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第5章 第0騎士団
第10話 本陣への帰還
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「と、まぁこんな感じで、いろいろな任務をこなしつつ、ここに来たってわけだ。」
「確かに濃い経験を積んできたようだの。」
ラインバッハはルーズハルトの経験談を聞き、目を細める。
見た目が若いだけに軽んじられるだろうが、おそらく自分たちには言えない任務も大いにこなしていることはうかがい知れた。
ルーズハルトもまたラインバッハたちには神様の話や、魔王・勇者についての話はかなりぼやかしたり伏せたりして伝えていた。
その他裏の任務などについても伏せている。
さすがにそこまで話すわけにもいかず、話せる範囲で話したが、ラインバッハの態度から、ある程度察しているなとは感じていた。
「ルーズハルト殿……ぜひ私をあなたの部下に加えてください!!」
何を思ったのか、唐突にゲイツは地面に片膝を付き首を垂れた。
ゲイツは当初ルーズハルトの事を疑っていた。
その若さで影の部隊に所属しているなど妄言も甚だしいとさえ思っていた。
しかし聞かされた話にはリアリティがあり、何よりも自分の一番尊敬している父親が、ルーズハルトの話を信用していた。
それだけでルーズハルトを信用するに値すると感じたゲイツは即行動に移したのだった。
「やめんかゲイツ!!」
「しかし!!」
ラインバッハの一喝に我を取り戻したゲイツは、慌てて椅子に座りなおす。
だがその目には相当の熱量を帯びており、若干鼻息も荒く決意は揺るぎそうもなかった。
「その申し出はうれしいんだけど、そう簡単にはいかない。それぞれに騎士団にはスカウト役がいるんだけど、その人に目に留まらな限り、コネとかは通用しない。つまり俺個人で雇う事すら出来ないんだ。」
「ではなぜこの話をしてくださったのですか!?」
ゲイツの言葉は至極当然のものだ。
憧れが目の前にいるにもかかわらず、そこに手を伸ばすことさえ許されない。
ならばいっそ知らない方がましだとも言えた。
しかしルーズハルトは少しだけ笑みを浮かべていた。
それが何を意味するのかゲイツには分からなかった。
「ゲイツ殿。今回の作戦であなたはラインバッハ殿を支え、こうしてたくさんの騎士たちの撤退を成功させた。その手腕は間違いなく素晴らしものです。ですが、我々第0騎士団は特殊過ぎる騎士団です。その為には協力してくれる同志が必要になります。ゲイツ殿にはその立場になっていただきたいのです。」
「同志……ですか……」
ゲイツはルーズハルトの言葉を噛み締めるように、何度も繰り返す。
そしてその意味が理解できたのか、ゲイツは迷いが吹っ切れたよう顔を上げる。
「分かりました。その大役お受けいたします!!」
覚悟の決まったゲイツの表情を見てラインバッハは少し驚いた様子を見せる。
話を聞く前とは全くの別人のようだったからだ。
その表情に〝漢〟を感じ取ったラインバッハは、笑みを浮かべている。
どこか好々爺然とした表情は、懸念材料が払しょくされたようでもあった。
「ルーズハルト殿……ゲイツは私が全力をもって育て上げます。なにとぞよろしくお願いする。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
互いに固い握手を交わすルーズハルトとラインバッハ。
期せずして仲間を増やしたルーズハルト。
それを呆れるように見つめるイザベル。
いろいろな思いが交錯していく。
「とは言うものの、それはまだ先の話だな。当面の目標は……まだ撤退戦の途中だってことだな。それと本陣に戻ってからどうするか……正直あまりいい状況じゃないのは確かだな。」
「でしょうな……。あのフェンガー隊長がまともな報告をしているとは思えませんからな。」
ラインバッハの考えに妙に納得してしまったルーズハルト。
あのプライドの塊だったフェンガーが、年齢を重ねたからと言って変わっているとは到底思えなかった。
それに、第3騎士団にいるということはそう言う事だろうと大方察しがついていた。
「こりゃ面倒ごとがもう一つありそうだな。ラインバッハ殿、とりあえずはこの撤退戦を見事にやり遂げて凱旋しましょう。話はそれからだ。」
「ですな。」
こうしてルーズハルトたちは夜明けとともに行動を開始した。
それから2日後。
追撃してくる魔物を退けながら撤退戦を行い、無事に本陣へと期間を話したのであった。
「止まれ!!」
「補給部隊副官のラインバッハだ。」
本陣の護衛に付いていた騎士に止められたラインバッハたち殿部隊は、苛立ちを隠せなかった。
負傷者もおり、早急に救護部隊に治療を頼みたかった。
しかし、これも手続き上の事とどうにか込み上げる怒りに耐え続ける。
「では隊章を見せろ!!」
「これでいいかな?」
ラインバッハは一つのバッジを騎士に見せる。
それは第3騎士団のバッチであった。
それを確認した護衛騎士は、すぐに司令部に伝令を出し、ほどなくして入陣が許可されたのだった。
それからラインバッハは手早く治療の手続きや、報告などを上げる。
事前に報告はまとめて紙に記載しており、それを渡すだけだったが、受け取った文官もどこか訝しがっていた。
それが何なのかこの時ラインバッハだったが、すぐにそれが何を意味しているのか理解することになる。
