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物語のはじまり

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 王都には厄災があふれていた。
ここ最近、『令嬢誘拐事件』とやらが、多発しているらしい。


 裕福な家の令嬢が、薬を盛られて攫われる。
身代金さえ支払えば、誘拐された事実すら無かったかのように、攫われた令嬢達はなんの問題もなく元通りの生活に戻る事ができるという。

 まことしやかに囁かれる、その噂の最後は、必ずこう締めくくられる。


『もし誘拐されても、黒幕の顔だけは、決して見てはいけない。その顔を見てしまうと、もう二度と、元の生活には戻れないから…』と。


 その噂を聞いた時には私が誘拐される立場になるとは、思ってもみなかった。しかも見てはいけないと言われている人の顔を見てしまうなどという事も…。

 だって、聞こえてきた声は、あまりにも覚えのある声だったから…。





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