみるみると頬が染まってしまう。と同時に、嬉しくて躍るような気持ちが沸々とし、紫月は思い切り瞳を細めてしまった。
「バッカ、遼……」
廊下の端からはカタカタと盆に乗せられたティーカップの音が近づいてくる。鐘崎が茶を淹れて戻ってきたのだ。
紫月は急いで紫のそれを本棚へと戻すと、何食わぬ顔でソファに寝転んだ。
「待たせたな。ほら」
鐘崎の逞しい手にはおおよそ似合わない盆に乗せられたティーカップやケーキ――。だが、いつも訪れる度にこうして自ら茶を淹れてくれるその気持ちが嬉しくてならなかった。
「うわ! 美味そ!」
パウンドケーキに生クリームがたっぷりと添えられている。
「好きなだけ食え」
「ん――。あのさ……遼、いつもその……サンキュな!」
「なんだ、急に」
ケーキの皿を差し出しながら笑う。
「や、おめえ直々に茶ー淹れてもらうなんてさ、俺って幸せモンだなって」
えへへと鼻を掻きながら照れ臭そうに笑う。そんな紫月の頬を更に染めるようなことを、目の前の男はサラリと言ってのけた。
「そりゃお前――愛だろ?」
「あー……いって……お前……」
思わず鯉のように口をパクパクとさせてしまう。
「いいから食え。忠さんの自信作だそうだぞ」
忠さんというのはここ鐘崎組の厨房を預かってくれている料理人だ。二人が生まれる以前からずっと勤めてくれていて、今ではその忠さんの息子も一緒に腕を奮ってくれている。親父さんの中吉《ちゅうきち》は生粋の板さんだが、息子の忠吾《ちゅうご》は料理の他にも菓子作りが得意のようで、甘い物好きの紫月の為にといつもこうしてオリジナルスイーツを作っておいてくれるのだ。
「こっちもそろそろいい頃合いだな――」
紅茶を注いでくれながら笑うその笑顔が――仕草がとびきり穏やかで優しげで、堪らない思いにさせられた。今にも胸がキュウっと摘まれてしまいそうなくらいだ。
「紫月、こっち向け」
大口を開けてケーキにかぶり付いたところでスマートフォンを向けられて、紫月は思わず喉に詰まらせそうになった。
カシャっとシャッターを切りながら目の前の男はえらく嬉しそうだ。
「ンだよ、不意打ちとかよー……」
「すまん。だがこういう何気ない顔がまたいいモンだ」
「や、良かぁねえべ! ただ単に間抜けなヘン顔じゃねーか」
「ヘン顔がいいんだ。俺の大事なコレクションにする」
「コレクションって……おめえ、将来何かの時に俺の弱みにでもするつもりだな?」
二人はまだ想いを告げ合ってはいない為、そんな切り返しでごまかすわけなのだが、心の中では互いへの想いがあふれているのを肌で感じる。こんな瞬間もまた内心幸せに思える二人だった。
きっと今撮った写真も、例の紫のアルバムに収められるのだろう。
(そんでもって、またそれ見ながらシコるってね……)
想像しただけでくすぐったいような思いがあふれ出る。
「遼――」
トントンと肩を叩いては、
「お返しだ!」
カシャっと不意打ちでシャッターを切る。
「おい……てめ――!」
「いーべ? こいつぁ俺んコレクションにすんの!」
画面の中の彼は不意打ちに驚いたような表情ながら、作っていない感じが素朴だ。だが、元が男前だけにそんなちょっと間の抜けたような表情も色気があって、眺めているとドキドキとしてしまいそうだ。
「へへ! 最高ー!」
(俺もコレで抜けそうだ……!)
