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しおりを挟む全速力だ。
中々良いタイムが出ている気がする。
やっとの事で森まで走ってきた。
森に来た事で気が抜けてしまい、その場に座り込んでしまう。
「……ふっ……う、……………」
悲しかった。
教えてくれたら良かったのに。
そうすれば、いつでも離れていくのに。
ゲイルの幸せの為なら、この幸せな毎日をいつでも手放す気なのだ。
秘密にされた事が苦しい
そう思うと涙が止まらなかった。
自分で自分自身を抱き締め、涙が止まるのを待つ。
「っはぁ、はぁ……マリー?」
追いかけて来てくれたのであろう、ゲイルが私を呼ぶ声がする。
本当に優しい人。
だが、今その優しさは罪だ。
「…泣いているのか?」
「来ないで!!…今、見せられる顔じゃ無いから…」
頑張って走ったのに、何とも複雑だ
近付こうとしたゲイルが私の言葉で止まる音がする。
「き、綺麗な人だね…言ってくれたら良かったのに…。
私!出て行くね!流石に恋人同士の邪魔は出来ないし…!」
そう言って、ゲイルに背を向けたまま震える脚を戒め立ち上がった。
すると、肩をグイッと引っ張られ
後ろからゲイルに抱き締められていた。
「…マリー、何か勘違いを…している」
ゲイルはまだ肩で息をしていて、少しくすぐったい。
優しい温もりに、止まりかけていた涙が再び溢れてしまう。
「だって…な、…何も、言ってくれない…からっ……」
「ごめん…。まだ、恥ずかしくて言えなかった。涙が止まったら、話をしよう」
「うん…」
何とか紡いだ言葉を優しく受け止めてゲイルが囁く。
それから暫く、私の涙が止まるまで抱き締めていてくれた。
涙が止まると私を近くの木の上にハンカチを敷いて座らせてくれる。
「…あれは先生だ。
今、俺は魔法学の教師になる為に勉強をしている。
試験を終えて、もうすぐ正式に教師免許が取れる所で…その時に話す予定だった。
自信は有るのだが、確実に取れたと分かるまで待って手元に来てから驚かそうと思っていた。すまない」
「え!?先生!?」
衝撃的だ。
盛大な勘違いに気付き、自分で自分を殴りたい。
「マリーを見ていて自分も何かしなければ…いや、何かしたいと思った。
マリーに魔力を教えたり、文字を教えたりして人を教える事に興味を持った。
それで、師匠に紹介して貰った。
あの人はあぁ見えて50代だ。」
なんと、盛大な勘違い再び
「ご、ごめん!!盛大に勘違いしました!」
恥ずかしい。
勘違いでゲイルに心配させ、全速力で逃げてしまい、捕まった挙句号泣している。
埋まりたい、もういっその事埋めて欲しい。
土下座する勢いで頭を下げると、クスクスと笑い声が聞こえた。
幻聴か?
頭を恐る恐る上げると、お腹と口元を抑え笑っているゲイルが居た。
「くくっ、秘密にしていたのは悪かった。だが、マリーは早とちりだな」
今まで見た事が無い笑顔でゲイルは言う。
好き
いい加減認めよう。
自分の気持ちにこれ以上、嘘を付けない。
私はゲイルの事が好き。
それは紛れも無い【恋愛感情】だ。
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