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第4章 学園生活
第25話 格闘家だって……
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マクスウェルたちの指導が始まって1ヶ月が過ぎた頃。
生徒たちの方向性は決まり、それぞれの指導員の元メキメキとその実力を上げていた。
ルーズハルトはすぐに自分の方向性を理解し、リリックの元、格闘戦主体の戦闘方法を学んでいった。
干からびたスポンジが一気に水を吸い込むように、〝纏い〟の技術を身に着けていったのだった。
現代日本で培ってきた技量については問題なくこの世界でも再現出来たようで、リリックはその技量に舌を巻くほどだった。
「イイねイイね!!君最高だよ!!」
「師匠、褒めても何も出ませんよ?」
二人は軽い言葉をかけあっていたが、行っていることは普通ではなかった。
ルーズハルトは外への放出系魔法は苦手としていたが、体内での循環についてはその技術を格段に上昇させていた。
それもこれも〝纏い〟の技術はそれを土台として使用しているからに他ならなかった。
体内で魔力を拘束循環させることで、魔法を発動させることなく身体能力を上昇させる。
そして余剰魔力で身体の周辺を覆うことで、その防御力を格段に高めていく。
こうして言葉にすると簡単なように聞こえるが、高速循環と魔力の停滞という真逆の事を同時に行うという高度な魔力操作を必要とする、なんとも使い手を選ぶ技術であった。
そして今も模擬戦を行いつつ、二人は〝纏い〟を行っていたのだった。
おかげで、その戦闘は高速化の一途をたどっており、マクスウェルたちは呆れてものが言えない状況となっていた。
なぜならばこの模擬戦の内容をきちんと説明できるクラスメートは誰一人としていなかったからだ。
ある意味でとがった成長をルーズハルトは遂げていたのだった。
「ところで師匠……一つ気になったこと聞いていいですか?」
「なんだい藪から棒に。」
ガキンガキンと金属でもぶつかっているかのような戦闘音を無手で奏でる二人。
どれだけ危険な状況かはたで見ればわかりそうなものだが、二人にはまったくと言っていいほど緊張感のかけらもなかった。
「〝纏い〟って属性を付けられないんですか?例えば水属性を付与して、火属性に強くなるみたいな。」
ルーズハルトが疑問を投げかけると、リリックはニヤリと笑って見せた。
その表情にルーズハルトは焦りを覚える。
前にも一度この表情をしたときに危険な目に合っていたからだ。
「よくぞ聞いた、我が弟子よ!!ではとくと見よ!!これがその答えだ!!」
リリックは何かもごもごとつぶやくと、その表情を獰猛なものに変えていった。
そしてそのあとに確実にわかる変化が訪れる。
リリックの身体にまとわりついていた魔力が腕に一気に集中していく。
そしてそれは別な形を作り、ルーズハルトに向けられていた。
「氷牙拳!!」
リリックの腕に集約されていた魔力が一気に属性を帯びる。
それは技名通り、氷塊となり、ルーズハルトに襲い掛かる。
これは危険と判断したルーズハルトは慌てて身体を翻すことで回避し何とか無事に済んだが、勢いまたって突っ込んだリリックはそうはいかなかった。
そのままの勢いで地面に両手を突き出す形となり両拳は地面に接触すると同時にはじけ飛んだ。
だがその状況でもリリックは慌てることはなかった。
むしろさらに獰猛さを増していた。
「爆ぜろ!!」
そうリリックが叫ぶと、先ほどまで地面に接触していた氷の塊が一気に爆散した。
細かい礫となり周囲にまき散らされる。
はた迷惑を絵にない多様な惨事に、マクスウェルは頭を抱えていた。
それでも生徒たちに危険が及ばないようにかばい、マクスウェルたちのおかげで生徒は誰一人としてケガを負うことはなかった。
爆発の中心となっていたリリックの周辺はその冷気に包まれる形となり、キラキラと輝くダイヤモンドダストが発生していた。
さらに地面は凍てつき、その温度の低さがうかがい知れる形となっていた。
「おいリリック!!何しやがるんだ!!こんなところで使う技じゃないだろ!!」
「いやぁ、すまないすまない。つい興が乗ってしまってな。おかげでこれだけの魔法を披露できたのだ、いいだろう?格闘家だって魔法が使えるって証明できたんだからさ。」
全く悪びれる様子のないリリックに再度頭を抱えるマクスウェル。
ルーズハルトは生きた心地がしていなかった。
もしこれが回避失敗していたら、自分が氷漬けになっていた可能性があったからだ。
「なあ、ルーズハルト。今からでも遅くないから指導員変えた方が良いんじゃないか?」
ルーズハルトの事がたまらなく心配なマクスウェルは、ルーズハルトにそう問いかけた。
だがルーズハルトの気持ちは変わることがはなかった。
むしろ、放出系魔法を使えなくとも魔法が使えるという示唆に、喜びを感じていた。
そして自分の顔が緩んでいることに気が付いたルーズハルトの目は、喜びに満ち溢れていたのだった。
それを見たマクスウェルは似た者同士の子弟に呆れ果てていたのだった。
「師匠……今のが……」
「うむ、今のが〝纏い・剛〟と双璧をなす攻撃手段……〝纏い・戦技〟というモノだ。」
