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57.天魔大戦 ⑧
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魔王が死に、絶望する悪魔達の前に大天使は姿を現した。魔王の血で汚れている大天使とデュラン。悪魔達は一斉に声を荒げ始めた。
「来るな!」
「悪魔を滅ぼす気か!?」
「お前がいなければ……!」
どんな言葉も大天使には届かない。同胞を殺し、親である神を殺し、唯一の友を目の前で亡くした。それらに比べれば罵倒など無いのと同じだった。
それでも一つ、どうしても否定したいことがあった。
「お前達の目には、オレが天使に見えるのか?」
堕天し、深い闇の色に染まった大天使。大きな翼も頭上に輝く光輪も神秘的な不気味さを漂わせている。それはどの悪魔よりも暗く深い、正真正銘の『悪』だった。
大天使の一言で周りが静まり返ると、二股の尾を揺らす猫の獣人の悪魔が前に出てきた。美しい銀の髪と鮮緑の瞳。大天使はそれがディークが語っていた特徴と一致することにすぐ気付いた。そう、それは悪魔の国の当時の王妃でありデュランの母である女性だ。
「貴方のことは夫から聞いていますわ。我々を助けて頂き、本当になんと言えばいいのか……。」
「そう言うのはいい。それよりも今は優先すべきことがあるだろう。……女王になる気はあるか?」
お礼の言葉すら払いのけて話を進める大天使。この時は既に、大天使の心は死にかけていた。
大天使の問いかけに戸惑う王妃。それが答えだった。
「そうか、ならばオレがしばらく務めよう。デュランが即位できるほど成長するまではな。」
その言葉に周囲はざわついた。悪魔達もどんな扱いをされるのかと気が気では無いのだ。
驚きながらも了承した王妃。現状で一番権力のある彼女の決定には誰も逆らえない。そして一時的な魔王となった大天使は、未だ眠り続けるデュランを部屋に運んだ。
血を拭い着替えさせたデュランをベッドに寝かせ、よく眠ってることを確認すると、大天使は堰が切れたように泣き出した。過呼吸になりながらもデュランを起こさないよう声を押し殺して。
自分を大天使として敬う者、尊敬する者、憧れる者。そして千年以上も師として、親として側に居続けた者を殺した。
自身に心を自覚させてくれた、時間をいくつも共有した、何年も待ち続けてくれていた唯一の友を自分のせいで死なせてしまった。
その全てを自覚するだけで自身に対する怒りが爆発している。
(気持ち悪い、頭が割れそう、なんだこれ………)
大天使はそのまま膝から崩れ落ち、意識を失った。
暗闇の中で声が響く。
「だから言ったのだ。地獄を見ると……」
それは死んだ神の声。世界に留まる残りカスのような意識。
大天使はその声に応えた。
「地獄を作ったのは貴様じゃないか………」
「……どうだったか。」
「なぁ、答えてくれ。貴様は…オレが子供を庇うと分かっていたんじゃ無いか?」
神は黙り込んだ。
「貴様は魔王以外の悪魔を殺していない。傷一つ付けていない。神の力にオレが屈するよう、避けられない状況を作ったんじゃ……」
「黙れ。我はもう消える。」
その声色が全てを物語っていた。冷たい声の中に動揺と哀愁が垣間見えた。しかし、大天使はその声の意味を知らない。ただ、神は自分を縛り付けたいと思う事しか出来なかった。微かな意識の最後まで、神は理解される事は無かった。
しばらくして大天使が目覚めると、マイヤが顔を覗き込んでいた。
「兄様!」
「マイヤ……?っオレはどれくらい眠ってた!?」
飛び起き頭を抱える大天使。気を失う直前の酷い頭痛は依然治らず、五感は鈍っている。
胸の中のぐちゃぐちゃしたものを無理矢理飲み込み体を起こすも、正常に力が入らなかった。
「丸一日くらいだけど……まだ動いちゃダメだよ。堕天の後遺症がまだ残ってるんだから……」
「そんなものはどうでもいい。それよりオレはやるべきことがある。」
今の大天使の動力源はディークの最期の望みだけであり、またその望みに強く縛られている。
デュランの元へ行こうとした大天使。ベッドから降りてドアに向かう途中の姿見で初めて今の己の姿を見ると、なんと恐ろしく醜いのだろうと思いながら自分に嘲笑した。
周囲からの冷たく鋭い視線を気にもせずにデュランの部屋に入る大天使が見た光景は、酷く悲しく悲惨だった。
割れた陶器やガラスの破片はあちらこちらに飛び散り、シーツやカーテンからクローゼットの中身までもが破かれていた。それらの破壊をしたのは他の誰でもないデュランで、当の本人は手を切り血が至る所に付着している。
「な…にしてるんだ馬鹿!」
「来るな!」
デュランは大天使を見るなり酷く怯え、座り込んだまま後ずさった。
「お前がいなければ…!とうさまじゃなくてお前が死ねば良かったのに……!とうさまを返してよ!」
必死のその叫びは大天使の心を抉った。
しかしそれを悟られまいと、座り込みデュランを強く抱きしめた。引き剥がそうと抵抗するデュランの手のひらの血が大天使につき、真っ白な肌までもが赤く血に染まる。
「ごめん、その通りだ。それでもディークが残したお前が傷つくのは駄目だ。オレのことは恨んで憎んで嫌っていい。でも、自分が傷つくようなことはするな……」
大天使が掛けられる最大で唯一の言葉。いくら堕天し黒に染まっても、大天使であることも天使のような姿も変わらない。大天使は自分が『大天使』でしか無いことを強く嫌悪した。
無理矢理デュランの傷を治した大天使は、一時的にデュランの部屋を割れものがない部屋に変えた。
そしてデュランが落ち着くのを待っていると、未だ悪魔の国に滞在するマイヤが呼びに来た。連れられるまま何も知らずに移動すると、そこには白い棺桶とたくさんの花があった。今は王妃しかいないが、つい先程までは他にもたくさん居たようだ。
「ディークの遺体を回収して綺麗にして、ここに眠らせたんだ。ボクの力じゃあと少しで魂の保護が消えちゃうけど………」
「……!オレがやる。」
大天使は跪き祈るポーズをした。瞬く間に辺りは優しい光に包まれ、温もりが漂う。
それと同時、大天使が祈ると姿が白く戻った。一度堕天すれば戻ることはないはずだったのが、聖なる子らによって浄化されたのだ。しかし、しばらくするとまた堕天した姿に戻る。大天使は聖力を使うと元の姿に戻るようになったのだ。
「……そう、オレはまだ『次代の神』なんだな。それなら少しだけ私欲のために使わせてもらおうか。」
大天使はディークの魂を保護しながら強化した。魂の干渉はあまりにも複雑で難しく時間も掛かる。それでもせめて、その魂に次があるように。
このことは大天使とマイヤと王妃の三人だけの秘密となった。
「そうだ王妃…いや、王太后。オレは一応は魔王代理だから、現王はデュランということにする。」
「ええ。もちろん異論はありませんわ、大天使様。」
「……その呼び方はやめろ。代理とでも呼んでおけ。」
「……はい。」
そして悪魔の国は少しずつ落ち着き始めた。
そして、大天使が本格的に代理の魔王として務める直前のこと。
天使を裏切り帰る場所を失ったもう一人、マイヤは大天使に別れを告げに訪れた。
「お前もここにいればいいだろう。」
「ううん。ボクは堕天もしてなければ手伝えることもない。だから誰も知らないところでしばらく眠るよ。もしボクの力が必要な時は、ボクの絵を探してね。約束だよ。」
そしてマイヤは自身のキャンバスで眠った。かつて湖のアトリエで感情を吐き出すため塗りたくった黒いキャンバスの中で。
