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第4章 学園生活
第38話 王国魔導士の序列
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『ウェルズが迷惑をかけているな。』
『問題ない、これが私の仕事……』
ルーハスはウェルズを一睨みすると、ウェルズは身体を縮こまらせていた。
カイエルはそんなやり取りを見て見ぬふりをしていた。
敢えて口を挟まずそうしたのは、君主を敬っての事なのかもしれない。
『わかった。あまり無理するなよ?楽じゃないだろその魔法。こいつはさっさと帰すから、後でラミア様に報告をしておいてくれないか?』
『わかった。』
その会話を聞いていたウェルズは、だるい身体にムチ打って立ち上がるとルーハスにしがみついた。
『やめるんだガルシア!!それだけはやめてくれ!!』
『大丈夫、隣にいるから。』
ウェルズは一言「終わった」呟くと、その場にへたり込んでしまった。
その場はなんとも言えない空気が漂ったのは言うまでもない。
「ほんとお前は変わってないな。こんな軍事機密魔法をポンポン使いやがって。こっちは周りに見つからないように使うのが大変なんだぞ?」
「……」
ガルシアとの通信も終わり、改めて席に座りなおしたルーハスたちは、話を再開させよとした。
しかし当のウェルズは口を開こうとはせず、ただ屍のようにうつろな目をしていたのだった。
「ねぇ、母さん。ガルシアって女性と、ラミア様って?」
「ラミア様は先代国王の娘……今の王妃ね。つまりウェルズの奥さん。ガルシアは私たちの共通の友人で、【幻影魔女】って聞いたことないかしら?」
ルーズハルトにはその名前に覚えがあった。
前にバイトから聞いた話に、王国魔導士の序列10位までの名前を聞いていたからだ。
その第4位にあたるのが【幻影魔女】ガルシアだった。
「そんなすごい人が……」
「ちなみにウェルズも国王になる前はその序列に入っていたのよ?当然ルーハスと私もね。あの頃から代替わりしたけど、まだ序列入りしているのはガルシアだけかしらね?」
つまるところ、自分の両親は王国上位の魔導士であることをここで始めて知ったルーズハルト。
まだまだ両親の秘密がありそうだと思い、内心怖くなったが敢えて表に出さず堪えたのであった。
「ウェルズ、話を進めたいんだが……」
「あぁ、すまんな。当分此処に泊めさせてくれないか。今帰ったら間違いなく俺は明日から生きてはいないだろう……」
全く話がかみ合わない状況に、ルーハスはまたもため息を漏らした。
そしてカイエルに視線を送ったが、そっとそらされてしまい、またしてもため息を漏らす羽目になった。
「さっさと帰って頭を下げろ。それが一番傷が浅い。」
「いやだ、無理だ。お前も知っているだろ?あいつが怒るとマジで手が付けられないんだから。」
ガクブルと震えるウェルズに呆れ顔のルーハス。
オーフェリアはまたかと諦めの表情となっていた。
「あ、あの……俺の話は終わったんですか?」
どうも話が進まない状況に業を煮やしたルーズハルトは、あきらめて話を軌道修正する事を選択した。
「す、すまない。君の将来の話をしに来たんだったね。」
「俺は今後騎士団にお世話になるってことで良いんですよね?学園はどうしたらいいのか知りたいのですが。」
つい旧友に気を許し過ぎてしまったと自覚しているウェルズは我に返ると、まじめな雰囲気に変わっていった。
「そうだね、自主退学という形になるだろうね。それと騎士団入りする際に一つ条件がある。素性を完全に隠した状態にしてもらう。もちろん第0大隊の時は問題ないのだが、第13大隊に所属する際には偽名を名乗ってもらうことになる。それは覚悟してほしい。」
真剣なウェルズに、ルーズハルトも覚悟を決める。
護りたいものを護れるならそれくらい問題はなかった。
「すまないね。君の人生を縛り付けることになってしまって。」
「問題ありません。もともと魔導騎士になるのが夢でしたから。それが少し早まっただけの事です。」
それからは話はスムーズに進み、カイエルが準備した書類等にルーハスたちが目を通していく。
第0大隊の存在は極秘とされており、騎士団員ですら知らないものがほとんどであった。
だがなぜ第13大隊大隊長のカイエルが知っているかと言うと、第0大隊の受け皿として存在しているのが第13大隊だからである。
かくいうカイエルもまた第0大隊所属の騎士であった。
「それじゃあカイエル。愚息の事をよろしく頼む。」
「はい師匠。確かにお預かりします。」
ルーハスは会談の終わり際にカイエルに頭を下げた。
それに合わせてルーズハルトとオーフェリアも頭を下げた。
カイエルもまた同じく頭を下げてから互いに手を取り、固い握手を交わしたのであった。
「おいおい、俺もいるんだがな?」
「お前はおまけだろ?さっさと帰ってこってり絞られろ!!」
最後までルーハスとウェルズの言い合いは終わらず、なんだかんだと仲の良さがうかがえる光景であった。
「それでは我々は一度お暇します。明日朝またお迎えに上がります。」
「よろしくお願いしますね。」