まるで宝物のようにスマートフォンごと抱き締めてはソファの上で転げる無邪気な様を見つめる鐘崎の瞳もまた、そこはかとなく愛しげに細められる――そんな幸せな午後がゆっくりと流れていく。
このあたたかで愛情にあふれる想いを告げ合うのは、この日から数年も先のことだった。
秘密の刻 - FIN -
それは鐘崎と紫月が互いの気持ちを言葉に出して打ち明け合うずっと以前のことだった。
二人が想いを通わせたのは二十七歳の暮れである。それまでは互いに互いが好きだということは何となく分かっていたものの、どちらからもはっきりと告げることなく過ごしていたのである。
頃は春まだ浅い、花冷えの午後だった。実家の一之宮道場で午前中の稽古手伝いを終えた紫月は、昼食時にも作ったお好み焼きを再度焼いて届けようと鐘崎の元を訪ねた。
「今からなら三時のおやつにちょうどいいべ」
鐘崎は甘い物を好んでは食べない。休憩時間にはブラックのコーヒーや緑茶などは口にするが、甘味大魔王の自分と違ってクッキーやら饅頭といった茶菓子には殆ど手をつけないのだ。
そんな彼の小腹に納めるにはお好み焼きなどが打ってつけだ。焼き立てで、まだホカホカと湯気の立っているそれを大事そうにパックに詰めては、組事務所へと走った。
「紫月さん! いらっしゃいませ」
組最奥の応接室で幹部の清水剛が出迎えてくれる。この頃はまだ鐘崎姓にもなっていない為、名前呼びである。
「剛ちゃん、こんちゃ! 邪魔するぜぇ」
紫月は清水や源次郎らの分のお好み焼きを彼に手渡すと、
「遼は? 部屋の方か?」
事務所に鐘崎の姿が見えなかったのでそう訊いた。
「ええ。今日は珍しく用事が入っていないもので。若は昼飯の後、お邸の方へ引き上げられましたよ」
自室にいるだろうからと微笑む。
「おう! そっか。ンじゃ、ちょっくら行ってくらぁ」
「ええ、ごゆっくり」
清水に手を振り、鐘崎の分のお好み焼きを持って住まいの方へと向かう。組事務所と住居の棟は渡り廊下で繋がっているからすぐだ。
「遼ぉー、いるかぁ?」
自室に鍵はかかっておらず、勝手知ったる我が家のごとく扉を押し開けたのだが、昼間だというのに遮光カーテンが引かれていて、しかも灯りも点いておらず真っ暗闇だった。
出掛けたのだろうか――一瞬そう思ったが、何やらくぐもった声が小さく漏れ出していて、暗闇の中で時折微かにうごめく人の気配が感じられた。
(もしか具合でも悪ィのか?)
紫月は焦って、咄嗟に手にしていたお好み焼きを廊下の飾り台の上へと置き、鐘崎の様子を見んと部屋へ踏み入った。
ところが――である。
「……ッ、は……ぁ……クッ――!」
妙に艶かしいような低い声が断続的に漏れ聞こえてきて、思わずビクりと歩をとめた。
次第に目が暗さに慣れてくれば、ぼんやりとうごめくシルエットが広い部屋の中央――ソファの上で小刻みに揺れている。肩が上下し、その動きが強く早くなるにつれて、声もまた大きさを増していく――。
何をしているのか――など聞かずともすぐに分かった。
(うわ……やっべ! まさかマスベの最中だってか……?)
