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6.煽情の戦場(完)

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 アスラとマルスは部屋に戻り、直ぐに治療をした。

 アスラがシャツを脱ぐと、背中に青アザが出来ているのがよく見える。滅多に外出しないアスラの肌は白く、アザはより一層鮮やかに見えて目立ってしまう。マルスは慎重に湿布を貼った。


「ひぅっ!冷たっ!」
「我慢してください。ちゃんと治療しないと治りが悪いですから。」
「……アザなんて無視して僕を犯してたくせに。」


 付き合い始めた日のことだ。マルスはアザに気付きながらもアスラを抱いた。綺麗な体に傷を付けられているという怒りもあり、マルスも冷静ではいられなかったのだ。


「反省してますよ。あの後、体中が痛いって言ってましたからね。」
「……お前も、僕以外に仕えてた時に暴力を受けてたんじゃ……」
「慣れてましたし、なんて事はありません。」


 そう、マルスは自己判断が苦手と言う理由で奴隷になった。が、そんな事が可能なのは、それなりの危険の覚悟があったから。胸元の傷痕も決して小さく無い。命を危険に晒してまで奴隷になったマルスは、自分の身の危険ですら考える事が出来なかった。生死も全て、自分で決められなかった。


「マルス、今はその体も命も僕のものなんだからな。大切にしないとダメだからな。」
「分かってます。」
「なら良し。」


 マルスにとって初めての生きる意味になったアスラ。孤独から来る優しさも、境遇から来る欲も、全てマルスにとっては温もりだった。人として求められたこと、自身で満たされている様、愛らしさの中に含まれる毒牙ですら彼にとっての『幸福』だった。


「マルス、キスして。」


 ふわりと頬を包み、柔く優しい慈愛に満ちた口付けをした。決して深くは無いものの、アスラはどこか満ちて行く感覚になる。


「はぁ…♡なんか、ふわふわする。凄く『幸せ』って感じ。」
「なら良かったです。」
「うん。でもさ……」


 アスラは手に隠していた錠剤を口に放り込んでマルスに口付けた。口移しで薬を飲まされたマルスは、すぐに全てを理解する。


「やっぱ、もっとマルスが欲しくなる♡」
「また媚薬ですか。……今回は私だけ?」
「ちゃんと僕の分も用意してる。けど…これもマルスに飲ませちゃえ♡」


 アスラは悪戯っ子全開でマルスを遊んでる。もう一錠飲ませ、マルスをベッドに押し倒すと恍惚の笑みを浮かべた。
 以前チョコレートに溶かして入れた媚薬。今回は固形のままだ。効果は更に高くなっている。……が、固形だった事がアスラの敗因。

 マルスは形成逆転してアスラを押し倒すと、口内で溶け切れていない小さな錠剤を無理矢理飲ませた。マルスの大きい舌で強引に深くまで押し入られ、アスラは確実に飲み込む。


「ひぇ……ま、マルス?」
「せっかくなら二人で楽しみましょう?アスラ。」
「えっ、あっ♡」


 ズボンの中に手を入れられ、下着の上から撫でられるだけで声をこぼすアスラ。そのまま脱がされ、器用に扱かれ、アスラは枕を強く握る。
 あっという間にぐちゃぐちゃといやらしい音を鳴らし始める。


「はっ、あっ♡だめっ♡さきっぽは、ダメっ……♡」
「背丈もも、初めて会った時から大きくなりましたね。流石は成長期。」
「やぁッ……!」


 先端を強く擦られ、一気にビクンと反応した。マルスの手により簡単に絶頂が近付いたアスラは、カクカクと腰を前後に動かす。


「あっ、あッ♡マルス、おねがっ…、でるの、ぼくの、飲んで…♡」
「ドMのクセにそんな事言うんですか?…本当、気持ちいい事が好きですよね。」


 そんな事を言いつつもマルスはアスラのものを咥えた。
 アスラはマルスで気持ち良くなりたい。マルスはアスラの善がる姿が見たい。2人はお互いに望みが噛み合っている。

 アスラは体を起こし、自分のものを咥え口淫をするマルスを見下ろした。与えられる熱と刺激は勿論のこと、視覚の暴力のようなその光景に更なる興奮を得た。
 媚薬の効果も出始め、あっという間に快楽を求めるケダモノになったアスラは、マルスの頭を掴み本能のまま腰を振った。


