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「ごめんね、ゲイル。落ち着いた」

「そうか、良かった。…カレンの事、聞いたのか?」

「うん。ゲイルも知ってるの?」

「エディを好きな事は何となく気付いていたが、今日確信した。
婚約者の話しは師匠から聞いていたんだ」

「そっか。アレンもごめんね、驚かせて」

『良い、良い。なんじゃ、カレンの為にそんなに目を赤くしているのかえ?』

「うん、、」

『まぁ、あの馬鹿が余計な事でも言ったんじゃろ』

「その通りだ」

『はぁ…、彼奴は最近まで剣の事にしか興味が無かったような奴じゃ。脳みそが筋肉で出来ておるわ』

「あ~そうだった、忘れてた…」

そうだ。
大人になったとはいえ、元の性格が大きく変わる訳では無い。
知っているでは無いか、エディは猪突猛進タイプ。
剣のことが頭の10割を占めている、そんな人だった。
恋愛のれの字も知らない可能性がある。
余り、人の事言えないかもしれない。

「あの後、上手くいってくれたら良いんだけど…」

「あぁ、期待は出来ないがな…」

「それも、そうだね…」


『2人してそんな顔をするで無いぞ。久々にマッサージでもすれば良いでは無いか』

「うん!そうしよう!
ゲイル、久々に練習台お願いします!」

「分かった。お願いする」

私は部屋に戻ってゲイルにハンドマッサージする為に精油を取りに来た。
わたしが仕事をする様になってからゲイルにする回数はとても少なくなっていたので、ちょっと嬉しい。
意気揚々と最近種類を増やし過ぎた精油を選んでいると、ふと思った。

私、ゲイルと手繋いでしまっていなかったか?


「ぎゃーーーーー!!!!」



パタパタパタパタ、、コンコン

『マリー?凄い声がしたが、大丈夫か?』

しまった。思い出してつい、叫んでしまっていた。

「だだだだ、大丈夫!ごめん、直ぐに行くね!下で待ってて!」

『…分かった。待ってる』


マッサージやら、エスコートやらで
触って来た人間が今更手を繋いだくらいで騒ぐな。と言いたい所だろうが
気持ちを理解してからの、という所が肝心である。

とりあえず深呼吸をしてお仕事モードに切り替える事にした。


「おまたせしました」

「あぁ、大丈夫だったのか?」

「うん、ちょっと虫がいたの」

「そうだったのか、もし何かあったら遠慮なく言ってくれ」

「ありがとう」


言えないよね。
貴方と手を繋いだ事を思い出して叫びましたなんて。


「本当に久しぶりだね」

そう言って私はマッサージを始める。
キャリアオイルにベルガモット、ジャスミン、フランキンセンスのブレンドにした。


「今日のブレンドは心を落ち着ける感じにしてみました」

「本当だ。とても良い香りだな…」



施術を進めていくとゲイルが眠くなってしまったのか、うつらうつらしている

「ゲイル、少し眠りますか?」


「あ、あぁ。ごめん、ねようかな」

眠過ぎて少し言葉が幼くなっている。可愛い。
ノロノロと立ち上がり、フラフラと自分の部屋に向かっている。
それが、とても危なっかしい。


「危ないっ」

扉にぶつかりそうなゲイルを止めて、私が扉を開ける。
ぼやっとしたままのゲイルをベッドへ誘導し、ベッドに入ったらゲイルは直ぐに眠ってしまった。

ゲイルがこんなに眠そうにしていたなんて珍しい。
頑張って勉強していたのだろうか?
トントンとリズムを刻んでいた手を止めて部屋を出ていこうとする。

すると、動けない事に気付いた。




「マリー、ここにいて…」

そう呟いて、またスっと眠ってしまった。
ゲイルの手が私の手をがっしり掴んでいる。


え?
どうしよう、これ。

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