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お願いという名の脅し
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代理母出産。テレビで見た程度の知識しかない。
受精卵を代理母となる女性の子宮入れ、代わりに出産してもらう。
日本では法的に認められておらず、おもに海外で、ビジネスにも
なっていると聞く。
代理母出産を魔法で行う? そもそもなぜ私なの?
「あの、代理母出産なんて、私には無理です。まだひとりしか
産んだことないですし、産んでまもないですから。どうか他の方に」
「我らの異世界召喚術で、波長が合い、無事に召喚できた経産婦は
貴女様だけだったのです。元気な赤子を問題なくお生みになられた。
我らにはそれだけで十分でございます」
神官と名乗った男性が、淡々と説明した。ようは、子供を出産した
ことがある女性なら、誰でも良かったということ?
「エルドラの女たちはもう、子供を産むことができません。
その苦しみと嘆きがどれほどのものか、貴女様にもお分かり
なのではないですか? 哀れなエルドラの女たちをお救いください」
気の毒だとは思う。想像しかできないが、その苦しみは同じ女として
理解できる。しかしだからといって、異世界での代理母出産を
受け入れる理由にはならない。
「エルドラの赤子を無事に産んでいただけたら、元の世界に戻して
さしあげます。お望みの褒美もさしあげます。もしも、お断り
されるのでしたら……仕方ございませんね。
受け入れてくださるまで、エルドラでお過ごしいただきましょう」
脅しだと思った。この世界に来て初めて恐怖した。
「代理母出産を受け入れなかったら、日本には返さない、
ということですか?」
「我らは追い詰められているのです。どうかエルドラの苦しみを
御理解ください」
そっと周囲を見渡してみた。王や神官たちと思われる人たちの
向こうに、武器を持った屈強な男たちがいる。取り囲んでいるようだ。
兵士なのだろう。私を逃がすつもりはない、ということだ。
「代理母出産したら、すぐに私を、元の世界に返してくれますか?」
「勿論でございます。褒美もさしあげますよ」
王がにこやかに答えた。その笑顔が恐ろしい。
愛する娘や夫の側に帰るには、異世界エルドラの要求を
受け入れるしかなかった。
受精卵を代理母となる女性の子宮入れ、代わりに出産してもらう。
日本では法的に認められておらず、おもに海外で、ビジネスにも
なっていると聞く。
代理母出産を魔法で行う? そもそもなぜ私なの?
「あの、代理母出産なんて、私には無理です。まだひとりしか
産んだことないですし、産んでまもないですから。どうか他の方に」
「我らの異世界召喚術で、波長が合い、無事に召喚できた経産婦は
貴女様だけだったのです。元気な赤子を問題なくお生みになられた。
我らにはそれだけで十分でございます」
神官と名乗った男性が、淡々と説明した。ようは、子供を出産した
ことがある女性なら、誰でも良かったということ?
「エルドラの女たちはもう、子供を産むことができません。
その苦しみと嘆きがどれほどのものか、貴女様にもお分かり
なのではないですか? 哀れなエルドラの女たちをお救いください」
気の毒だとは思う。想像しかできないが、その苦しみは同じ女として
理解できる。しかしだからといって、異世界での代理母出産を
受け入れる理由にはならない。
「エルドラの赤子を無事に産んでいただけたら、元の世界に戻して
さしあげます。お望みの褒美もさしあげます。もしも、お断り
されるのでしたら……仕方ございませんね。
受け入れてくださるまで、エルドラでお過ごしいただきましょう」
脅しだと思った。この世界に来て初めて恐怖した。
「代理母出産を受け入れなかったら、日本には返さない、
ということですか?」
「我らは追い詰められているのです。どうかエルドラの苦しみを
御理解ください」
そっと周囲を見渡してみた。王や神官たちと思われる人たちの
向こうに、武器を持った屈強な男たちがいる。取り囲んでいるようだ。
兵士なのだろう。私を逃がすつもりはない、ということだ。
「代理母出産したら、すぐに私を、元の世界に返してくれますか?」
「勿論でございます。褒美もさしあげますよ」
王がにこやかに答えた。その笑顔が恐ろしい。
愛する娘や夫の側に帰るには、異世界エルドラの要求を
受け入れるしかなかった。
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