見てはいけない――とまでは言わないが、鐘崎からすればあまり知られたくはないお取り込み中なのは確かだろう。そう、つまりは自慰の真っ只中に訪ねてしまったというわけらしい。
(やっべえ……。こいつぁ……いくら何でも声掛けるわけにゃいかねえべ)
いくら幼い頃から遠慮のない間柄とはいえ、さすがに自慰の最中に不意打ちは気まずいだろう。そう思った紫月は、忍び足で部屋を後にせんとそっと後退りした。
鐘崎はといえば、コトに夢中でまったく気がついていない様子だ。そろそろクライマックスに近いのか、くぐもっていた嬌声も、雄を扱く手の動きもどんどんと激しさを増していく。
見てはいけない、いかに何でも失礼だ、頭では分かっているのだが、興味はそれを勝るか――無意識に足が止まってしまう。
早く退散しなければと思う反面、もう少し見ていたい気もして紫月は暗闇の中で染まった頬を押さえつつ、瞳をパチパチとさせてしまった。
(くっそぅ……暗視センサーでもありゃあなぁ。もちっとはっきり見えんだけっどもが……)
うーぬぬぬ、と目ん玉をひん剥く勢いでついつい凝視してしまう。
「……く……っは、紫……月……!」
ソファの上では闇の中で天高く仰ぎながらのけぞる鐘崎の逞しい肢体がシルエットとなって果てたようだ。
その瞬間、遮光カーテンの隙間からわずかに漏れていた細い陽の光が鐘崎の手に握られた冊子のような物を照らし出した。紫色のカバーがついたタブレット大の冊子だ。
ふう――と大きな溜め息と共にソファから立ち上がるシルエット。慌てて廊下へと飛び出し、お好み焼きを置き忘れたまま清水のいる事務所の棟へと全力疾走した。
◇ ◇ ◇
「おや、紫月さん。随分早いお帰りで。若はいらっしゃいませんでしたか?」
清水が事務の手を止めて不思議顔を向けてよこす。
「や、あの……いや、遼はいた! つか、いたと思うけど……その、ちょうどウチから電話きちゃってさ……! その……えっと、なんかそう! 稽古な、稽古! ご、午後の稽古が急に入って、す、すぐ帰って来いって親父が……」
そんなわけなんで俺はこれで――! と言い残し、紫月は慌てたように組を後にした。
「紫月さん……? あの、お気をつけて!」
清水はワケが分からず瞳をパチクリとさせながら見送った。
道場までは歩いてすぐだが、そのすぐすら猛ダッシュの勢いで紫月は足をもつれさせながら走っていた。
(やっべえ……マジやっべ! えれえモン見ちまった……。つか、ふ……ぐふふふ)
焦る傍ら、何故か顔の筋肉が自然とゆるんできては、意思とは裏腹に瞳がカマボコ型に弧を描いていくような感覚に見舞われる。
(やべえ……顔が勝手にニヤけちまう……。こんなん誰かに見られたら変質者と間違えられっぞ……!)
パンパンッと両手で頬を叩きながらシャキッとせんと鼻息を荒くする。
(けど、あの紫の本……あれ、ぜってーオカズだよな? 遼のやつ、いったいどんなの見ながらシコってんだべ)
俄然興味が湧いてしまう。
道場に帰ると、父の飛燕もまた、えらく早かったなと不思議顔をしてよこした。
「なんだ、遼二坊はいなかったのか?」
「うん、いた……。いや、いなか……いや、いたけどいなかったつか……」
「はぁ?」
ワケが分からんとばかりにポカンと口を開けた父を、愛想笑いでごまかす紫月であった。
一方、鐘崎の方はといえば廊下に出たところでどこからか旨そうな匂いがしているのに気付いては、こちらもまた不思議顔で首を傾げていた。
「お好み焼き……? もしかして紫月のヤツか?」
この棟まで入って来られる人間は限られている。その上、いかにも手作りといったお好み焼きとくれば紫月しかいないだろう。それを手に組事務所へ向かえば、ちょうど清水らも三時の休憩で同じお好み焼きを広げていたところだった。
「若! お疲れ様です! 今しがた紫月さんがいらして我々にまでほら、これを――」
お好み焼きをもらったことの礼と同時に『若はお会いになりませんでしたか?』と聞かれる。
「いや――俺は会ってねえが」
「そうでしたか。何でも若のお部屋へ向かう途中で道場の親父殿から至急帰って来るようにとお電話があったそうで。急に稽古が入ったとかで慌てて帰られましたが――」
「…………そうか」
「今、お茶をお淹れしますね。たいへん美味しいお好み焼きで!」
紫月さんは本当に料理がお上手ですねと言いながら清水が茶の支度をしてくれている。
「ああ、すまん……」
と言って座りながらも眉根が寄ってしまう。
(まさか――な。まさかあいつ……)
アレを見たってんじゃねえのか――? と、次第に心臓がバクバクと加速する。
(いや、道場の親父さんから電話があったってことだし、それで急いで帰っただけだろう……)
疑心暗鬼になる必要はない。鐘崎はそう自分に言い聞かせながらも、えらくそわそわとしたまま三時のティータイムを終えたのだった。
その後、スマートフォンを取り出してお礼方々紫月に宛ててメッセージを打った。
どうせ仕事も入っていない午後だ。会いにいくことも、はたまた電話で直接話すこともできたのだが、万が一アレを見られていたのではと思うと何を話していいやら言葉に詰まりそうだ。
こういう時にメッセージ機能は有り難い。
旨かった。ご馳走さん!
