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「2人ともいらっしゃ~い♪」

「ファミーユ様、お久しぶりです」

「師匠。突然すみません、戻りました」

「良いのよ。マリーちゃん元気だった?もし今日時間があったら、全身をお願いしたいんだけれど…」

「はい、私は大丈夫なので後でお伺いしますね」

「ありがと~、カレンは部屋に引き篭っているわ。行ってあげて貰えるかしら?」

「ありがとうございます、そうさせて下さい」


今日はこの様な時の為に見繕ったツーピースの丈の長いワンピースを着ている。
カレンに教えて貰って貴族御用達のお店で買ったものだ。
化粧道具もカレンと一緒に揃えた。

生活費が要らない為、稼いだお金はほぼほぼ貯金していたのでそれを使った。
目玉飛び出る程高かった。貴族御用達怖い。


ファミーユ様にご挨拶が終わったので
侍女さんにカレンの部屋に連れて行って貰う。

コンコン

「カレン様、お客様です」

『今日は居ないと言って』

「カレン、私だよ。マリーだよ」



ガチャ!

「マリー!?どうして…」


カレンは侍女さんを下がらせ、私をとりあえず中に入れてくれた。
2人で横長のソファに座り、カレンの手を取る。

「突然来てごめんね、心配だったの」


カレンの両手をギュッと握り、想いを伝える。

「マリー…、来てくれてありがとう」

そう言ってカレンは私に抱き着いて肩を震わせていた。
カレンから抱き着いてくるのなんて初めてだ。
暫くカレンの小さな身体を抱き締めて背中を撫でた。
すると、落ち着いたのか深い呼吸を一息付いてポツリと話し出してくれる。

「あの後、エディが追い掛けてきたの。
でも、何も言えなかったわ…。
貴方が好きだから悲しい、と言えたらどんなに楽だったかしら…でも、エディの重荷になりたくないの。
あの人は自由よ。そんなあの人を好きになったんだもの、私はそれを縛れない。

エディは訳も分からず泣いている私に謝って、頭を撫でてくれたわ。
それは、まるで小さな子どもをあやす様に」

「カレン…」

「この季節が明けたら私は16歳になるわ。
その歳になる迄に、私は色々と変わらなければならないの。
今からお母様に婚約者の選定をお願いするつもりよ。
これ以上、傷付くのは嫌。
エディよりもっともっと素敵な旦那さんにして貰うわ」

カレンはとても苦しそうに笑顔を作る。
エディの性格はよく知っているので、それがどうしようも無い事だと分かってしまった。


「今日1日だけは泣いて吐き出すつもりだったの。1人だと鬱々としてしまっていたのだけれど、マリーが来てくれて良かったわ。

マリーったらエディに掴みかかったんでしょ?殴られるかと思ったってエディが怖がっていたわ」

クスクスと真っ赤な目をしてカレンは笑う。
痛々しくて、それでも前を向こうとするカレンが愛おしかった。



私はそんなカレンをもう一度抱きしめた。


「…マリー?」

「私、何も出来ないけど傍に居るわ。
カレンがエディに想いを伝える事をしないと言うならそれでも良いと思う。
傍に居られなくなる怖さなら、私にも分かるから。
だから、私カレンの旦那さんになる人がもしカレンを虐めたらいつでもぶん殴りに行くよ」

「ありがとう、マリー。私、とっても強いんだけれどマリーには負けるかも。だから、頼りにしてるわね」

「うん!絶対だよ!」

「約束するわ」

「破ったら針千本飲ますからねっ」

「何、それ。マリーの元の世界の拷問なの?」

「違うよ、例えだよ!破ったら痛い目みるぞ~って事!」

「怖い世界ね」


2人同時に吹き出し、笑い合う。

カレンの未来の旦那様に期待しよう。こんなに素敵なレディなんだもの、きっと愛して貰える。
エディとそうなる事が幸せとは限らない。
だけど、違う期待もしてしまう。


エディが早くこの素敵なレディに気付く事に。

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