そう言うといまだルーハスと言い合いを続けているウェルズの首根っこをつかみ、引きずるように外へと向かうカイエル。
この数時間の間に、カイエルのウェルズに対する評価はダダ下がりをしたようであった。
『問題ない、これが私の仕事……』
ルーハスはウェルズを一睨みすると、ウェルズは身体を縮こまらせていた。
カイエルはそんなやり取りを見て見ぬふりをしていた。
敢えて口を挟まずそうしたのは、君主を敬っての事なのかもしれない。
『わかった。あまり無理するなよ?楽じゃないだろその魔法。こいつはさっさと帰すから、後でラミア様に報告をしておいてくれないか?』
『わかった。』
その会話を聞いていたウェルズは、だるい身体にムチ打って立ち上がるとルーハスにしがみついた。
『やめるんだガルシア!!それだけはやめてくれ!!』
『大丈夫、隣にいるから。』
ウェルズは一言「終わった」呟くと、その場にへたり込んでしまった。
その場はなんとも言えない空気が漂ったのは言うまでもない。
「ほんとお前は変わってないな。こんな軍事機密魔法をポンポン使いやがって。こっちは周りに見つからないように使うのが大変なんだぞ?」
「……」
ガルシアとの通信も終わり、改めて席に座りなおしたルーハスたちは、話を再開させよとした。
しかし当のウェルズは口を開こうとはせず、ただ屍のようにうつろな目をしていたのだった。
「ねぇ、母さん。ガルシアって女性と、ラミア様って?」
「ラミア様は先代国王の娘……今の王妃ね。つまりウェルズの奥さん。ガルシアは私たちの共通の友人で、【幻影魔女】って聞いたことないかしら?」
ルーズハルトにはその名前に覚えがあった。
前にバイトから聞いた話に、王国魔導士の序列10位までの名前を聞いていたからだ。
その第4位にあたるのが【幻影魔女】ガルシアだった。
「そんなすごい人が……」
「ちなみにウェルズも国王になる前はその序列に入っていたのよ?当然ルーハスと私もね。あの頃から代替わりしたけど、まだ序列入りしているのはガルシアだけかしらね?」
つまるところ、自分の両親は王国上位の魔導士であることをここで始めて知ったルーズハルト。
まだまだ両親の秘密がありそうだと思い、内心怖くなったが敢えて表に出さず堪えたのであった。
「ウェルズ、話を進めたいんだが……」
「あぁ、すまんな。当分此処に泊めさせてくれないか。今帰ったら間違いなく俺は明日から生きてはいないだろう……」
全く話がかみ合わない状況に、ルーハスはまたもため息を漏らした。
そしてカイエルに視線を送ったが、そっとそらされてしまい、またしてもため息を漏らす羽目になった。
「さっさと帰って頭を下げろ。それが一番傷が浅い。」
「いやだ、無理だ。お前も知っているだろ?あいつが怒るとマジで手が付けられないんだから。」
ガクブルと震えるウェルズに呆れ顔のルーハス。
オーフェリアはまたかと諦めの表情となっていた。
「あ、あの……俺の話は終わったんですか?」
どうも話が進まない状況に業を煮やしたルーズハルトは、あきらめて話を軌道修正する事を選択した。
「す、すまない。君の将来の話をしに来たんだったね。」
「俺は今後騎士団にお世話になるってことで良いんですよね?学園はどうしたらいいのか知りたいのですが。」
つい旧友に気を許し過ぎてしまったと自覚しているウェルズは我に返ると、まじめな雰囲気に変わっていった。
「そうだね、自主退学という形になるだろうね。それと騎士団入りする際に一つ条件がある。素性を完全に隠した状態にしてもらう。もちろん第0大隊の時は問題ないのだが、第13大隊に所属する際には偽名を名乗ってもらうことになる。それは覚悟してほしい。」
真剣なウェルズに、ルーズハルトも覚悟を決める。
護りたいものを護れるならそれくらい問題はなかった。
「すまないね。君の人生を縛り付けることになってしまって。」
「問題ありません。もともと魔導騎士になるのが夢でしたから。それが少し早まっただけの事です。」
それからは話はスムーズに進み、カイエルが準備した書類等にルーハスたちが目を通していく。
第0大隊の存在は極秘とされており、騎士団員ですら知らないものがほとんどであった。
だがなぜ第13大隊大隊長のカイエルが知っているかと言うと、第0大隊の受け皿として存在しているのが第13大隊だからである。
かくいうカイエルもまた第0大隊所属の騎士であった。
「それじゃあカイエル。愚息の事をよろしく頼む。」
「はい師匠。確かにお預かりします。」
ルーハスは会談の終わり際にカイエルに頭を下げた。
それに合わせてルーズハルトとオーフェリアも頭を下げた。
カイエルもまた同じく頭を下げてから互いに手を取り、固い握手を交わしたのであった。
「おいおい、俺もいるんだがな?」
「お前はおまけだろ?さっさと帰ってこってり絞られろ!!」
最後までルーハスとウェルズの言い合いは終わらず、なんだかんだと仲の良さがうかがえる光景であった。
「それでは我々は一度お暇します。明日朝またお迎えに上がります。」
「よろしくお願いしますね。」
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