ルーズハルトはそれが何かおおよそ検討が付いており、盛大にため息を吐いたのであった。
「確かに濃い経験を積んできたようだの。」
ラインバッハはルーズハルトの経験談を聞き、目を細める。
見た目が若いだけに軽んじられるだろうが、おそらく自分たちには言えない任務も大いにこなしていることはうかがい知れた。
ルーズハルトもまたラインバッハたちには神様の話や、魔王・勇者についての話はかなりぼやかしたり伏せたりして伝えていた。
その他裏の任務などについても伏せている。
さすがにそこまで話すわけにもいかず、話せる範囲で話したが、ラインバッハの態度から、ある程度察しているなとは感じていた。
「ルーズハルト殿……ぜひ私をあなたの部下に加えてください!!」
何を思ったのか、唐突にゲイツは地面に片膝を付き首を垂れた。
ゲイツは当初ルーズハルトの事を疑っていた。
その若さで影の部隊に所属しているなど妄言も甚だしいとさえ思っていた。
しかし聞かされた話にはリアリティがあり、何よりも自分の一番尊敬している父親が、ルーズハルトの話を信用していた。
それだけでルーズハルトを信用するに値すると感じたゲイツは即行動に移したのだった。
「やめんかゲイツ!!」
「しかし!!」
ラインバッハの一喝に我を取り戻したゲイツは、慌てて椅子に座りなおす。
だがその目には相当の熱量を帯びており、若干鼻息も荒く決意は揺るぎそうもなかった。
「その申し出はうれしいんだけど、そう簡単にはいかない。それぞれに騎士団にはスカウト役がいるんだけど、その人に目に留まらな限り、コネとかは通用しない。つまり俺個人で雇う事すら出来ないんだ。」
「ではなぜこの話をしてくださったのですか!?」
ゲイツの言葉は至極当然のものだ。
憧れが目の前にいるにもかかわらず、そこに手を伸ばすことさえ許されない。
ならばいっそ知らない方がましだとも言えた。
しかしルーズハルトは少しだけ笑みを浮かべていた。
それが何を意味するのかゲイツには分からなかった。
「ゲイツ殿。今回の作戦であなたはラインバッハ殿を支え、こうしてたくさんの騎士たちの撤退を成功させた。その手腕は間違いなく素晴らしものです。ですが、我々第0騎士団は特殊過ぎる騎士団です。その為には協力してくれる同志が必要になります。ゲイツ殿にはその立場になっていただきたいのです。」
「同志……ですか……」
ゲイツはルーズハルトの言葉を噛み締めるように、何度も繰り返す。
そしてその意味が理解できたのか、ゲイツは迷いが吹っ切れたよう顔を上げる。
「分かりました。その大役お受けいたします!!」
覚悟の決まったゲイツの表情を見てラインバッハは少し驚いた様子を見せる。
話を聞く前とは全くの別人のようだったからだ。
その表情に〝漢〟を感じ取ったラインバッハは、笑みを浮かべている。
どこか好々爺然とした表情は、懸念材料が払しょくされたようでもあった。
「ルーズハルト殿……ゲイツは私が全力をもって育て上げます。なにとぞよろしくお願いする。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
互いに固い握手を交わすルーズハルトとラインバッハ。
期せずして仲間を増やしたルーズハルト。
それを呆れるように見つめるイザベル。
いろいろな思いが交錯していく。
「とは言うものの、それはまだ先の話だな。当面の目標は……まだ撤退戦の途中だってことだな。それと本陣に戻ってからどうするか……正直あまりいい状況じゃないのは確かだな。」
「でしょうな……。あのフェンガー隊長がまともな報告をしているとは思えませんからな。」
ラインバッハの考えに妙に納得してしまったルーズハルト。
あのプライドの塊だったフェンガーが、年齢を重ねたからと言って変わっているとは到底思えなかった。
それに、第3騎士団にいるということはそう言う事だろうと大方察しがついていた。
「こりゃ面倒ごとがもう一つありそうだな。ラインバッハ殿、とりあえずはこの撤退戦を見事にやり遂げて凱旋しましょう。話はそれからだ。」
「ですな。」
こうしてルーズハルトたちは夜明けとともに行動を開始した。
それから2日後。
追撃してくる魔物を退けながら撤退戦を行い、無事に本陣へと期間を話したのであった。
「止まれ!!」
「補給部隊副官のラインバッハだ。」
本陣の護衛に付いていた騎士に止められたラインバッハたち殿部隊は、苛立ちを隠せなかった。
負傷者もおり、早急に救護部隊に治療を頼みたかった。
しかし、これも手続き上の事とどうにか込み上げる怒りに耐え続ける。
「では隊章を見せろ!!」
「これでいいかな?」
ラインバッハは一つのバッジを騎士に見せる。
それは第3騎士団のバッチであった。
それを確認した護衛騎士は、すぐに司令部に伝令を出し、ほどなくして入陣が許可されたのだった。
それからラインバッハは手早く治療の手続きや、報告などを上げる。
事前に報告はまとめて紙に記載しており、それを渡すだけだったが、受け取った文官もどこか訝しがっていた。
それが何なのかこの時ラインバッハだったが、すぐにそれが何を意味しているのか理解することになる。
ルーズハルトはそれが何かおおよそ検討が付いており、盛大にため息を吐いたのであった。
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