「はっ、あー…♡なにこれ、とまんな……♡あっ、でるっ、でるッ……♡」


 そのままマルスの奥にたっぷりと射精したアスラ。全て飲み込んだマルスは、口元を拭って笑った。


「まさかアスラが孕ませる勢いで腰を振るとは。こんな淫らで快楽に弱いと言っても、一応は雄でしたね。」
「一応ってなんだ!」


 顔を真っ赤にして反論するアスラの乳首に息を吹きかけるマルス。アスラはそれだけで体を震わせ嬌声を出す。


「直接触れなくともこんなに尖らせる雄がいるなんて、誰も思いませんよ。」
「ひっ…あ、あぁ……♡」
「ほら、女性みたいに高い声まで出して。」


 腰を掴まれ、息を吹きかけられただけで全身が反応してしまうアスラ。出したばかりですぐに復帰している。


「っがう、ぼく、おんなじゃ……ない、もん………」
「そうですね。確かに女性に無いものがありますからね。なら…『メス』ですかね?」
「なっ…!違うから!僕をバカにしてるのか!」


 耳まで真っ赤になったアスラは顔を隠して唇を噛んだ。
 怒られたマルスは一瞬だけ動揺したが、煽情的なその姿を目の前に加虐心が収まる事は無かった。


「……あれ、違いましたか?ならこれは要りませんよね。」
「ひぁっ…!っ…!っっ……♡」


 入り口に布越しで滾ったものを押し付けるマルス。アスラの欲しいことが分かりながら意地悪をしている。
 一瞬だけ声を出したアスラだが、高い嬌声を指摘された事により、下唇を噛んで耐えた。


「唇を噛むのは止めてくださいよ。傷が付きます。」


 マルスはアスラの顎を引っ張り、開いた口に自身の指を差し込み噛ませた。これで唇を噛む事は無くなったが、隙間が出来てしまい声を抑える事が出来なくなった。


「ほら、要らないんですか?私が欲しいと言ってたじゃありませんか。」
「んっ♡んぅ………♡」


 押し付けられ、擦り付けられる度に脈打ちハクハクと動く下の口は常に飲み込もうとする動きをしていた。それでも頑なに耐え続けるアスラにマルスは怒りを覚え、また布越しで今度はリズミカルに打ち付け始めた。


「んんっ……!?」


 その感覚は実際に繋がっている時と近く、アスラは挿入れられる前からナカで深イキをした。


「これだけで絶頂ですか…。媚薬の効き目ですかね。」
「っは……、違う、っちがう、いってない……」
「そうですか。別に、今はアスラの事を言った訳では無いのですがね。」

「え……?」


 マルスはベルトを外してズボンと下着を下ろした。下着の中は白濁液でドロドロだ。しかも、マルスは未だ活発なまま。


「ほら、見てください。貴方が私に飲ませた媚薬のせいでこんなにも出てしまいましたよ。また汚してしまった。」


 そう言って見せつけるマルス。その姿を見たアスラは、白濁液のように頭の中が真っ白になり、思考が完全に快楽に染まった。


「マルス、お願い♡も…我慢出来ない……♡」
「ん?どうして欲しいんですか?」
「マルスのちんちん、僕のココに挿入れて♡きもちぃトコいっぱい突いて、ナカにいっぱいせーし注いで……♡」


 アスラは片手で片脚を持ち上げ、もう片方の手で縦に割れたピンクの後孔を広げて見せた。マルスはギリギリ残った理性も意味無く、アスラの言いなりに深くまでずるりと差し込んだ。


「あっ♡は、あぁ、あっ、んんっ……♡はー……♡」
「っきつ…。そう言えばちゃんと解してないですけど……良かった。怪我は無いみたいですね。」


 理性を飛ばし、安全面を考慮せずに動いてしまった事を悔いたマルス。今動いてしまえばそのまま酷くする予感がしたマルスは、馴染むまで手淫をした。アスラの迫り上がったそれに優しく触れ、確実に思考を溶かしていく。刺激は弱く、しかし快感を留めないように。


「はっ……あっ♡きもち………♡」
「何も考えずに喘いでいていいんですよ。」

(煽られて傷付けない自信もありませんし。)


 アスラは身震いして力無く吐精した。とろんと惚けた顔でマルスを見つめている。


(あ……しまった。これは予想外……)

