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白百合・黒鷲、すれ違う

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「カミーユ様、二日連続は流石に私には対処出来かねます」


「仕事はちゃんとしてるじゃんか~」

「鬱々としているのが移ります」

「けち」


自分の可愛らしい顔を駆使して頬を膨らませてみたが、ノエルに物凄い目で見られた。

私が主だよね?

「そんな事より今日は仲良くして頂かないと、明日には大旦那様に会いに行かなくてはなりませんので。

今日はもう重要な書類は終わりました、早く行きやがれで御座います」

「え、ちょっ」

グイグイと扉の方に押されて外に出されてしまった。

え、私が主だよね?



仲が悪い訳では無いのだ。
シルヴィが可愛過ぎるのが深刻なのだ。

仕事の事は気になるがノエルでも何とかなるだろうものしか残っていないし
シルヴィに会えるなら良いか、と切り替える事にした。

引き篭って居るであろう、シルヴィの部屋をノックする。


応答が無い。

疑問に思い、悪いと思ったが部屋を開けた。
シルヴィの部屋は無抜けの殻だ。



だが、窓が開けられている。


すると、殺気を感じて顔をズラすと矢が頬を掠めた。


嫌な予感がする。




そこには矢文が付けられていたので、広げた。



【親愛なるカミーユへ


君の愛しの黒鷲は私の邸にご招待した。

返して欲しくば鍛えて来る事だ 


君の一番の理解者 パパより】



やられた!!!!!


「あんの脳筋爺!」

静かだから安心してしまっていた。
誰よりもシルヴィを喜んだのは父だというのに。

脳筋は偶に突拍子も無い事をするので、行動が全く読めない。
未だに、父と祖父を完全に制限出来た試しが無いのだ。


矢文をグシャグシャと潰し、ノエルの所へ向かう。



「あれ?どうされましたか?」


直ぐに帰って来た私にノエルは不思議な顔をした。

「やられた」

そう言ってバンッとグシャグシャにした矢文を置いた。
ノエルは何事かとその矢文を解く。

「……!こ、これは…」

「という訳だから、連れ戻しに行ってくる」

「少々お待ち下さい」

と、今にも走り出しそうな私を止め目の前に書類の山を差し出す。

「何、これ」

「向こう一週間の分です」

「え、これ持って行けって言うの?」

「いえ、今やって頂きます。
大奥様もご一緒でしょうし、彼処は安全です。
明日でも大丈夫だと思われます。あちらもそのつもりでしょう、元々の予定ですし。
なので、此方を終わらせてから行って下さい」

「………鬼畜」

「うるさい、やれ」

ノエルの言う事は正しいのは私も直ぐに分かったので、渋々一週間分の書類に目を通す事にした。





私は先程とは打って変わって脅威の速さで仕事を終わらせて、邸を飛び出した。


「じゃっ、行ってくる!」


「…出来る癖に、最初っからやって欲しいよな…」

ボソッとノエルが呟いたが無視して、馬に跨りシルヴィが待つ別荘へと向かう。




*******


「うふふ~私、娘が欲しかったのよね~。ビスケットはいかが?」

「はい、頂きます」


私は何故か妖精さんとお茶をしている。



部屋で引き篭っていると、人の気配を感じて後ろを見た。
すると今にも部屋に侵入してくる男がいた。

咄嗟に後ろに飛び、自室に置いてある剣に手を置いた。


「おぉ~まさか、気付かれるなんてな!でも、ちょっとばかし顔貸してくれ!」

彼はそう言うと居なくなった。
気付いた時には下から表れた男に何かを嗅がされて、意識を失っていた。




目覚めると、とても可憐な女性がニコニコして居て何故かお茶会が開かれていた。
女性を見た瞬間、カミュの母上だと直ぐに分かってしまったので騒ぎ立てる事も無かった。

予想以上の可愛らしさ、可憐さ。
カミュと二人対のドールが売られていたら買ってしまう。
声まで砂糖菓子の様だ。

「ごめんなさいね、あの人ちょっと極端なの。
私達の事は何者か分かっているのかしら?」

「はい、お義父様とお義母様でいらっしゃいますね?」

「せいか~い♪流石ね♪」

「ご紹介が遅れまして申し訳御座いません。
シルヴィアと申します」

「いいえ、良いのよ。本当だったら明日ご紹介して貰える筈だったもの。
それに、失礼をしたのは此方だわ。

あの子がね、幸せなのか知りたいの」

「……それは、どういう…?」


「あの子は私に似てしまったから身体が育たなくてね…。
一人息子だから、領主になるのは絶対条件よ。
ここは力が全てみたいな所も有るし、お爺様やお父様は本当にお強い方だったから期待も大きかった。
でも、どうやっても見た目は変わらなかったわ。

とても傷付いたと思うの…。だからかしら、自分の身を守る為に色んな知識を身に付けていったわ。図書館の本は隅から隅まで読むような子だったのよ。まるで取り憑かれたかの様に。

色んな人に認められ出しても変わらなかったわ。
何かに追われるように知識を身に付け、周りを固めた。

でもね、ある日貴女を見付けたの」




「私を、ですか?」

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