そして各々が落ち着き、来る日を待ち続けた。
これが天魔大戦。天使と神、大天使と魔王による壮絶な戦いはたった数日だけのことだった。
「来るな!」
「悪魔を滅ぼす気か!?」
「お前がいなければ……!」
どんな言葉も大天使には届かない。同胞を殺し、親である神を殺し、唯一の友を目の前で亡くした。それらに比べれば罵倒など無いのと同じだった。
それでも一つ、どうしても否定したいことがあった。
「お前達の目には、オレが天使に見えるのか?」
堕天し、深い闇の色に染まった大天使。大きな翼も頭上に輝く光輪も神秘的な不気味さを漂わせている。それはどの悪魔よりも暗く深い、正真正銘の『悪』だった。
大天使の一言で周りが静まり返ると、二股の尾を揺らす猫の獣人の悪魔が前に出てきた。美しい銀の髪と鮮緑の瞳。大天使はそれがディークが語っていた特徴と一致することにすぐ気付いた。そう、それは悪魔の国の当時の王妃でありデュランの母である女性だ。
「貴方のことは夫から聞いていますわ。我々を助けて頂き、本当になんと言えばいいのか……。」
「そう言うのはいい。それよりも今は優先すべきことがあるだろう。……女王になる気はあるか?」
お礼の言葉すら払いのけて話を進める大天使。この時は既に、大天使の心は死にかけていた。
大天使の問いかけに戸惑う王妃。それが答えだった。
「そうか、ならばオレがしばらく務めよう。デュランが即位できるほど成長するまではな。」
その言葉に周囲はざわついた。悪魔達もどんな扱いをされるのかと気が気では無いのだ。
驚きながらも了承した王妃。現状で一番権力のある彼女の決定には誰も逆らえない。そして一時的な魔王となった大天使は、未だ眠り続けるデュランを部屋に運んだ。
血を拭い着替えさせたデュランをベッドに寝かせ、よく眠ってることを確認すると、大天使は堰が切れたように泣き出した。過呼吸になりながらもデュランを起こさないよう声を押し殺して。
自分を大天使として敬う者、尊敬する者、憧れる者。そして千年以上も師として、親として側に居続けた者を殺した。
自身に心を自覚させてくれた、時間をいくつも共有した、何年も待ち続けてくれていた唯一の友を自分のせいで死なせてしまった。
その全てを自覚するだけで自身に対する怒りが爆発している。
(気持ち悪い、頭が割れそう、なんだこれ………)
大天使はそのまま膝から崩れ落ち、意識を失った。
暗闇の中で声が響く。
「だから言ったのだ。地獄を見ると……」
それは死んだ神の声。世界に留まる残りカスのような意識。
大天使はその声に応えた。
「地獄を作ったのは貴様じゃないか………」
「……どうだったか。」
「なぁ、答えてくれ。貴様は…オレが子供を庇うと分かっていたんじゃ無いか?」
神は黙り込んだ。
「貴様は魔王以外の悪魔を殺していない。傷一つ付けていない。神の力にオレが屈するよう、避けられない状況を作ったんじゃ……」
「黙れ。我はもう消える。」
その声色が全てを物語っていた。冷たい声の中に動揺と哀愁が垣間見えた。しかし、大天使はその声の意味を知らない。ただ、神は自分を縛り付けたいと思う事しか出来なかった。微かな意識の最後まで、神は理解される事は無かった。
しばらくして大天使が目覚めると、マイヤが顔を覗き込んでいた。
「兄様!」
「マイヤ……?っオレはどれくらい眠ってた!?」
飛び起き頭を抱える大天使。気を失う直前の酷い頭痛は依然治らず、五感は鈍っている。
胸の中のぐちゃぐちゃしたものを無理矢理飲み込み体を起こすも、正常に力が入らなかった。
「丸一日くらいだけど……まだ動いちゃダメだよ。堕天の後遺症がまだ残ってるんだから……」
「そんなものはどうでもいい。それよりオレはやるべきことがある。」
