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第一章
楓と信の出会い
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私との出会いが信さんに希望を与えた……? どういう意味だろう。幼かった信さんと出会って、友達になったことは思い出した。
あれ? でもちょっと待って。今まで見てきた水神とハナさんの話は、たぶん今よりずっと昔におきたことだ。となると、二人の子である信さんは、私よりずっと歳上のはず。でも目の前にいる彼は、私とさほど変わらない年齢に思える。
心の中で、何かがかちかちと揺れている。すべてを思い出せと、閉じられた記憶の箱が、騒いでるのを感じる。
「楓、君はもう全て思い出せるはずだ。楓の記憶を封印したのはわたしだが、全てを思い出せるかどうかは君次第だ。無理やり思い出させるようなことはしたくない。怖がらずに、少しずつ思い出してみて」
信さんは私の手を優しくつつみこんだ。少しひんやりとした、なめらかな手。ああ、私、この手の感覚を知っている。彼とはよく手を繋いでいたから。大好きだった信ちゃんの手……。
そう思った瞬間、私の中の記憶の箱のふたが一気に開くのを感じた。思い出の欠片が万華鏡のように少しずつ拡がり、おぼろげだった記憶が繋がっていく。
私は両親を亡くしてまもなく、親戚の家にひき取られた。両親を亡くした悲しみが癒えず、人気の少ない水ノ森神社の湖に来ては、よく泣いていた。
ひとりで泣いていると、どこからか別の子の泣き声が聞こえる。胸に響く、切なくて悲しい泣き声。気になって探してみると、湖の反対側で、同じように泣いている少年がいることに気付いた。
銀色の髪をもつ少年。とても人とは思えない雰囲気なのに、不思議と怖くなかった。泣き続ける少年が少し心配になった私は、彼のそばに行き、聞いてみた。
「あなたはだれ? どうして泣いてるの?」
少年が銀色の髪を揺らしながらゆっくり顔をあげ、私を見た。涙をため込んだような青い瞳に吸い込まれそう。子供でも思わずみとれてしまうほど、奇跡のように美しい少年だっだ。
一瞬私を見た少年は、直後に顔をしかめた。嫌なものを見てしまった、という表情だ。
「君には関係ない」
少しむっとしたものの、傷ついてるだろう少年を気遣い、再度優しく声をかける。
「私も悲しいことがあったの。だから泣きたくなるあなたの気持ち、よくわかるよ。あのね、よかったら一緒に遊ばない? 友達になろうよ」
何があったのか知らないけれど、悲しいことがあったもの同士なら、いい友達になれそう。子どもらしい感覚で考えた当時の私は、気さくに声をかけた。
銀色の髪の少年はちらりと私を見たが、ぷいとそっぽをむいてしまった。
「君とぼくが友達? ぼくは人間が大嫌いなんだ。友達なんて、これっぽっちもなりたくない!」
激しい拒絶。ここまで邪険にされるとは思わなかった。
そこまでなら、今はそういう気持ちになれないんだと思い、黙って引き下がったと思う。でもその後に続いた言葉がいけなかった。
「だいたい君は鏡を見たことがあるの? 君みたいな醜い子と友達になんか、絶対なりたくない!」
あろうことか銀色の髪の少年は、私の容姿を思いっきり馬鹿にしたのだ。
私はただ優しくしてあげたかっただけなのに、本当に友達になれそうと思ったから声をかけたのに、彼は私をいきなり『醜い子』と言い放ったのだ。
美人と評判だったお母さんに、私はよく似てるといわれる。大好きだった両親のことも馬鹿されてる気がした。
なによ、私の気も知らないで。
こうなったら、何が何でも友達になってやるんだから!!
ようやく思い出し始めた信さんとの出会いは、最悪の形から始まったのだ。
あれ? でもちょっと待って。今まで見てきた水神とハナさんの話は、たぶん今よりずっと昔におきたことだ。となると、二人の子である信さんは、私よりずっと歳上のはず。でも目の前にいる彼は、私とさほど変わらない年齢に思える。
心の中で、何かがかちかちと揺れている。すべてを思い出せと、閉じられた記憶の箱が、騒いでるのを感じる。
「楓、君はもう全て思い出せるはずだ。楓の記憶を封印したのはわたしだが、全てを思い出せるかどうかは君次第だ。無理やり思い出させるようなことはしたくない。怖がらずに、少しずつ思い出してみて」
信さんは私の手を優しくつつみこんだ。少しひんやりとした、なめらかな手。ああ、私、この手の感覚を知っている。彼とはよく手を繋いでいたから。大好きだった信ちゃんの手……。
そう思った瞬間、私の中の記憶の箱のふたが一気に開くのを感じた。思い出の欠片が万華鏡のように少しずつ拡がり、おぼろげだった記憶が繋がっていく。
私は両親を亡くしてまもなく、親戚の家にひき取られた。両親を亡くした悲しみが癒えず、人気の少ない水ノ森神社の湖に来ては、よく泣いていた。
ひとりで泣いていると、どこからか別の子の泣き声が聞こえる。胸に響く、切なくて悲しい泣き声。気になって探してみると、湖の反対側で、同じように泣いている少年がいることに気付いた。
銀色の髪をもつ少年。とても人とは思えない雰囲気なのに、不思議と怖くなかった。泣き続ける少年が少し心配になった私は、彼のそばに行き、聞いてみた。
「あなたはだれ? どうして泣いてるの?」
少年が銀色の髪を揺らしながらゆっくり顔をあげ、私を見た。涙をため込んだような青い瞳に吸い込まれそう。子供でも思わずみとれてしまうほど、奇跡のように美しい少年だっだ。
一瞬私を見た少年は、直後に顔をしかめた。嫌なものを見てしまった、という表情だ。
「君には関係ない」
少しむっとしたものの、傷ついてるだろう少年を気遣い、再度優しく声をかける。
「私も悲しいことがあったの。だから泣きたくなるあなたの気持ち、よくわかるよ。あのね、よかったら一緒に遊ばない? 友達になろうよ」
何があったのか知らないけれど、悲しいことがあったもの同士なら、いい友達になれそう。子どもらしい感覚で考えた当時の私は、気さくに声をかけた。
銀色の髪の少年はちらりと私を見たが、ぷいとそっぽをむいてしまった。
「君とぼくが友達? ぼくは人間が大嫌いなんだ。友達なんて、これっぽっちもなりたくない!」
激しい拒絶。ここまで邪険にされるとは思わなかった。
そこまでなら、今はそういう気持ちになれないんだと思い、黙って引き下がったと思う。でもその後に続いた言葉がいけなかった。
「だいたい君は鏡を見たことがあるの? 君みたいな醜い子と友達になんか、絶対なりたくない!」
あろうことか銀色の髪の少年は、私の容姿を思いっきり馬鹿にしたのだ。
私はただ優しくしてあげたかっただけなのに、本当に友達になれそうと思ったから声をかけたのに、彼は私をいきなり『醜い子』と言い放ったのだ。
美人と評判だったお母さんに、私はよく似てるといわれる。大好きだった両親のことも馬鹿されてる気がした。
なによ、私の気も知らないで。
こうなったら、何が何でも友達になってやるんだから!!
ようやく思い出し始めた信さんとの出会いは、最悪の形から始まったのだ。
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