ルーズハルトは自分の目指すべき道がさらに先があることを知り、歓喜にその身を震わせていたのだった。
「〝纏い・戦技〟……。ヤバいな……。」
生徒たちの方向性は決まり、それぞれの指導員の元メキメキとその実力を上げていた。
ルーズハルトはすぐに自分の方向性を理解し、リリックの元、格闘戦主体の戦闘方法を学んでいった。
干からびたスポンジが一気に水を吸い込むように、〝纏い〟の技術を身に着けていったのだった。
現代日本で培ってきた技量については問題なくこの世界でも再現出来たようで、リリックはその技量に舌を巻くほどだった。
「イイねイイね!!君最高だよ!!」
「師匠、褒めても何も出ませんよ?」
二人は軽い言葉をかけあっていたが、行っていることは普通ではなかった。
ルーズハルトは外への放出系魔法は苦手としていたが、体内での循環についてはその技術を格段に上昇させていた。
それもこれも〝纏い〟の技術はそれを土台として使用しているからに他ならなかった。
体内で魔力を拘束循環させることで、魔法を発動させることなく身体能力を上昇させる。
そして余剰魔力で身体の周辺を覆うことで、その防御力を格段に高めていく。
こうして言葉にすると簡単なように聞こえるが、高速循環と魔力の停滞という真逆の事を同時に行うという高度な魔力操作を必要とする、なんとも使い手を選ぶ技術であった。
そして今も模擬戦を行いつつ、二人は〝纏い〟を行っていたのだった。
おかげで、その戦闘は高速化の一途をたどっており、マクスウェルたちは呆れてものが言えない状況となっていた。
なぜならばこの模擬戦の内容をきちんと説明できるクラスメートは誰一人としていなかったからだ。
ある意味でとがった成長をルーズハルトは遂げていたのだった。
「ところで師匠……一つ気になったこと聞いていいですか?」
「なんだい藪から棒に。」
ガキンガキンと金属でもぶつかっているかのような戦闘音を無手で奏でる二人。
どれだけ危険な状況かはたで見ればわかりそうなものだが、二人にはまったくと言っていいほど緊張感のかけらもなかった。
「〝纏い〟って属性を付けられないんですか?例えば水属性を付与して、火属性に強くなるみたいな。」
ルーズハルトが疑問を投げかけると、リリックはニヤリと笑って見せた。
その表情にルーズハルトは焦りを覚える。
前にも一度この表情をしたときに危険な目に合っていたからだ。
「よくぞ聞いた、我が弟子よ!!ではとくと見よ!!これがその答えだ!!」
リリックは何かもごもごとつぶやくと、その表情を獰猛なものに変えていった。
そしてそのあとに確実にわかる変化が訪れる。
リリックの身体にまとわりついていた魔力が腕に一気に集中していく。
そしてそれは別な形を作り、ルーズハルトに向けられていた。
「氷牙拳!!」
リリックの腕に集約されていた魔力が一気に属性を帯びる。
それは技名通り、氷塊となり、ルーズハルトに襲い掛かる。
これは危険と判断したルーズハルトは慌てて身体を翻すことで回避し何とか無事に済んだが、勢いまたって突っ込んだリリックはそうはいかなかった。
そのままの勢いで地面に両手を突き出す形となり両拳は地面に接触すると同時にはじけ飛んだ。
だがその状況でもリリックは慌てることはなかった。
むしろさらに獰猛さを増していた。
「爆ぜろ!!」
そうリリックが叫ぶと、先ほどまで地面に接触していた氷の塊が一気に爆散した。
細かい礫となり周囲にまき散らされる。
はた迷惑を絵にない多様な惨事に、マクスウェルは頭を抱えていた。
それでも生徒たちに危険が及ばないようにかばい、マクスウェルたちのおかげで生徒は誰一人としてケガを負うことはなかった。
爆発の中心となっていたリリックの周辺はその冷気に包まれる形となり、キラキラと輝くダイヤモンドダストが発生していた。
さらに地面は凍てつき、その温度の低さがうかがい知れる形となっていた。
「おいリリック!!何しやがるんだ!!こんなところで使う技じゃないだろ!!」
「いやぁ、すまないすまない。つい興が乗ってしまってな。おかげでこれだけの魔法を披露できたのだ、いいだろう?格闘家だって魔法が使えるって証明できたんだからさ。」
全く悪びれる様子のないリリックに再度頭を抱えるマクスウェル。
ルーズハルトは生きた心地がしていなかった。
もしこれが回避失敗していたら、自分が氷漬けになっていた可能性があったからだ。
「なあ、ルーズハルト。今からでも遅くないから指導員変えた方が良いんじゃないか?」
ルーズハルトの事がたまらなく心配なマクスウェルは、ルーズハルトにそう問いかけた。
だがルーズハルトの気持ちは変わることがはなかった。
むしろ、放出系魔法を使えなくとも魔法が使えるという示唆に、喜びを感じていた。
そして自分の顔が緩んでいることに気が付いたルーズハルトの目は、喜びに満ち溢れていたのだった。
それを見たマクスウェルは似た者同士の子弟に呆れ果てていたのだった。
「師匠……今のが……」
「うむ、今のが〝纏い・剛〟と双璧をなす攻撃手段……〝纏い・戦技〟というモノだ。」
ルーズハルトは自分の目指すべき道がさらに先があることを知り、歓喜にその身を震わせていたのだった。
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