84 / 97
第4章 学園生活
第42話 3人の岐路
しおりを挟む
国王ウェルズからの手紙を読み終えたサイファは、燃え尽きた篝火のように輝きを失っていた。
そして力尽きたようにうなだれると、すぐさま秘書官を呼び出し書類の準備を進めさせた。
必要な書類はすぐに準備され、それほど時間もかからずにルーズハルトは自主退学ということが決定したのだった。
さすがのルーズハルトもそれには驚いたが、サイファから見せられたウェルズからの手紙を読んであきらめの境地となっていた。
すべての手続きも時間がかからず、ちょうど授業中ということもあり、宿舎には生徒の影は見つからなかった。
ルーズハルトはそれを好機とばかりに、自室の整理を行う。
というもののそれほど多くの荷物は置いてなく、リュック一つに収まる程度の物しかなかったりする。
すべての準備が整い宿舎を後にしたルーズハルト。
心残りがあるとすれば、もう少し学園生活を満喫したかったということだろうか。
「ルー君⁈」
誰にもあいさつすることなく校門まで来たルーズハルトだったが、ついに出会ってしまったのだった。
できれば会いたくない相手に。
「なんでエミーとバイトがいるんだ?まだ講義の真っ最中だろ?」
「勘!!」
数日見なかっただけなのに、なぜか懐かしく感じたエミリアのどや顔。
ルーズハルトは思わず笑いがこみあげそうになってきた。
それと同時に、この子を守りたいと強く思えたのだ。
「エミーがどうしてもここへ行くって聞かなくてね。それにしてもその荷物……本当にやめるのか?」
「あぁ、やりたい事ができたからね。ここに居てもそれができないなら、ここを出るしかないだろ?」
バイトはルーズハルトの雰囲気が変わったことに気がついていた。
それがなにかまでは分からなかったが、一つ成長をしたのだと感じていた。
「でも!!」
「やめようエミー。ルーハスさんやオーフェリアさんも了承してるんだろ?だったら俺からはなにもないよ。なぁ〝真一〟……死ぬなよ?」
「あぁ、またな〝伊織〟。エミー……〝綾〟も……頑張れよ!!」
「ルー……〝シンちゃん〟……」
この時、少年たちは別れを迎えた。
本来であれば現代日本で高校を卒業する時に行われるはずであった旅立ちと別れ。
ついにその時が来たのだった。
「バイバイ、伊織!!バイバイ綾!!またな!!」
ルーズハルトはこの時ばかりは、現代日本にいた頃の葛本 真一に戻っていた。
バイトとエミリアも同じで、ルーズハルトの旅立ちを友として見送ったのであった。
「ねぇ……バイト君……私達もいつか離れ離れになるのかな……」
「さぁ?こればっかりはわからないさ。」
エミリアは寂しさを紛らわすように、バイトの服の裾をくいっとつまみ引っ張る。
その少し幼児化した行動にバイトは若干の困惑を見せる。
エミリア……〝 桜木 綾〟の悪癖というべき依存症の片鱗が見え始めていたのだ。
だからこその少し突き放したバイトの物言い。
エミリアは、何とか自分の中で折り合いをつけようと藻掻いていたのであった。
「戻ろう……俺たちの学園に。」
「うん……」
こうして物語は新たなステージへと進んでいったのであった。
「ねぇイザベル。君に彼のサポーターとして王国騎士団に所属しともらうから、準備してね?」
「なっ!?なぜですか!?」
ルーズハルトが生まれた街の協会の裏手。
深夜を迎えた雑木林は、何かを覆い隠すには丁度よかった。
「なぜって……それが君の贖罪だからだよ?他に何があるんだい?」
「なぜあの男の……」
イザベルこと女神【フェイルノルド】は、創造神【エルネス】によってこの地に落とされた。
それもこの世界の女神【セレスティア)との賭けに負けたことによる〝召喚の儀〟の強制使用と、それに伴って発生したイレギュラーによる神力の欠落。
その他諸々の理由から刑が執行されたのだった。
そして今フェイルノルドは、イザベルとしてこの世界で暮らしていた。
ルーズハルトが幼いころ受けた〝洗礼の儀〟の際邂逅を果たし、そしてついに本当の刑が執行されることとなったのだ。
それは創造神の手足として様々なミッションをこなすということであった。
創造神はその制約から作り終えた世界には基本的関与が出来ないこととなっていた。
その為管理事態を女神などに執り行わせてきたのだ。
だが稀にこうしてその管理不行き届きを起こすものもあらわれることから、抜き打ちで視察を行っているのだ。
そこで発覚したフェイルノルドの失態に、名誉挽回の機会を与えたのだった。
———閑話休題———
「それにね彼には僕の駒として動いてもらうことになったから、よろしくね。」
「そんなぁ……」
イザベルはうなだれるように、うつむいてしまった。
そんなイザベルのことなど興味はないようで、エルネスは不敵な笑みを浮かべていた。
「君はこれからサポーター兼連絡役として頑張ってもらうよ。」
そう言うとエルネスはすっと闇夜に溶けていったのだった。
そして残されたイザベルはわなわなと震える身体を無理やり抑え込み、怒りを制御する。
その目には強い怒りがあふれ出し、今にも暴れ出したい気持ちでいっぱいなのであった。
「ぜっっっったい許さないんだから!!!!!!!!覚えていなさい葛本《くずもと》 真一!!」
そして力尽きたようにうなだれると、すぐさま秘書官を呼び出し書類の準備を進めさせた。
必要な書類はすぐに準備され、それほど時間もかからずにルーズハルトは自主退学ということが決定したのだった。
さすがのルーズハルトもそれには驚いたが、サイファから見せられたウェルズからの手紙を読んであきらめの境地となっていた。
すべての手続きも時間がかからず、ちょうど授業中ということもあり、宿舎には生徒の影は見つからなかった。
ルーズハルトはそれを好機とばかりに、自室の整理を行う。
というもののそれほど多くの荷物は置いてなく、リュック一つに収まる程度の物しかなかったりする。
すべての準備が整い宿舎を後にしたルーズハルト。
心残りがあるとすれば、もう少し学園生活を満喫したかったということだろうか。
「ルー君⁈」
誰にもあいさつすることなく校門まで来たルーズハルトだったが、ついに出会ってしまったのだった。
できれば会いたくない相手に。
「なんでエミーとバイトがいるんだ?まだ講義の真っ最中だろ?」
「勘!!」
数日見なかっただけなのに、なぜか懐かしく感じたエミリアのどや顔。
ルーズハルトは思わず笑いがこみあげそうになってきた。
それと同時に、この子を守りたいと強く思えたのだ。
「エミーがどうしてもここへ行くって聞かなくてね。それにしてもその荷物……本当にやめるのか?」