せっかく来てくれたのに会わずに帰っちまったようだが――また寄ってくれ。
とにかくは余分なことには触れずにお礼の短文に留めておく。しばしの後、明るい絵文字付きのメッセージが返ってきて、鐘崎はとホッと胸を撫で下ろすこととなった。
悪ィ!🙏
お前ン部屋に寄ろうと思ったんだけど、親父がめっさ急用だって電話してきてさ📞
おめえとはいつでも会えっからと思って、とりま帰った💨
お好み焼き旨かったべ?
食ってくれてサンキュなぁ😘
いつもと変わりのない明るい文面だ。それを見つめながら、鐘崎は愛しげに瞳を細めるのだった。
◇ ◇ ◇
その数日後――鐘崎の部屋を訪れた紫月は、何ともそわそわと落ち着きのなく部屋の隅にある本棚に気を取られていた。
(紫の本、紫の本、紫の……おわッ、あった! あれだ……)
「紫月、ちょっと待ってろ。おめえの好きなケーキをな、忠さんに焼いてもらってんだ。茶淹れてくっから」
忠さんというのは鐘崎組の厨房を預かってくれている腕のいい料理人のことだ。今日は紫月が遊びに来ると知って、鐘崎が頼んでおいてくれたのだそうだ。
彼が部屋を出て行くのを見送りながら、紫月は急いで本棚へと駆け寄った。
(これか――! 遼のオカズ……覗き見っつのは気が引けっけど、ちびっとだけ……な)
悪いと思う気持ちよりも興味の方が先立ってならない。想像するにグラマーな女のグラビアか何かだろうが、いったいどんなタイプのものを見ているのか気になってしまうわけだ。
すまん! と手を合わせ、紫のカバーが掛かった冊子を抜き取ってパラりと中を開いた。想像とは裏腹に、それは固い台紙付きのアルバムだった。
「ンだよ、エロ雑誌じゃねんかよ……って……! ッゲ! ンだ、これ……」
中身は写真だった。しかもすべて自分――紫月――のものだ。
「やややや……ちょい待ちッ! こんなん……いつの間に……」
写っているショットはどれも覚えがあれど、中には見覚えのない寝顔らしきものも混じっている。背景からしてこの部屋の中なのは間違いないが、そういえば一緒にテレビを観ている最中などに寝入ってしまったこともままある。その時に撮られたのだろう。
(あんにゃろ……隠し撮りしやがったなー!)
そうは思えど、アルバム一杯に自分の写真だけというのを目にしながらフッと頬がゆるんでしまう。
(こんな……俺ン写真ばっか一冊にまとめてるって……。そういやあいつ、イく時に俺ン名前呼んでたっけ……)
つまり自分を想像しながらイったということだ。
(遼のやつぅ……お、俺をオカズにしながらヌいたってのか?)
