極道恋浪漫

一園木蓮

文字の大きさ
上 下
73 / 101
極道恋浪漫 第一章

72

しおりを挟む
 それからひと月も経つ頃には遼二の事務所となる建物の棟上げも済んで、新しい体制に向かい歩み出していた。
 もしかしたら街自体が消滅してしまうかと思われていた遊郭街の方も、引き続きここに残って生きていきたいと言ってくれた者たちによって、何とか再建の目処が立ち始めていた。

 各妓楼の主人あるじらにしてみれば、今更この稼業以外に移れと言われたところで逆に路頭に迷ってしまう。是非ともこのままここでの生活を続けていきたいと申し出てくれる者が殆どだった。そして、それは遊女や男娼にしても同じくだった。色を売るということに関しても、誇りをもってやっていきたいと言う者もいた。彼ら曰く、実のところ他の仕事よりも稼げるこの仕事は魅力であるし、客との駆け引きなどが楽しいのだと言ってくれる者もいたそうだ。女衒ぜげんによる強制的な拉致は撤廃され、遊郭街は新たな未来に向かって漕ぎ出そうとしていた。

 紫月ズィユエは男遊郭を治めるおさとして正式に就任し、ジンもこれまで同様その補佐に就くことが決まった。女遊郭の方も頭を務めてきた酔芙蓉という女が引き続き遊女らを束ねる長となった。
 飛燕もまた、息子の紫月ズィユエを補佐しながら遊郭街の揉め事の仲立ち役としてお役目様を続けるそうだ。

 加えてもうひとつ、地上の方の九龍城砦内で医師として活躍してくれていたデェン一家にも、この地下街含めた砦専属の医師として従事してもらえるよう、周隼ジォウ スェンから直々の願いが下されることとなった。とりわけ若き鄧海デェン ハァイ鄧浩デェン ハァオの兄弟はイェンの邸内に住居を与えられ、春日野夫妻らと共に尽力してもらうこととなった。

 そして、新たにこの香港にて事務所を構えることが決まった遼二の任務は、イェンの懐刀として遊郭街を含めた地下街全体の統治に尽力することだ。むろんのこと、日本に拠点を構える父親と連携した始末屋としての仕事にも従事していく。

 かくして九龍城砦地下街は若きイェンら若人たちの新しい体制の下、これまで以上に勢いのある世界屈指の遊興街として再出発することになったのだった。

第一章 - FIN -
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

悪役令息に憑依したけど、別に処刑されても構いません

ちあ
BL
元受験生の俺は、「愛と光の魔法」というBLゲームの悪役令息シアン・シュドレーに憑依(?)してしまう。彼は、主人公殺人未遂で処刑される運命。 俺はそんな運命に立ち向かうでもなく、なるようになる精神で死を待つことを決める。 舞台は、魔法学園。 悪役としての務めを放棄し静かに余生を過ごしたい俺だが、謎の隣国の特待生イブリン・ヴァレントに気に入られる。 なんだかんだでゲームのシナリオに巻き込まれる俺は何度もイブリンに救われ…? ※旧タイトル『愛と死ね』

病弱な悪役令息兄様のバッドエンドは僕が全力で回避します!

松原硝子
BL
三枝貴人は総合病院で働くゲーム大好きの医者。 ある日貴人は乙女ゲームの制作会社で働いている同居中の妹から依頼されて開発中のBLゲーム『シークレット・ラバー』をプレイする。 ゲームは「レイ・ヴァイオレット」という公爵令息をさまざまなキャラクターが攻略するというもので、攻略対象が1人だけという斬新なゲームだった。 プレイヤーは複数のキャラクターから気に入った主人公を選んでプレイし、レイを攻略する。 一緒に渡された設定資料には、主人公のライバル役として登場し、最後には断罪されるレイの婚約者「アシュリー・クロフォード」についての裏設定も書かれていた。 ゲームでは主人公をいじめ倒すアシュリー。だが実は体が弱く、さらに顔と手足を除く体のあちこちに謎の湿疹ができており、常に体調が悪かった。 両親やごく親しい周囲の人間以外には病弱であることを隠していたため、レイの目にはいつも不機嫌でわがままな婚約者としてしか映っていなかったのだ。 設定資料を読んだ三枝は「アシュリーが可哀想すぎる!」とアシュリー推しになる。 「もしも俺がアシュリーの兄弟や親友だったらこんな結末にさせないのに!」 そんな中、通勤途中の事故で死んだ三枝は名前しか出てこないアシュリーの義弟、「ルイス・クロフォードに転生する。前世の記憶を取り戻したルイスは推しであり兄のアシュリーを幸せにする為、全力でバッドエンド回避計画を実行するのだが――!?

双子は不吉と消された僕が、真の血統魔法の使い手でした‼

HIROTOYUKI
BL
 辺境の地で自然に囲まれて母と二人、裕福ではないが幸せに暮らしていたルフェル。森の中で倒れていた冒険者を助けたことで、魔法を使えることが判明して、王都にある魔法学園に無理矢理入学させられることに!貴族ばかりの生徒の中、平民ながら高い魔力を持つルフェルはいじめを受けながらも、卒業できれば母に楽をさせてあげられると信じて、辛い環境に耐え自分を磨いていた。そのような中、あまりにも理不尽な行いに魔力を暴走させたルフェルは、上級貴族の当主のみが使うことのできると言われる血統魔法を発現させ……。  カテゴリをBLに戻しました。まだ、その気配もありませんが……これから少しづつ匂わすべく頑張ります!

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 俺の死亡フラグは完全に回避された! ・・・と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ラブコメが描きたかったので書きました。

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

処理中です...