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第4章 学園生活

第42話 3人の岐路

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 国王ウェルズからの手紙を読み終えたサイファは、燃え尽きた篝火のように輝きを失っていた。
 そして力尽きたようにうなだれると、すぐさま秘書官を呼び出し書類の準備を進めさせた。
 必要な書類はすぐに準備され、それほど時間もかからずにルーズハルトは自主退学ということが決定したのだった。
 さすがのルーズハルトもそれには驚いたが、サイファから見せられたウェルズからの手紙を読んであきらめの境地となっていた。

 すべての手続きも時間がかからず、ちょうど授業中ということもあり、宿舎には生徒の影は見つからなかった。
 ルーズハルトはそれを好機とばかりに、自室の整理を行う。
 というもののそれほど多くの荷物は置いてなく、リュック一つに収まる程度の物しかなかったりする。
 すべての準備が整い宿舎を後にしたルーズハルト。
 心残りがあるとすれば、もう少し学園生活を満喫したかったということだろうか。



 「ルー君⁈」

 誰にもあいさつすることなく校門まで来たルーズハルトだったが、ついに出会ってしまったのだった。
 できれば会いたくない相手に。

「なんでエミーとバイトがいるんだ?まだ講義の真っ最中だろ?」
「勘!!」

 数日見なかっただけなのに、なぜか懐かしく感じたエミリアのどや顔。
 ルーズハルトは思わず笑いがこみあげそうになってきた。
 それと同時に、この子を守りたいと強く思えたのだ。

「エミーがどうしてもここへ行くって聞かなくてね。それにしてもその荷物……本当にやめるのか?」
「あぁ、やりたい事ができたからね。ここに居てもそれができないなら、ここを出るしかないだろ?」

 バイトはルーズハルトの雰囲気が変わったことに気がついていた。
 それがなにかまでは分からなかったが、一つ成長をしたのだと感じていた。

「でも!!」
「やめようエミー。ルーハスさんやオーフェリアさんも了承してるんだろ?だったら俺からはなにもないよ。なぁ〝真一〟……死ぬなよ?」
「あぁ、またな〝伊織〟。エミー……〝綾〟も……頑張れよ!!」
「ルー……〝シンちゃん〟……」

 この時、少年たちは別れを迎えた。
 本来であれば現代日本で高校を卒業する時に行われるはずであった旅立ちと別れ。
 ついにその時が来たのだった。

「バイバイ、伊織!!バイバイ綾!!またな!!」

 ルーズハルトはこの時ばかりは、現代日本にいた頃の葛本くずもと 真一しんいちに戻っていた。
 バイトとエミリアも同じで、ルーズハルトの旅立ちを友として見送ったのであった。


 
「ねぇ……バイト君……私達もいつか離れ離れになるのかな……」
「さぁ?こればっかりはわからないさ。」

 エミリアは寂しさを紛らわすように、バイトの服の裾をくいっとつまみ引っ張る。
 その少し幼児化した行動にバイトは若干の困惑を見せる。
 エミリア……〝 桜木さくらぎ あや〟の悪癖というべき依存症の片鱗が見え始めていたのだ。

 だからこその少し突き放したバイトの物言い。
 エミリアは、何とか自分の中で折り合いをつけようと藻掻いていたのであった。

「戻ろう……俺たちの学園に。」
「うん……」

 こうして物語は新たなステージへと進んでいったのであった。





「ねぇイザベル。君に彼のサポーターとして王国騎士団に所属しともらうから、準備してね?」
「なっ!?なぜですか!?」

 ルーズハルトが生まれた街の協会の裏手。
 深夜を迎えた雑木林は、何かを覆い隠すには丁度よかった。
 
「なぜって……それが君の贖罪だからだよ?他に何があるんだい?」
「なぜあの男の……」

 イザベルこと女神【フェイルノルド】は、創造神【エルネス】によってこの地に落とされた。
 それもこの世界の女神【セレスティア)との賭けに負けたことによる〝召喚の儀〟の強制使用と、それに伴って発生したイレギュラーによる神力の欠落。
 その他諸々の理由から刑が執行されたのだった。

 そして今フェイルノルドは、イザベルとしてこの世界で暮らしていた。
 ルーズハルトが幼いころ受けた〝洗礼の儀〟の際邂逅を果たし、そしてついに本当の刑が執行されることとなったのだ。
 それは創造神の手足として様々なミッションをこなすということであった。
 創造神はその制約から作り終えた世界には基本的関与が出来ないこととなっていた。
 その為管理事態を女神などに執り行わせてきたのだ。
 だが稀にこうしてその管理不行き届きを起こすものもあらわれることから、抜き打ちで視察を行っているのだ。
 そこで発覚したフェイルノルドの失態に、名誉挽回の機会を与えたのだった。

———閑話休題———
 
「それにね彼には僕の駒として動いてもらうことになったから、よろしくね。」
「そんなぁ……」

 イザベルはうなだれるように、うつむいてしまった。
 そんなイザベルのことなど興味はないようで、エルネスは不敵な笑みを浮かべていた。

「君はこれからサポーター兼連絡役として頑張ってもらうよ。」

 そう言うとエルネスはすっと闇夜に溶けていったのだった。
 そして残されたイザベルはわなわなと震える身体を無理やり抑え込み、怒りを制御する。
 その目には強い怒りがあふれ出し、今にも暴れ出したい気持ちでいっぱいなのであった。

「ぜっっっったい許さないんだから!!!!!!!!覚えていなさい葛本《くずもと》 真一しんいち!!」
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