「あぅあー! いったいどんな想像よ……」
激しく求め合うようなラブラブなシチュエーションか、それとも案外――
「無理矢理モノだったりして……」
鐘崎に服をひん剥かれたり、あるいは腕を縛られたりして犯される――そんな妄想がブワッと頭をよぎり、瞬時に頬が熱を持つ。
「ぐ……ふふふふ。やっべえー……」
思わず地団駄を踏みながら踊り出したくなるほどに気持ちが高揚する。
(まあなぁ、マスかく時のオカズって案外ありきたりのシチュよか激しい妄想が多いっていうしな)
あの鐘崎も自分を組み敷く想像をしながら高みに昇っているのかと思うだけでみるみると頬が染まってしまう。と同時に、嬉しくて躍るような気持ちが沸々とし、紫月は思い切り瞳を細めてしまった。
「バッカ、遼……」
廊下の端からはカタカタと盆に乗せられたティーカップの音が近づいてくる。鐘崎が茶を淹れて戻ってきたのだ。
紫月は急いで紫のそれを本棚へと戻すと、何食わぬ顔でソファに寝転んだ。
「待たせたな。ほら」
鐘崎の逞しい手にはおおよそ似合わない盆に乗せられたティーカップやケーキ――。だが、いつも訪れる度にこうして自ら茶を淹れてくれるその気持ちが嬉しくてならなかった。
「うわ! 美味そ!」
パウンドケーキに生クリームがたっぷりと添えられている。
「好きなだけ食え」
「ん――。あのさ……遼、いつもその……サンキュな!」
「なんだ、急に」
ケーキの皿を差し出しながら笑う。
「や、おめえ直々に茶ー淹れてもらうなんてさ、俺って幸せモンだなって」
えへへと鼻を掻きながら照れ臭そうに笑う。そんな紫月の頬を更に染めるようなことを、目の前の男はサラリと言ってのけた。
「そりゃお前――愛だろ?」
「あー……いって……お前……」
思わず鯉のように口をパクパクとさせてしまう。
「いいから食え。忠さんの自信作だそうだぞ」
忠さんというのはここ鐘崎組の厨房を預かってくれている料理人だ。二人が生まれる以前からずっと勤めてくれていて、今ではその忠さんの息子も一緒に腕を奮ってくれている。親父さんの中吉《ちゅうきち》は生粋の板さんだが、息子の忠吾《ちゅうご》は料理の他にも菓子作りが得意のようで、甘い物好きの紫月の為にといつもこうしてオリジナルスイーツを作っておいてくれるのだ。
「こっちもそろそろいい頃合いだな――」
紅茶を注いでくれながら笑うその笑顔が――仕草がとびきり穏やかで優しげで、堪らない思いにさせられた。今にも胸がキュウっと摘まれてしまいそうなくらいだ。
「紫月、こっち向け」
大口を開けてケーキにかぶり付いたところでスマートフォンを向けられて、紫月は思わず喉に詰まらせそうになった。
カシャっとシャッターを切りながら目の前の男はえらく嬉しそうだ。
「ンだよ、不意打ちとかよー……」
「すまん。だがこういう何気ない顔がまたいいモンだ」
「や、良かぁねえべ! ただ単に間抜けなヘン顔じゃねーか」
「ヘン顔がいいんだ。俺の大事なコレクションにする」
「コレクションって……おめえ、将来何かの時に俺の弱みにでもするつもりだな?」
二人はまだ想いを告げ合ってはいない為、そんな切り返しでごまかすわけなのだが、心の中では互いへの想いがあふれているのを肌で感じる。こんな瞬間もまた内心幸せに思える二人だった。
きっと今撮った写真も、例の紫のアルバムに収められるのだろう。
(そんでもって、またそれ見ながらシコるってね……)
想像しただけでくすぐったいような思いがあふれ出る。
「遼――」
トントンと肩を叩いては、
「お返しだ!」
カシャっと不意打ちでシャッターを切る。
「おい……てめ――!」
「いーべ? こいつぁ俺んコレクションにすんの!」
画面の中の彼は不意打ちに驚いたような表情ながら、作っていない感じが素朴だ。だが、元が男前だけにそんなちょっと間の抜けたような表情も色気があって、眺めているとドキドキとしてしまいそうだ。
「へへ! 最高ー!」
(俺もコレで抜けそうだ……!)
まるで宝物のようにスマートフォンごと抱き締めてはソファの上で転げる無邪気な様を見つめる鐘崎の瞳もまた、そこはかとなく愛しげに細められる――そんな幸せな午後がゆっくりと流れていく。
このあたたかで愛情にあふれる想いを告げ合うのは、この日から数年も先のことだった。
秘密の刻 - FIN -
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しかし彼はある事情から極道の家で育てられている。そのような環境で身についた可憐な見た目とは相反した度胸は、地方トップと評される恐ろしい不良校でも発揮されるのだった。
高校になって再会した幼なじみ、中学の時の元いじめっ子、過保護すぎるお爺様、人外とまで呼ばれる恐怖の裏番…、個性的な人達に囲まれ、トラブルしか起きようが無い不良校で過ごす美青年の、ある恋物語。
中央柳高校一年生 紫川鈴、頑張ります!
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いじめ、暴力表現あり。
R-18も予定しています。
決まり次第、別の話にまとめて投稿したいと思います。
この話自体はR-15で最後まで進んでいきます。
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登場人物たちの別視点の話がいくつかあります。
黒の帳の話のタイトルをつけているので、読む際の参考にしていただければと思います。
黒の帳とあまり交わらない話は、個別のタイトルをつけています。
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〜注意〜
失恋する人物が何人か居ます。
複数カプ、複数相手のカプが登場します。
主人公がかなり酷い目に遭います。
エンドが決まっていないので、タグがあやふやです。
恋愛感情以上のクソデカ感情表現があります。
総受けとの表記がありますが、一部振られます。
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追記
登場人物紹介載せました。
ネタバレにならない程度に書いてみましたが、どうでしょうか。
この小説自体初投稿な上、初めて書いたので死ぬほど読みづらいと思います。
もっとここの紹介書いて!みたいなご意見をくださると、改善に繋がるのでありがたいです。
イラスト載せました。
デジタルに手が出せず、モノクロですが、楽しんで頂けたらと思います。
苦手な人は絶対見ないでください、自衛大事です!
別視点の人物の話を黒の帳に集合させました。
これで読みやすくなれば…と思います。
伸ばしたこの手を掴むのは〜愛されない俺は番の道具〜
にゃーつ
BL
大きなお屋敷の蔵の中。
そこが俺の全て。
聞こえてくる子供の声、楽しそうな家族の音。
そんな音を聞きながら、今日も一日中をこのベッドの上で過ごすんだろう。
11年前、進路の決まっていなかった俺はこの柊家本家の長男である柊結弦さんから縁談の話が来た。由緒正しい家からの縁談に驚いたが、俺が18年を過ごした児童養護施設ひまわり園への寄付の話もあったので高校卒業してすぐに柊さんの家へと足を踏み入れた。
だが実際は縁談なんて話は嘘で、不妊の奥さんの代わりに子どもを産むためにΩである俺が連れてこられたのだった。
逃げないように番契約をされ、3人の子供を産んだ俺は番欠乏で1人で起き上がることもできなくなっていた。そんなある日、見たこともない人が蔵を訪ねてきた。
彼は、柊さんの弟だという。俺をここから救い出したいとそう言ってくれたが俺は・・・・・・
時をかける恋~抱かれたい僕と気付いて欲しい先輩の話~
紫紺(紗子)
BL
大学生になったばかりの花宮佳衣(はなみやけい)は、最近おかしな夢をみるようになった。自分が戦国時代の小姓になった夢だ。
一方、アパートの隣に住むイケメンの先輩が、妙に距離を詰めてきてこちらもなんだか調子が狂う。
煩わしいことから全て逃げて学生生活を謳歌しようとしていた佳衣だが、彼の前途はいかに?
