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白百合、小さき頃の記憶

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「ん?何故だろうね。
その様子だと、聞いているかな?シルヴィのお陰で私は変われたんだ。
貴女のお陰で自分に出来る事を見付けた」

「それは、全部カミュの力だ」

「ありがとう。でもね、シルヴィを好きになる迄知らなかった。

まさかこの手に出来るなんて未だに夢の様だよ」

「……夢では無い」

「ふふ、そうだね。
何度でも言うよ。お嫁さんになってくれてありがとう、シルヴィ」

「…私は何も返すものが無い」

「返そうなんて思わないで?貰って?」

「それでは分が悪い」


「ん~…………じゃあ、邸に帰ってもそんな風に可愛い格好をしてね」

「え?」

「とっても似合ってる。シルヴィは、色んな服が似合うんだね」

「お義母様の見立てが良いんだ」

「素材あってこそだよ?」

「ふっ、それお義母様にも同じ事を言われた」

「そうなの?」


コロコロとシルヴィは笑う。
やっと、笑顔を見せてくれて安心した。
本人もこの服を気に入っているらしい。


これは、お買い上げだな。


実は邸に有る服は全部母から買っている。
母は独自のブランドを持っていて、最近は貴族からの覚えも良い。
私も色々と独自の資産が有る為、そこからお買い上げしている。

二人で楽しくお喋りをするのも、何だか久しぶりな気がする。

私が来るまでの間の事を聞くと、シルヴィはここで見た可愛い物を目を輝かせながら話してくれた。


「ここはカミュが小さい頃に住んでいた所だと聞いた」

「そうだよ、だから余り良い思い出が無い」


自然と出てしまった言葉に気付いた時には、シルヴィは悲しそうに眉を下げてしまっていた。


「…すまない、思い出させてしまったか?」

「ごめん、ごめん。気にしないで?過去は過去だし」

「そうだが…」


「そうだね…、もしあの頃の自分に会えるなら私は身体が大きく無くても幸せに成れたよと言ってあげたいね」

「カミュは、今幸せなのか?」

「うん、とっても」

「そうか」


安心したのかシルヴィは笑顔になり、スっと立ち上がった。

此方へ歩いてくると、座っている私を抱き締めた。


「頑張ったんだな」


温かい。


とてもびっくりしてしまったが、シルヴィから抱き締めてくれた事に喜びを感じる。

そして、小さい頃の自分を抱き締めてくれている様な感覚になった。


私は幸せだよ。

こんなに素敵なお嫁さんが来てくれたのだから。


そのままグイッとシルヴィを引っ張り膝の上に座って貰う。
シルヴィはびっくりして目を瞬かせていたが、顔が近かったからか真っ赤になってしまった。


「ありがとう、シルヴィ」

「こここ、ここは変じゃないか!?」


膝をギュッと握り締めながら動揺しているシルヴィはとても可愛い。

後十着くらい買うか。
いや、二十でも足りないかもしれない。


「もっと抱き締めてくれても良いよ?」

「……調子に乗るな。重いだろう、下ろしてくれ」

そう言うとそっぽを向いてしまった。

「ふふふ、大丈夫だからもう少しだけ」

「……もう少しだけだ」


暫く膝の上のシルヴィを愛でていると、扉を叩く音が聞こえた。

『カミーユ様、旦那様がシルヴィア様との手合わせをお待ちです』


「後にしてくれ」

「いやいやいや、向かいます!今すぐ!」


シルヴィは助け舟が来たとばかりに勢い良く立ち上がり、扉に向かってしまう。


父上とは絶縁しなくてはいけないかもしれないな。



「では、此方へ。御召替えの後に、鍛錬場にお連れ致します。カミーユ様は鍛錬場にてお待ち下さい」

「はぁ…、分かったよ。シルヴィをお願いね」

「畏まりました」



渋々だが、シルヴィと別れて余り良い思い出の無い鍛錬場へと向かう。


「おう、カミーユも来たか」

「私は鍛えないよ」

「な、なんだ。そうか…」

嬉しそうな顔が一転、父は項垂れてしまった。

「あなた、そんな顔をするもんでは有りませんよ。カミーユ、良かったわね」

「はい、母上。あちらは後でお買い上げさせて下さい」

「ふふふ、あれはプレゼントするわ」

「では、後程何着かまた見繕って頂ければと」

「任せて♪サイズの詳細も分かったから、微調整して明細送るわね」

「宜しくお願いします」

「腕が鳴るわ~♪」




「カミーユ、幸せか?」

母と話していたら、父が肩を掴んで来た。

「はい、とても」

「そうか…。本当に良かった…」

「父上…、ありがとう御座います。私はもう、大丈夫ですよ」

「強く、なったのだな」

「シルヴィのお陰です」

「そうだな…黒鷲殿、アレは良い女だ。離しちゃならねぇぞ」

「えぇ。そのつもりは御座いません」






「お待たせしました」


鍛錬場の扉が開かれ、着替えたシルヴィは
黒の上下に、金の刺繍が入った訓練着を着ている。


真っ直ぐと前を向き、美しい呂色の髪が靡くその姿は正に、私が惚れた帝国の黒鷲そのものだ。

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