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白百合、討伐隊と黒鷲
しおりを挟むガッ、バスッ
「勝者、シルヴィア殿!」
「…なんて奴だ。負けたよ、黒鷲殿!!」
ビートルドはニカッと笑顔で手を出す。
「いや、対魔物は私の専門外だ。皆には教わる事が沢山有ると思う。宜しく頼む」
シルヴィとガシッと握手を交わすとほかの隊員達が駆け寄って行く。
「黒鷲の姉ちゃんすげぇな!」
「そりゃ、領主が惚れるもんだ」
「違う日で良いから俺ともやってくれよ!」
皆は口々にシルヴィを褒める。
私が予防線を張るまでも無かったかな、シルヴィなら大丈夫そうだ。
私のせいでシルヴィが何か言われるのは嫌だからね、心配をし過ぎたかな。
「良い奥方を娶りましたね、領主」
「あぁ。ありがとう、ザガン。私の自慢だ」
「其方もですが、久々にアレが見られて感動致しました。一つも衰えてはいない。また剣を握るというのは?」
「無いな。戦術やその他の対応も大事な役目だ」
「それは、それは…、勿論で御座います。領主の其れに勝る者は居ません」
「ザガンは相変わらず、私を買い被り過ぎだね」
「……領主は自分の事を卑下し過ぎで御座いますよ」
「違うよ、力量を把握していると言って欲しい」
ザガンと口論をしているとシルヴィが此方へやって来た。
「お疲れ様、シルヴィ。怪我は無い?」
「あぁ、大丈夫だ。着替えて来る」
「分かったよ、先程のマリスに連れて行って貰ってね。行ってらっしゃい」
「行ってくる」
パタパタとシルヴィはマリスの元へと向かう。
「溺愛ですねぇ」
「そう見える?」
「ええ。失礼かもしれませんが、あの領主がこんなにも誰かを愛されているだなんて驚きです」
「ははっ。愛を知ると人間は変われるらしい。
私は変われたかな?」
「とても良い方向に」
「それは、良かったよ」
「いや~久々に完敗ですな!黒鷲殿があんなにお強いとは!」
「お疲れ、ビートルド。彼女は父と良い所まで戦える人だ」
「なんと!それは、私では歯が立ちませんな!」
ビートルドはガハハと爽快に笑っている。
けして彼が弱い訳では無い。シルヴィが強いのだ。
尚、父と祖父、トムソン爺やなんかは化け物だ。一緒にしてはならない。
「皆の者。分かって貰えたと思うが、彼女は強い。だが、魔物が人間と違うという事は皆がよく知っているだろう。
これから共に戦う戦士として、シルヴィを宜しく頼む。今日はこれまでだ」
「「「押忍!!ありがとう御座いました!」」」
「…では、引き続き励んでくれ」
私は皆に最後の挨拶を済ませ、シルヴィを別室で待つ事にした。
「待たせた」
「ううん、大丈夫だよ。さぁ、帰ろうか」
「帰るのか?」
「もう少し居る?」
「いや、それは良いのだが…」
「ふふ、そうだね。晩御飯は外で食べようか」
「良いのか?」
「大丈夫だよ。仕事沢山してきたからね」
「実は寄りたい所が有るのだ…」
「良いよ、そこにも行こう」
どうやら、シルヴィがこの領地で行きたい所が有るらしく用意していた馬車に乗り、向かう事にした。
「何処に行きたいのかな?」
「魔道具屋だ」
「あぁ~。確かに、王都には少ししか出回らせて無いから面白いかもね」
「此方の魔道具は凄いと聞いたのでな。一度見てみたかったんだ」
我がアルディアン領の特産物は魔物だ。
その用途は多岐に渡る。
その魔物から採取するもので魔道具を作る事も有るのだ。
色々な方法で家畜化出来たものも有るが、まだ領地以外では中々出回らないものも多い。
魔道具の開発チームを作り、発展させている最中である。
「近くに良い魔道具屋が有るよ。そこに向かおうか」
「ありがとう、楽しみだ」
馬車を少しの間走らせると、小さな家が見えてくる。
「あれだよ」
そう言って指差すとシルヴィは目を真ん丸にした。
「あれか?看板も何も無い、ただの民家に見える」
「ふふ、多分余り商売するつもりは無いんじゃないかな?」
馬車から降り、扉を叩く
「アリー、居るかい?」
『居らん』
ガチャ
「返事はしてくれるよね、アリーは。
久しぶりだね、今日は奥さんを連れて来たよ」
「けっ。居らぬと言っておるのに毎度毎度厚かましい領主じゃな」
「ははっ、元気そうだね。
シルヴィ、彼女はアリー。少し気難しけれど凄腕の魔道具師だよ」
「初めまして。シルヴィアと申します」
「気難しいは余計だな。アリーじゃ、自由に見ると良い」
「ありがとう御座います」
シルヴィは丁寧にお礼を言う。
アリーの店は外見はただの民家だが、中は硝子のケースに入った魔道具が所狭しと並んでいる。
道具の横に端的に説明が有り、分かりやすい。
高齢な為に弟子は取っておらず、こうしてひっそりとやっているのだ。
「…凄いな」
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