「あぁ、やりたい事ができたからね。ここに居てもそれができないなら、ここを出るしかないだろ?」
バイトはルーズハルトの雰囲気が変わったことに気がついていた。
それがなにかまでは分からなかったが、一つ成長をしたのだと感じていた。
「でも!!」
「やめようエミー。ルーハスさんやオーフェリアさんも了承してるんだろ?だったら俺からはなにもないよ。なぁ〝真一〟……死ぬなよ?」
「あぁ、またな〝伊織〟。エミー……〝綾〟も……頑張れよ!!」
「ルー……〝シンちゃん〟……」
この時、少年たちは別れを迎えた。
本来であれば現代日本で高校を卒業する時に行われるはずであった旅立ちと別れ。
ついにその時が来たのだった。
「バイバイ、伊織!!バイバイ綾!!またな!!」
ルーズハルトはこの時ばかりは、現代日本にいた頃の葛本 真一に戻っていた。
バイトとエミリアも同じで、ルーズハルトの旅立ちを友として見送ったのであった。
「ねぇ……バイト君……私達もいつか離れ離れになるのかな……」
「さぁ?こればっかりはわからないさ。」
エミリアは寂しさを紛らわすように、バイトの服の裾をくいっとつまみ引っ張る。
その少し幼児化した行動にバイトは若干の困惑を見せる。
エミリア……〝 桜木 綾〟の悪癖というべき依存症の片鱗が見え始めていたのだ。
だからこその少し突き放したバイトの物言い。
エミリアは、何とか自分の中で折り合いをつけようと藻掻いていたのであった。
「戻ろう……俺たちの学園に。」
「うん……」
こうして物語は新たなステージへと進んでいったのであった。
「ねぇイザベル。君に彼のサポーターとして王国騎士団に所属しともらうから、準備してね?」
「なっ!?なぜですか!?」
ルーズハルトが生まれた街の協会の裏手。
深夜を迎えた雑木林は、何かを覆い隠すには丁度よかった。
「なぜって……それが君の贖罪だからだよ?他に何があるんだい?」
「なぜあの男の……」
イザベルこと女神【フェイルノルド】は、創造神【エルネス】によってこの地に落とされた。
それもこの世界の女神【セレスティア)との賭けに負けたことによる〝召喚の儀〟の強制使用と、それに伴って発生したイレギュラーによる神力の欠落。
その他諸々の理由から刑が執行されたのだった。
そして今フェイルノルドは、イザベルとしてこの世界で暮らしていた。
ルーズハルトが幼いころ受けた〝洗礼の儀〟の際邂逅を果たし、そしてついに本当の刑が執行されることとなったのだ。
それは創造神の手足として様々なミッションをこなすということであった。
創造神はその制約から作り終えた世界には基本的関与が出来ないこととなっていた。
その為管理事態を女神などに執り行わせてきたのだ。
だが稀にこうしてその管理不行き届きを起こすものもあらわれることから、抜き打ちで視察を行っているのだ。
そこで発覚したフェイルノルドの失態に、名誉挽回の機会を与えたのだった。
———閑話休題———
「それにね彼には僕の駒として動いてもらうことになったから、よろしくね。」
「そんなぁ……」
イザベルはうなだれるように、うつむいてしまった。
そんなイザベルのことなど興味はないようで、エルネスは不敵な笑みを浮かべていた。
「君はこれからサポーター兼連絡役として頑張ってもらうよ。」
そう言うとエルネスはすっと闇夜に溶けていったのだった。
そして残されたイザベルはわなわなと震える身体を無理やり抑え込み、怒りを制御する。
その目には強い怒りがあふれ出し、今にも暴れ出したい気持ちでいっぱいなのであった。
「ぜっっっったい許さないんだから!!!!!!!!覚えていなさい葛本《くずもと》 真一!!」
48
お気に入りに追加
305
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜
あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。
そんな世界に唯一現れた白髪の少年。
その少年とは神様に転生させられた日本人だった。
その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。
⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。
⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。
勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした
赤白玉ゆずる
ファンタジー
【10/23コミカライズ開始!】
『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました!
颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。
【第2巻が発売されました!】
今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。
イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです!
素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。
【ストーリー紹介】
幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。
そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。
養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。
だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。
『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。
貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。
『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。
『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。
どん底だった主人公が一発逆転する物語です。
※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる