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先程歩き回ったから、とゲイルはマリーをラグの上に寝ているアレンの腹の横に座らせ何もさせてくれなかった。

アレンもクスクス笑いながらここに居たら良いと言ってくれた。
アレンは氷の精霊なので、その毛はひんやりしているのに何だかとても温かく感じた。



その間にゲイルは手早く昼食を作っている。
鶏肉とたっぷりの野菜の入ったサンドイッチとゴロゴロとした大きい具が入ったミルクスープ


やっぱりとても美味しかった。
褒め称えていると、褒められ慣れていないからかゲイルは眉間に皺を寄せて少し耳を赤くしていた。


恥ずかしくなると耳が赤くなるらしい。
多分、本人は気付いていないがアレンは耳方向を見ながらニヤニヤしていた。

何だそれ、食べちゃうぞ?と脳内の私の狼さんが暴走しかけるのを必死に止めた。
精霊狼さんの余裕を切実に見習いたい。
何、あの可愛い生き物。


恥ずかしいと耳が赤くなっている事は、多分お墓まで持って行きます。
ありがとうございます、神様。
あ、私の場合女神様かな?





そうこうしている内に、カランコロンッと呼鈴が鳴った。
ゲイルが対応して、中に促されている。
『ゴーダ商会』は夫婦で経営しているらしく、お2人で来てくれた。

「昨日は夜に連絡を寄越してすまなかった。対応してくれて助かる」

「いえいえー!ゲイルさんとこの使い魔が来たのは驚いちまったが、落ち人さんならしょうがないさね!」

「今日はわざわざ来て頂いて、ありがとうございます」

「あらあら、まぁまぁ!あんたが落ち人さんかい?若い女性だとは聞いてましたが、こりゃまた可愛らしいお嬢さんだこと!私はミミ、こっちが夫のガウエル」



恰幅の良い元気なおば様が奥さんのミミさん。
少し関西のおばちゃんみたいで親近感が湧いてしまう。
口髭がぐるっとある熊みたいな人がガウエルさん。
ペコリと頭を下げてくれる、無口な人の様だ。


事前に私の事はゲイルから伝わって居たらしく、テキパキと外の荷車から袋を取り出す。
ゲイルはガウエルさんと食器や歯ブラシ等の生活必需品の確認をして、私はミミさんと衣類を選別した。

落ち着いたワンピース等を何着か選んで必要最低限に留めた。
前の世界の様な可愛らしいデザインは無いが、下着もレースの見知ったような形の物があった事にとても安堵してしまった。
ゲイルには見えないように下着類はサッと袋から袋へ移動させる。

今なら忍者になれそう。


また、ミミさんが下着の紙袋の中にこっそりと月の物用品も入れといたよと教えてくれた。



昨日はほぼ寝ていたので余り実感が湧かなかったが、同じ屋根の下で推しと暮らす事が現実味を帯びてきているのは目を逸らそう。
居候、私は居候。


「あ、そうだ。ミミさん、オイルってどんな物が有りますか?」

「オイルかい?オリーブオイル、ココナッツオイル、アーモンドオイルが有るよ。後は香りを楽しむ香水用の花の精油だねぇ」

聞くところによると本当に向こうと変わらぬ植物の名前が揃っていた。

「本当ですか!では、アーモンドオイルとお花の精油を見せて頂きたいです!」

「よし、ちょっと待ってな」


ミミさんは疑問符を沢山浮かべながらもそれらを出してくれた。

「わぁ!ラベンダーにベルガモット、ユーカリ、ティートゥリー、ペパーミント、イランイランまである!」



「マリー?何か良い物でも有ったか?」


興奮して大きい声を出していると、ゲイルが見に来てくれた。

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