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しおりを挟む「お~い、お二人さん。やっと見付けた~♪」
「え、エディどうしてここに!?」
「アレンから聞いたんだ」
「ゲイルも!?」
どうやら長く話し過ぎた様で、2人が迎えに来てくれた。
アレンのお喋りめ。
「俺たちもま~ぜて♪」
そう言ってエディは丁度空いていた隣の席に座り、飲み物を注文した。
「すまない、エディが行くと聞かなくて…」
「大丈夫だよ。ゲイル、今日はもう大丈夫なの?」
「あぁ、今日はもう大丈夫だ」
そう言ってゲイルはとても柔らかい顔をした。
その顔を見てエディとカレンが唖然としている。
「たまげた…。ゲイル、お前変な物でも食ったか?」
「ん?何の事だ?」
「…これ無自覚なのか、マリーちゃん」
「その様なんです…」
「ちょっと、思ったより良い雰囲気なんじゃない。私、あんな顔初めて見たわよ」
横に座ったエディを押し退けて私の隣に座ったカレンに、小声で囁かれて小突かれてしまった。
「そ、そうなのかな?」
私の顔は真っ赤だ。
確かにゲイルが最近笑顔が増えた気がしていたのだ。
他の人に言われると実感が嫌でも湧いてしまう。
「それより、カレン。俺の事避けてるだろ?」
「うるさいわよ。自意識過剰なんじゃないかしら」
「じゃあ、俺の勘違いかな?」
「そうね」
カレンはエディが気付いていた事が嬉しかったのか茹でた顔を隠すように俯いてしまっている。
エディは久々に話せた事が嬉しかったのだろう。ニコニコしてカレンを眺めている。
おや?これは、脈アリなのでは?
「聞いたぜ、16歳になったら婚約者決めるんだろ?それが知られるのが恥ずかしいからって、カレンは相変わらず子どもだなぁ~。
ちゃんとその時は俺にも紹介してくれよな!」
「あ」
地雷踏み抜いたぞ、この馬鹿。と思ってつい声出ちゃったよ。
「~~ーーー!エディの馬鹿!」
カレンは顔を真っ赤にしてそう言うと、店から飛び出てしまった。
プツンと音がしただろう。
え、え?と戸惑っているその馬鹿の胸倉を掴み上げる。
「おい、何してる。早く追いかけろ、馬鹿が」
「は、はい?」
さらに疑問符を浮かべている馬鹿に鉄拳の一つでもお見舞いしてやろうかと思った時、ゲイルがエディの襟ぐりを掴みポイッと店の外に放り投げてしまった。
「俺の妹泣かせんなよ。ほら、行け」
「…!分かった!ごめん!」
多分、余り分かっていないだろう。
走り出したエディの背中を見て私はまだ鼻息を荒くしている。
すると、頭の上に手が置かれた。
「マリー。カレンの為に怒ってくれてありがとう。
だが、2人の問題だ。だから、泣くな」
遣る瀬無い。
カレンの気持ちを知ってしまった後だ。
ゲイルは私に着ていた上着を頭から被せて泣いている顔を隠してくれた。
「ちょっと待っていろ」と私を店の外に出し、お会計を済ませて戻ってきた。
スマート過ぎる。結局ゲイルに奢らせてしまった。
まだ、涙が止まらない私の手を握り引っ張りながら家路に着く。
右手からゲイルの温もりを感じて、何だかもっと涙が溢れた。
私が泣いたってしょうがない。そう思うのに、左手で拭っても、拭っても悲しくてしょうがなかった。
家に着くと、アレンの横に座らされてしまう。
急に帰って来た私達にアレンは驚いていたが、状況が分からないからか様子見している。
いつかの様にゲイルは甘いホットミルクを私に入れてくれた。
それはやっぱり、幸せの味がする。
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