今の大天使の動力源はディークの最期の望みだけであり、またその望みに強く縛られている。
デュランの元へ行こうとした大天使。ベッドから降りてドアに向かう途中の姿見で初めて今の己の姿を見ると、なんと恐ろしく醜いのだろうと思いながら自分に嘲笑した。
周囲からの冷たく鋭い視線を気にもせずにデュランの部屋に入る大天使が見た光景は、酷く悲しく悲惨だった。
割れた陶器やガラスの破片はあちらこちらに飛び散り、シーツやカーテンからクローゼットの中身までもが破かれていた。それらの破壊をしたのは他の誰でもないデュランで、当の本人は手を切り血が至る所に付着している。
「な…にしてるんだ馬鹿!」
「来るな!」
デュランは大天使を見るなり酷く怯え、座り込んだまま後ずさった。
「お前がいなければ…!とうさまじゃなくてお前が死ねば良かったのに……!とうさまを返してよ!」
必死のその叫びは大天使の心を抉った。
しかしそれを悟られまいと、座り込みデュランを強く抱きしめた。引き剥がそうと抵抗するデュランの手のひらの血が大天使につき、真っ白な肌までもが赤く血に染まる。
「ごめん、その通りだ。それでもディークが残したお前が傷つくのは駄目だ。オレのことは恨んで憎んで嫌っていい。でも、自分が傷つくようなことはするな……」
大天使が掛けられる最大で唯一の言葉。いくら堕天し黒に染まっても、大天使であることも天使のような姿も変わらない。大天使は自分が『大天使』でしか無いことを強く嫌悪した。
無理矢理デュランの傷を治した大天使は、一時的にデュランの部屋を割れものがない部屋に変えた。
そしてデュランが落ち着くのを待っていると、未だ悪魔の国に滞在するマイヤが呼びに来た。連れられるまま何も知らずに移動すると、そこには白い棺桶とたくさんの花があった。今は王妃しかいないが、つい先程までは他にもたくさん居たようだ。
「ディークの遺体を回収して綺麗にして、ここに眠らせたんだ。ボクの力じゃあと少しで魂の保護が消えちゃうけど………」
「……!オレがやる。」
大天使は跪き祈るポーズをした。瞬く間に辺りは優しい光に包まれ、温もりが漂う。
それと同時、大天使が祈ると姿が白く戻った。一度堕天すれば戻ることはないはずだったのが、聖なる子らによって浄化されたのだ。しかし、しばらくするとまた堕天した姿に戻る。大天使は聖力を使うと元の姿に戻るようになったのだ。
「……そう、オレはまだ『次代の神』なんだな。それなら少しだけ私欲のために使わせてもらおうか。」
大天使はディークの魂を保護しながら強化した。魂の干渉はあまりにも複雑で難しく時間も掛かる。それでもせめて、その魂に次があるように。
このことは大天使とマイヤと王妃の三人だけの秘密となった。
「そうだ王妃…いや、王太后。オレは一応は魔王代理だから、現王はデュランということにする。」
「ええ。もちろん異論はありませんわ、大天使様。」
「……その呼び方はやめろ。代理とでも呼んでおけ。」
「……はい。」
そして悪魔の国は少しずつ落ち着き始めた。
そして、大天使が本格的に代理の魔王として務める直前のこと。
天使を裏切り帰る場所を失ったもう一人、マイヤは大天使に別れを告げに訪れた。
「お前もここにいればいいだろう。」
「ううん。ボクは堕天もしてなければ手伝えることもない。だから誰も知らないところでしばらく眠るよ。もしボクの力が必要な時は、ボクの絵を探してね。約束だよ。」
そしてマイヤは自身のキャンバスで眠った。かつて湖のアトリエで感情を吐き出すため塗りたくった黒いキャンバスの中で。
そして各々が落ち着き、来る日を待ち続けた。
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