「……?マルス、なんで今おっきく……?」


 マルスはアスラの甘くとろけた表情で更に興奮してしまった。が、アスラはそんな事を知らない。頬を赤らめ困り眉でおどおどと困惑するアスラは、気が抜けてる時の愛らしさを知らぬ間にマルスに魅せている。


「……本当に、優しくするつもりだったんですけどね。やっぱり無理です。」
「え、なに、どうゆうこ……とッ!?」


 マルスは一度引いてから一気に穿った。アスラはその一撃で達したが、マルスは止まる気配が無い。どちらが絶頂したとしても、マルスは口角を上げたまま歯を食いしばり、止まる事なく犯し続ける。


「ひっ、がっ……あッ♡む、りッ!ごわれるッ、あ゛っ……♡」
「ええ…私で壊れて、狂って、乱れて、私だけを考えてください。」


 アスラは何も理解出来ずにいた。ただひたすらに与えられる快楽に声を出す事すらままならなくなる。自身の横に置かれた両腕に捕まって、与えられる大きな刺激を享受している。


 暫くして、ようやく止まった。アスラはバグったように痙攣し、過呼吸になっている。マルスはそっと口付けてアスラの呼吸を整えるように人工呼吸をする。


「はっ、はー……♡っ…まだ、ナカ、でてる……♡」


 マルスは奥に押し付け止めどない熱を吐き出している。が、マルスは一瞬体を震わせた。


「え…あれ?なぁ、マルス………」


 アスラが何かに疑問を持つと、マルスは焦ったように目を逸らした。


「……マルス、僕さ…分かるんだよなぁ。流石に何回もシてると。」

「っチ………」


 マルスから飛んできた舌打ち。余裕なんて無く、呼吸すらままならなかったアスラは一気に悦に浸り笑った。


「こんなマーキングは初めてだなぁ♡」
「五月蝿いです。」
「なぁ、僕のナカでお漏らしする程気持ちよかったのか?」
「黙ってください。」
「なぁマルス……」


「今のお前、めちゃくちゃ可愛いなぁ……♡」


 マルスの痴態を掘り返し煽りに煽るアスラ。マルスは最後の一言で完全にキレた。それは興奮でも無く、ただひたすらに怒り。アスラの首を掴んで声が出せないように死なない程度に締めた。


「壊れる程犯してやるから黙ってろ。」
「………!っかは!けほっ、けほっ………は、はは……流石に怖いって。……なぁ、え、うそ、ねぇまっ……………」









 どれくらい時間が経ったかは分からない。ただ、昼頃に開始して日付は変わり、日が上り始めている。アスラは途中で何度か意識を飛ばしては叩き起こされた。それも何回か繰り返し、いつの間にか完全に気絶したが。


「……………」
「………すみません。」
「……………」
「捨てないでください。」


 マルスはアスラの看病をしながら謝罪を繰り返していた。が、アスラは何も言わない。というか何も言えない。喘ぎ過ぎで声が枯れてしまったのだ。更には体中に痛みが走り、首元にはキスマークと歯形と締められた痕が残ってしまった。他にも力強く握られた四肢にも痕がある。


「アスラ様…捨てないでください……。」


 マルスは無表情のまま青ざめている。そんなどこか弱々しいマルスを見たアスラは、ため息を吐いて腕を動かした。
 マルスは招かれるままアスラの側に行くと、ふわりと頭を撫でられた。声が出ないアスラなりの『大丈夫』だ。


「怒って…ますよね。」
「こくこく(うん。)」
「私を捨てたり……」
「ふるふる(しない。)」
「その…嫌いになったり………」


 いつまでも不安なままのマルス。アスラはベッドで横になったまま、微笑んで抱っこのポーズをした。マルスはそれに応えて抱きしめ返す。


「本当に…すみません。私もああなるのは初めてで、抑え方を知らず……。ただ、本当に危険なので媚薬は止めてください。」
(……えー。)
「……あの、返事は?」
「こくこく(次はバレないようにする。)」


 コンコン

 ノックの音。朝から何故かアレンが部屋に来た。


「朝早くに悪いな。昨日言っていたアスラに手を出したと言う奴らが誰か………アスラ?」


 アレンは満身創痍のアスラを見て絶句した。しかも声も出せないと来た。アレンは当たり前のようにマルスを睨む。


「おい奴隷。貴様か?」
「私…しかいませんね。」
「おい!」



 マルスとアレンは言い合いを始めてしまった。そんな2人を、喋れないアスラが止めたとか止めてないとか…………。

 それは本人たちしか知らない。
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