※本作品はフィクションです。本文中の人名、地名、事象などは全て著者の創作であり、実在するものではございません。
完結【BL】紅き月の宴~Ωの悪役令息は、αの騎士に愛される。
梅花
BL
俺、アーデルハイド伯爵家次男のルーカス・アーデルハイドは悪役令息だった。
悪役令息と気付いたのは、断罪前々日の夜に激しい頭痛に襲われ倒れた後。
目を覚ました俺はこの世界が妹がプレイしていたBL18禁ゲーム『紅き月の宴』の世界に良く似ていると思い出したのだ。
この世界には男性しかいない。それを分ける性別であるα、β、Ωがあり、Ωが子供を孕む。
何処かで聞いた設定だ。
貴族社会では大半をαとβが占める中で、ルーカスは貴族には希なΩでそのせいか王子の婚約者になったのだ。
だが、ある日その王子からゲームの通り婚約破棄をされてしまう。
【完結】消えた一族の末裔
華抹茶
BL
この世界は誰しもが魔法を使える世界。だがその中でただ一人、魔法が使えない役立たずの少年がいた。
魔法が使えないということがあり得ないと、少年は家族から虐げられ、とうとう父親に奴隷商へと売られることに。その道中、魔法騎士であるシモンが通りかかりその少年を助けることになった。
シモンは少年を養子として迎え、古代語で輝く星という意味を持つ『リューク』という名前を与えた。
なぜリュークは魔法が使えないのか。養父であるシモンと出会い、自らの運命に振り回されることになる。
◎R18シーンはありません。
◎長編なので気長に読んでください。
◎安定のハッピーエンドです。
◎伏線をいろいろと散りばめました。完結に向かって徐々に回収します。
◎最終話まで執筆済み
王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。
薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。
アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。
そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!!
え?
僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!?
※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。
色んな国の言葉をMIXさせています。
水の巫覡と炎の天人は世界の音を聴く
井幸ミキ
BL
僕、シーラン・マウリは小さな港街の領主の息子だ。領主の息子と言っても、姉夫婦が次代と決まっているから、そろそろ将来の事も真面目に考えないといけない。
海もこの海辺の街も大好きだから、このままここで父や姉夫婦を助けながら漁師をしたりして過ごしたいのだけど、若者がこんな田舎で一生を過ごしたいなんていうと遠慮していると思われてしまうくらい、ここは何もない辺鄙な街で。
15歳になる年、幼馴染で婚約者のレオリムと、学園都市へ留学しないといけないみたい……?
え? 世界の危機? レオリムが何とかしないといけないの? なんで? 僕も!?
やけに老成したおっとり少年シーラン(受)が、わんこ系幼馴染婚約者レオリム(攻)と、将来やりたい事探しに学園都市へ行くはずが……? 世界創生の秘密と、世界の危機に関わっているかもしれない?
魂は巡り、あの時別れた半身…魂の伴侶を探す世界。
魔法は魂の持つエネルギー。
身分制度はありますが、婚姻は、異性・同性の区別なく認められる世界のお話になります。
初めての一次創作BL小説投稿です。
魔法と、溺愛と、ハッピーエンドの物語の予定です。
シーランとレオリムは、基本、毎回イチャイチャします。
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第11回BL小説大賞、無事一か月毎日更新乗り切れました。
こんなに毎日小説書いたの初めてでした。
読んでくださった皆様のおかげです。ありがとうございます。
勢いで10月31日にエントリーをして、準備も何もなくスタートし、進めてきたので、まだまだ序盤で、あらすじやタグに触れられていない部分が多いのですが、引き続き更新していきたいと思います。(ペースは落ちますが)
良かったら、シーランとレオリムのいちゃいちゃにお付き合いください。
(話を進めるより、毎話イチャイチャを入れることに力をいれております)
(2023.12.01)
長らく更新が止まっていましたが、第12回BL大賞エントリーを機に再始動します。
毎日の更新を目指して、続きを投稿していく予定です。
よろしくお願いします。
(2024.11.01)
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